怨21 幽体離脱 快楽と快感と生死の狭間の生物の本能

文字数 452文字

睡眠薬に身体がまだ慣れていないせいか、寝起きは身体が鉛のように重たく、瞼も腫れあがっていた。
しかし、高木は目を開ける勇気はなかった。
今現在、自分が夢の中にいるのか現実世界にいるのかが判断出来ないのだ。
真っ暗ではなく、真っ黒な世界に身体が浮かんでいる。
その始まりは異様だった。

ベッドに仰向けで眠っていた高木の右足が、ゆっくりと足先から上がっていった。
右腕もそれにつられて手先から天井へと持ち上がっていく。
自分の意志とは関係なしに、右足と右腕はゆらゆらと弧を描きはじめ、己の身体をベッドに残したまま、高木自身の意識が ー というよりも魂が快感と共に抜けた。
部屋の天井を突き抜け、マンションの屋上を超え、夜空高く吸い込まれて逝く魂。
空気の冷たさも、風のにおいも、雲の感触も感じる事が出来た。
ゼックスにも似た快感と興奮。それは決して快楽ではない。生死の狭間の生物の本能なのかも知れないと高木は感じていた。

その時だった。
凄まじい勢いで高木の魂は元の身体へと引きずり込まれた。
重力の非道な仕打ちに高木は意識を失った。
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