第19話 渉の想像

文字数 974文字

――

 おっさんのイメージはひじょーに漠然としたものである。

 ツーハンデッドソードには鍔があるのが普通だが、

 おっさんのイメージとする中には鍔が無い。

 ―でないと、柄まで的に入り込むのは物理的に無理がある・・・と思うだろうが、

 おっさんのイメージには鍔の強固さなど微塵も無いのである。

 鍔が的に当たった瞬間、どこかへぶっ飛んでいった様子を見ていた者なら、

 こう考えるであろう。たいした武器じゃないみたいだな・・・と、しかし、

 おっさんのイメージは漠然なだけで、実用面に於いて劣っているのかと評価した場合、

 とんでもない評価を与えられてしまう。おっさんのイメージ錬成における実用度合いは、

 異世界レベルではない!地球という文明が築き上げ、妄想力増進を突き進み、

 ファンタジー要素を世界レベルで発掘し続けてきた人間たちの、

 映画、漫画、アニメといった芸術をおっさんは見てきた。

 見てきたと言うことは・・・そう想像できてしまうのである。

 その結果が生み出すものは、想像対象現実化という名の武器である。

 幼いころから、ファンタジー物に憧れない男はいるのだろうか?

 男なら草むらで振りやすい木の棒を見つけて、ブンブンと振り回し、

 草木を刈り取る遊びをしたことのある者もいるのではないだろうか?

 おっさん、いや渉は女神にこの時感謝した。

 「(俺に楽しみをくれてありがとう)」と。

――

「あのー、おっさ・・31番の人。君名前は?」

「・・・」

「おーい31番さーーん」

「・・・」

 指導官はしょうがないとばかりにおっさんに近づいていき、肩にトントンする。

「ん?どうした指導官」

「おいおい話しかけてるのに、無言だからよ。あんた名前は?」

「名前?・・・渉だ」

「ワタルか、聞かない名前だな、この辺の人間か?」

「・・・いーや、遠くからきた」

「遠くって・・・まあ、冒険者志望なら、諸事情あるだろうが、まあいい合格だ、次に行って良いぞ」

 指導官は1枚の紙を渡すと、試験に戻っていく。

「・・・(ふむ、合格したか、さて次に行きますかね)」

 渉の第1の試験終了。

 次なるはマナ試験・・・何も知らないおっさんは剣に全属性を付与するのであった・・・。

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