第1話 夕暮れのバス停で

文字数 1,230文字

 バス停でポーニーテールした少女が気だるそうに、市販のカフェラテを飲んでいる。
 完全にバス停に寄りかかっている。

 そこに「くノ一」がキラッと一瞬何かをきらめかせて姿を現した。一瞬で姿を消す。

 ギターを抱えた少女が素早く駆け寄り、スパッと何を切り倒すような動きをした。

「ミカナー、またあんた何かしでかしたの?狙われてるね。」
 ギターを抱えた少女は手をパンパンと打ち鳴らすと、ぶっきらぼうにポニーテールの少女に言った。

「べつに。」
 ポニーテールの少女は気だるそうに言った。

「でも、ありがと。」
 ポニーテールの少女はズズっとプラスチック容器の中のカフェラテを吸い込んで言った。
 
少女の名前はミカナ。16歳。人科(ひとか)の女子。高校一年生。15歳でさとこエンタープライズのさとこ社長にスカウトされて、ドラマーとしてガールズバンド「ミッチェリアル」の一員として活動している。

「ごめん、ごめん、遅くなったあ。」

 チェロケースが小走りに走っているようなスタイルでやってきたのは18歳のトオルだ。人科(ひとか)の女子。大学一年生だ。

 17歳でさとこエンタープライズのさとこ社長にスカウトされて、チェロ担当としてガールズバンド「ミッチェリアル」の一員として活動している。弦楽器はほぼ制覇している。背中のチェロケースはトレードマークのようになっている。遠くからでもトオルがいると分かった。

 そして、ギターケースを抱えている、先ほど鮮やかに「くノ一」を撃退した少女が、ミケだ。公称では15歳。ネコ科の女子。一応中学生だ。

 14歳でさとこエンタープライズのさとこ社長が開催した山オーディションで勝ち上がり、ギター担当としてガールズバンド「ミッチェリアル」の一員として活動している。ミケは、例の山で開催されたオーディションで唯一勝ち残ったメンバーだ。

 ミケ以外は、全員スカウトだ。

 トオルはYoutube動画を見たさとこ社長とマネージャーしし丸が、オーストリアまで行ってスカウトしてきた。
 ミカナは、やっぱりYoutube動画を見たさとこ社長とマネージャーしし丸がスイスの寄宿学校まで行って面接し、ドイツのシュトゥットガルトまで行って、そこに住んでいた両親を説得までして連れてきた。ミカナはポル○○を始めとする、ドイツ創業者一族群のとある縁戚(えんせき)だ。

 中学も高校も大学も夏休みに入るこの時期、ガールズバンド「ミッチェリアル」の初のワールドツアーが組まれているので、ボーカル&キーボード担当のブー子の祖父の山に集まって合宿なのだ。
 
 1泊2日の山合宿の後、さとこ社長の豪邸に集まり、ご利益(りやく)ある神社に参拝(さんぱい)して豪邸に1泊し、まずアメリカツアーに向けて空港に向かうスケジュールだ。まずは、ロサンゼルス、オークランド、ニューアーク、シカゴと回って、ヨーロッパに向かう。

 ボーカル以外のミッチェリアルのメンバーが十代で学生なので、夏休みしかワールドツアーは組めない。しし丸とさとこ社長は、スケジュール調整に大忙しだった。
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