第13話 伊賀・ウオーターメロンの告白
文字数 1,815文字
わたしは伊賀 ・ウオーターメロン。
ドイツ生まれ。一応途中から日本育ち。でも人生の大半は日本以外で過ごしている。ハーバードで生命科学を学んだ。
わたしは本当の自分を他人に見せられない。ひどい動物オタクだからだ。
高校の時も中学の時も、わたしは自分の本当の気持ちを誰かに言うとひかれた。
「きしょいやつ。」
「気持ち悪いやつ。」
「そのうち動物を殺すんじゃない?」
結果的に人生の早い段階で、動物への愛を誰にも語ってはならないとわたしは学んだ。
わたしの本当の気持ちは誰にも語ってはならないのだ。
というわけで、わたしには友達は一人もいなかった。わたしの本当の気持ちを話した時の周囲の反応は、わたしの中では今でもトラウマだった。
「人は誰でも本当の感想や思いを誰かと共感できる」と淡い幻想 をわたしが抱いていたのは、高校に入学するまでだ。
そのあと、どんなにオタクの世界に飛び込んでも、わたしと気持ちを共感できる人はいないと悟った。
わたしの薄い顔も関係しているのかもしれない。わたしが言うから、「きしょい」と言う反応を呼び起こすのかもしれない。そのあたりは、もう考えるも疲れるので、一切考えるのをやめた。
一年前のことだ。
NASAのアストロバイオロジーの研究所の新米職員だったわたしは、偶然、ガールズバンド「ミッチェリアル」の音源がラジオから流れてくるのを聴いた。
わたしは金曜日の夜にラボにいて、一人で残業していた。誰かがつけっぱなしにしたラジオから流れてくる音楽に耳を傾けながら、仕事を片付けていた。
その音楽を聞いたとき、持っていた試験管を思わず落としそうになった。
聞いたこともない不思議なパンク感?ロック感に溢 れた曲だと思った。わたしは音楽の専門家ではないので、なんと表現して良いのか的確な表現力を持ち合わせていない。
でも、曲を買ってダウンロードして、スマホで繰り返し聞くと、一瞬だが、ネコ科の声と、イヌ科イヌ亜科、キツネ属の声が聞こえた気がした。
よーく聞くと、主旋律 の部分で、ずっとイヌ科タヌキ属の声が聞こえるような気がした。
そこからパソコンで解析を重ねた。やっぱりそうだ。彼らの音源には、人科 ではない、この3つの生命体の声が響いていた。
すぐに、わたしはガールズバンド「ミッチェリアル」のことを徹底的に調べ上げた。ドラマーのミカナがわたしの生まれた国、ドイツのとある有名一族の一員であることを突き止めた。
きな臭い情報も得た。ミカナの周りで後継者争 いが活発化しそうだった。
お金を得て、彼らに近づく方法を考えに考え抜いて、わたしは伊賀の家系を利用した。わたしは伊賀 忍者の末裔 だ。
先祖は貧乏忍者だったらしく、先祖はさっさと忍び業から足を洗って国を出ていた。西欧諸国を彷徨 ったあげくにドイツに住み着いて数世紀が経っていたというわけだ。
わたしだって、子供の頃から先祖代々から受け継がれた忍者の訓練を受けていた。ただ、どちらかというと、ドイツと日本で近所の空手教室に通わされていたことが功を奏した。
伊賀の名前と空手の腕、申し訳程度に披露した少しだけの忍者のフリで、無事にミカナの存在を快く思わない金の亡者側に採用された。
一、日本語もドイツ語もできる。
二、忍んでミカナの様子も探れる。
三、いざとなれば、ミカナを襲えるだけの武術を有する。
四、何より薄くて地味とも言える目立たない容姿を持つ。
というわけで、無事に条件を満たして採用されたと言うわけだ。悪い悪い金の亡者側にだ。
ミッチェリアルのメンバーに近づけば近づくほど、狂おしいほどの愛情に溢 れた。
しかし、決してわたしの胸のうちは明かしてはならない。メンバーに嫌われる。メンバーに引かれる。
自分の気持ちに従えば従うほど、わたしはバンドメンバーを襲う側ではなく、バンドメンバーをお守りする側に守りたかった。
そうして、どうにもならなくて、あの山合宿の朝、彼らの前に姿を現したのだ。
トオルを初めて間近で見た時、衝撃を受けた。心の中で思った。
まじ。天使。
まじ。クジャク・・・
