第1話 おっさんの生活

文字数 875文字

古着生活30年。

新品なんて買ったことないが、それが当たり前。

富裕層だとか表現するが、だからどうした。

貧乏していて生活するのに、古着だからって別に着れたらいいだろ。

少年時代から古い物を着せられ、食べるものの中には試食品コーナーで頬張る姿がワンシーンとして存在する。

そんな少年も38歳。

おっさんになって、自分でお金を稼げるようになってみたら、新しい服を買うのか。

・・・そうでもない、何故だって?

新しい服を買い、古着に出す若者は傷んでいるわけでもない美品を手放していて、それに対して「もったいない」って思わないのだろうな。

時代のセンスとか、流行だとか、そんなものに生活の基軸を左右させる余裕ある生活を送ることが、どんだけ我儘なことか分かってない。

いや、分かってやってるんだろうな。

男の名前は、志布見 渉(しふみ わたる)。

38歳独身で、飲食店で社員をしている。

創業して20年の単体企業。

2年以上単体の企業を存続させるというのはなかなかに出来るようで出来ないもの。

資金繰りもそうだが、環境設備を安全かつ信用のおける状態に維持するってのは地道な作業が積み重なった上で成り立っていると現場に従事しているから分かる事だ。

渉の職場では調理の種別ごとに担当が割り振られている。

渉は揚げ場、麺場と調理担当をしていて、月に30万くらいは給料で貰っている。休みは週休2日あるから不満はない。

そんな渉も私生活では貯金しつつ、美品の古着を探してはお金の使い所には慎重になっている。

今日は亡くなってしまった両親の墓参りだ、好きだった苺大福をお供えに用意して、電車で30分の山墓地に向かっている。

今日の電車は混んでいて、いつもより空間が狭く、電車が揺れては隣の人に肩が当たってしまう。

珍しいことではないが、あまり気のいい話では無い。

発車すること、20分後、時刻は14:45分。

突如として予測もできなかった地震が発生する。

人生何が起こるか分からんものだ。

渉は意識を失うのであった・・・
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