第10話【セイレーン】
文字数 1,571文字
伯父はまだ、放心状態のままだったため、一応見張りをつけ、家で安静させた。
【サイパ】も何が起きたのか、事態を把握するには衝撃すぎて、放心していたが、
【村長】だけは理解していたようで、息子の肩をポンッと叩いた。
【サイパ】の家の2Fには【ヴェイト】が使っていた部屋があった。
そこには当然、彼の荷物がそのまま置いてある。
【サイパ】は机の上にある分厚い紙の束を手に取った。
それは【ヴェイト】が書き続けてきた【セレン】との小説だった。
村は少しづつではあるが、貿易を始めるようになった。
入り江には【魔性】と【ヴェイト】【セレン】たちと犠牲になった人たちの慰霊碑も建てられた。
村も活気を取り戻していった。
お姉ちゃん、この間のクッキーおいしかったよぉ~
ふふ、ありがとう。そう言ってくれるとお姉さん、うれしいわ。
今日はママは一緒じゃないの?
私ね、また、あのクッキー食べたかったから、急いで来ちゃったvvv
気が付けば、子供たちのたまり場になり、迎えにくる母親たちの憩いの場ともになっていた。
何でも、若い奥さんの作るお菓子が好評で、それを目当てにくるらしい。
ダメ~?
そういえば、お姉ちゃんとお兄ちゃんって…この本の主人公と同じ名前なんだね。
その本には『セイレーン』と記されていた。
【完】