第1/3話 僕たちの試練の開始

文字数 1,586文字

〈開始〉

目を開けると、そこは森の中だった。
僕の城の付近とも、泉の付近の森とも違っていた。
木が一本一本、巨大だった。

僕はベッドの上に寝ていた。
巨大な木の上に建てられた、ツリーハウスのベッドに寝ていた。

外壁はないため、風が通り、僕を包む。

僕は起き上がろうとした。
しかし起き上がれない。
全身が痛んだ。僕の体は包帯で固定されている。

誰が処置してくれたのだろう。

ふと、凜の事を思い出す。

彼女はどうしているのだろうか。というより、どうしたのだろうか。
凜とは連絡が途中で途切れた。
土人たちが襲ってくる前に。

凜も仲間だったのか…。

そんな考えが頭に浮かんだが、そうとは考えられなかった。
そう考えたくもなかったし、信じる根拠はなかった。

凜に裏切られたとしたら、仕方がない。
僕のせいで、凜はこの組織に入ることになった。
彼女も死んでいた方が良かったのかもしれない。

いや、それは僕のエゴだろう。凜の考えは、凜のものだ。



僕は状況を確認した。
足元を見ると、杏が寝ていた。僕の膝の上で。

杏は綺麗な顔をしていた。

彼女の寝顔を、ずっと見ていたいなぁ。

しかし眺めていると、彼女は起きた。

僕は話しかけられることを期待した。

しかし彼女は僕の方を見て、立ち上がり、何も言わず、階段を下りて行ってしまった。

どこへ行ってしまったんだろう。

僕には何もできない。
僕は天井を見上げ、記憶を探った。

クジラの中へ入った後、目を覚ましたら、ここにいた。老婆の言う自然界なのだろうけど…。

階段から音が聞こえてきた。三つ…。
階段から順に、老婆、杏、そして土人が上がってきていた。

「調子はどうかね」
老婆は僕のそばまでやってきて、そういった。

「全身が痛みますが…。何とかなりそうです。」

「そうかい…。」

そういうと老婆は杖を置き、正座をした。

そして頭を下げた。

「すまなかった…。途中でソナタを危険な目に合わせてしまって、わがままを許してほしい。」

僕は動揺した。

「いや、いったい何を…。僕はあなたには何もされていませんし、何よりこれから力を借り王としている。」

僕はクジラのおかげで生き延び、老婆のおかげでこれから成長する。

「途中でわしは姿を消した。本当ならわしを半分犠牲にして、そなたの力に気づいてもらおう
としたのじゃが、わしはこの子を選んだ。」

そういって、老婆は体の向きを変え、杏の方に向き直り、再び頭を下げた。

「わかったわ。あなたがそう言うのなら、私はあなたを許すわ。ただ、私は私のしたい事、できることをしたまでよ。」

杏はそう言ってかがむと、老婆を抱きしめた。

僕は彼女の行為に、胸が苦しんだ。

僕のきっと彼女のようにするべきだったのだろう。今は体が動かないけど。

老婆は立ち上がり、杖もち、僕に話をした。

「そなたにはやってもらうことがある。
一つ、瞑想に励むこと。
二つ、仕事を見つける事。
三つ、この三つめはそなたが決めておくれ。」

聞きたい事はあったが、僕は了承する。
「わかった。」

「そして杏。そなたにも三つやってもらうことがある。詳しくはあとで話そう。」

その後時間がたち、体も回復してきた僕は地上へ降りることにした。
僕は階段を下りていった。
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