第8話 ヒップ

文字数 761文字


 フェチズム……人間ならば、誰しも一つは持っているでしょう。
 
 僕はたくさんありすぎて、ここには全て書けませんが。
 一つだけなら、言えます。
 それは、”お尻”です……。

 突然の性癖暴露になりましたが。
 僕がスーパーへ買い物に行った時のことです。

 お酒が欲しかったので、酒コーナーを物色していると。
 近くで商品出しをしている、店員さんが見えました。

 床に正座してダンボール箱から、お酒を出して棚に入れています。
 人間、どうしても正座で座れば、ヒップラインが強調されます。
 この店員さんも長ズボンを履いてるとは言え、プリっとしたお尻が突き出ているように感じました。
 
 しかし、その店員さんのお尻がすごく良い形でして、思わず見入ってしまうほどでした。

 僕としては、別にその方のお尻を見たくて、見たわけじゃありません。
 視線を変えたら、たまたまそこにあったため、気まずくなりました。
 すぐに視線を変えようとしたその時でした。

「ふぅ……」

 店員さんがため息をつきました。
 気になった僕は、視線をお尻からゆっくり顔へ上げていきます。

「!?」

 その顔を見て、僕は驚愕しました。
 魅力的なセクシーヒップの持ち主は……男性だったからです。
 頭の薄いおじさまでした。

 しかし、お尻フェチの僕が、唸るほどのヒップでした。
 『良いものはいい』……母が教えてくれたことです。

 この瞬間、僕は思った。

(よし、ちゃんとこの人へ自分の気持ちを伝えよう)

 そう感じた僕は、そのおじさまに声をかけることにしました。
 
「あ、あのすみません。ちょっといいですか?」
「はい? なんでしょう?」
「男の僕が言うのも、なんですが……めっちゃスケベな尻をお持ちですね!」
「え……」
「ヒップ大会があれば、男性部門で優勝できると思いますよ!?」
「……」

 結果、僕は通報された。
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