第9話 ただのからあげ

文字数 1,002文字


 カスハラ……カスタマーハラスメントというものがあります。
 理不尽なクレーム、暴言など。
 人と接するお仕事をされている方は、とても大変だと思います。

 しかし、逆に店員さんから感じ悪くされたり、横柄な態度を取られると。
 とても怖いですし、軽く傷つきます。

 僕はよくコンビニで、ホットストナックを注文します。
 どれも安価で、出来たてを美味しく食べられますからね。

 昔から、鶏のから揚げが大好物でして。
 コンビニに限らず、色んな店で見かけたら、注文したり購入しては、味比べするのが大好きです。
 
 早朝に妻と二人でコンビニへ行き、買い物をしていたのですが。
 レジにいた店員さんは、夜勤明けで疲れていたのかもしれません。

 いつも通り、ホットストナックのコーナーへ向かうと。
 少し不機嫌そうな、女性の店員さんが立っていました。
 
 僕と妻が一生懸命、商品を選んでいたのですが。
 商品の前に、品名や値札がなにもついていません。
 これに僕と妻は困惑しました。

 から揚げと言っても、最近は色んな味があります。
 辛いものから、レモン味やペッパー味とか、たまにはチーズなんて。
 ですので、気になった僕は、先ほどの女性店員さんへ尋ねることにしました。

「あ、あの……すみません。このから揚げなんですけど、何のから揚げですか?」

 と質問したところ、女性店員さんは不機嫌そうにこう答えました。

「はあっ!? それ? からあげっ! ただのからあげ!!」

 その大きな声に僕は、恐怖から縮みあがってしまいました。

 どこか僕に落ち度があったのではないか? としばらく考えてみます。

(質問の仕方が悪かったのかな……? いや、特に悪いところは……)

 この時、僕は思った。

(はっ!? さっき店員さんが言ったことに意味があるんだ!)

(ただのからあげ……無料(ただ)のからあげってことなんだ!)

 その意味を知った僕は、店のカウンターへと入り込み、ホットストックコーナーの商品を手に取る。
 棚に並んでいたからあげを全て、マイバッグへぶち込んで、店から立ち去ろうとしたその瞬間。
 先ほどの女性店員さんが、声を荒げる。

「ちょっと! なにをやっているの!? 会計が済んでないでしょ?」
「え? だって、『ただのからあげ』って言ったじゃないですか」
「はぁ? 一体何を言って……」
「無料のから揚げとは、素晴らしいサービスですね!」
「……」

 この10分後、店にパトカーが到着した。
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