第1/3話 僕たちの無知の贖罪

文字数 793文字

〈終わり〉

目を開けるとそこは拷問室で、僕は吊るされていた。ここでは抵抗してはならない。
壁を壊すことはできても、僕にはできない。反抗してはいけない。
檻はなく、足はあるけれど、僕には抜け出せない。もし抜け出せるとわかっていても、その方がいいとわかっていても、僕には難しかった。この先へ進んでも変わらない。

しかし僕は今から、この城のどこかにいる、杏のもとへ行かなければならない。

だけど、僕はこのままだ。

僕は目の前の暗闇を見つめていた。
すると、前の方から足音が聞こえきた。
僕は反射的に、息を整え、目をつむり、瞼の中へと引き返す。

………この足音は凛のものか?…なぜ凜の足音が聞こえるのだろうか。テンポが速い。

僕は目を開けた。

僕は動揺した。

仮面をつけ、ランプを手にしたメイドが、目の前にいる。

僕は察した。
あぁ、そういう事か。

僕は脱力した。

母と同じだ。

僕は無力だ。

凜はランプを置き、壁についている鎖のレバーを引いた。

それにつれて、僕の縛られた両腕が、天井に引き込まれていく。
僕はつま先立ちになった。

凜は鞭を手に持った。

僕に近づいてくる。

ぴしゃっ

凜は僕の喉元に鞭を放った。
息が漏れる。
僕の首は裂かれ、血が滴る。凜が手当てしてくれた場所だった。

もう一発、もう一発と、何発もなぶられた。

全身に傷ができ、服は破れ、血が垂れる。

僕は貧血になり、頭がふらつき、意識が薄れた。

しかし僕は、安らいでいた。

僕はマゾではないが、うれしかった。
凜に痛めつけられることが、僕の贖罪になった。

凜、許してくれ。

僕が君を連れてこなければ…。

僕は意識が遠のく中、過去を思い出していた。
































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