第2話 【決意】
文字数 2,032文字
村人に気づかれないように必要以上に神経を使い、人の目さえ、気にするほど過敏になった。
それでも【セレン】に会うと、それすらも吹き飛ぶほどに幸せな有意義な時間だった。
しばらく、二人の間を波の音が通り過ぎていった。
【セレン】はキュッと唇をかみしめると静かに言葉をつづった。
だから、私は個である【セレン】でもあり【魔性】という集合体の一つでもあるの。
目の前の【ヴェイト】に感情を爆発させた。
【ヴェイト】は様変わりした【セレン】に恐怖を抱き
動くことも、声を出すこともできずにいた。
未練がなくなったら、【セレン】は消えていくのだろう。
完全に【魔性】として永遠に成仏できずに、この海を彷徨うのだろう。
【ヴェイト】は恐怖の中、そんなことを考えていた。
そして、この手を取れば、【セレン】と一緒になるのだろう。
もしかして、今まで犠牲になった者たちも【魔性】の中で存在しているのだろう。
【ヴェイト】はそう思いながら、【セレン】の差し出された手を見ていた。
その声が誰のものかわからない。必死になっていることだけは感じ取った。
でも、【ヴェイト】は決めた。【セレン】と一緒に逝くことを。
ふと、抱きしめている手が緩くなった。目の前には【セレン】の悲しい顔があった。
だが、【セレン】は微笑みを浮かべたままだった。
そして、【ヴェイト】は意識を失った。
つづく