後光がもはやクジャクさま・・・
トオルを見ると心が震える。
この気持ちは、決して誰にもバレてはならないと、わたしは知っている。
ガールズバンド「ミッチェリアル」は、わたしのような動物オタクにとっては神のような存在だ。
でも、わたしの気持ちは、決して誰にも明かしてはならない。
ドイツ生まれ。一応途中から日本育ち。でも人生の大半は日本以外で過ごしている。ハーバードで生命科学を学んだ。
わたしは本当の自分を他人に見せられない。ひどい動物オタクだからだ。
高校の時も中学の時も、わたしは自分の本当の気持ちを誰かに言うとひかれた。
「きしょいやつ。」
「気持ち悪いやつ。」
「そのうち動物を殺すんじゃない?」
結果的に人生の早い段階で、動物への愛を誰にも語ってはならないとわたしは学んだ。
わたしの本当の気持ちは誰にも語ってはならないのだ。
というわけで、わたしには友達は一人もいなかった。わたしの本当の気持ちを話した時の周囲の反応は、わたしの中では今でもトラウマだった。
「人は誰でも本当の感想や思いを誰かと共感できる」と淡い
そのあと、どんなにオタクの世界に飛び込んでも、わたしと気持ちを共感できる人はいないと悟った。
わたしの薄い顔も関係しているのかもしれない。わたしが言うから、「きしょい」と言う反応を呼び起こすのかもしれない。そのあたりは、もう考えるも疲れるので、一切考えるのをやめた。
一年前のことだ。
NASAのアストロバイオロジーの研究所の新米職員だったわたしは、偶然、ガールズバンド「ミッチェリアル」の音源がラジオから流れてくるのを聴いた。
わたしは金曜日の夜にラボにいて、一人で残業していた。誰かがつけっぱなしにしたラジオから流れてくる音楽に耳を傾けながら、仕事を片付けていた。
その音楽を聞いたとき、持っていた試験管を思わず落としそうになった。
聞いたこともない不思議なパンク感?ロック感に
でも、曲を買ってダウンロードして、スマホで繰り返し聞くと、一瞬だが、ネコ科の声と、イヌ科イヌ亜科、キツネ属の声が聞こえた気がした。
よーく聞くと、
そこからパソコンで解析を重ねた。やっぱりそうだ。彼らの音源には、
すぐに、わたしはガールズバンド「ミッチェリアル」のことを徹底的に調べ上げた。ドラマーのミカナがわたしの生まれた国、ドイツのとある有名一族の一員であることを突き止めた。
きな臭い情報も得た。ミカナの周りで
お金を得て、彼らに近づく方法を考えに考え抜いて、わたしは伊賀の家系を利用した。わたしは
先祖は貧乏忍者だったらしく、先祖はさっさと忍び業から足を洗って国を出ていた。西欧諸国を
わたしだって、子供の頃から先祖代々から受け継がれた忍者の訓練を受けていた。ただ、どちらかというと、ドイツと日本で近所の空手教室に通わされていたことが功を奏した。
伊賀の名前と空手の腕、申し訳程度に披露した少しだけの忍者のフリで、無事にミカナの存在を快く思わない金の亡者側に採用された。
一、日本語もドイツ語もできる。
二、忍んでミカナの様子も探れる。
三、いざとなれば、ミカナを襲えるだけの武術を有する。
四、何より薄くて地味とも言える目立たない容姿を持つ。
というわけで、無事に条件を満たして採用されたと言うわけだ。悪い悪い金の亡者側にだ。
ミッチェリアルのメンバーに近づけば近づくほど、狂おしいほどの愛情に
しかし、決してわたしの胸のうちは明かしてはならない。メンバーに嫌われる。メンバーに引かれる。
自分の気持ちに従えば従うほど、わたしはバンドメンバーを襲う側ではなく、バンドメンバーをお守りする側に守りたかった。
そうして、どうにもならなくて、あの山合宿の朝、彼らの前に姿を現したのだ。
トオルを初めて間近で見た時、衝撃を受けた。心の中で思った。
まじ。天使。
まじ。クジャク・・・
後光がもはやクジャクさま・・・
トオルを見ると心が震える。
この気持ちは、決して誰にもバレてはならないと、わたしは知っている。
ガールズバンド「ミッチェリアル」は、わたしのような動物オタクにとっては神のような存在だ。
でも、わたしの気持ちは、決して誰にも明かしてはならない。