第6話 今視えている日常 6
文字数 3,879文字
「んー」
翌朝カーテンの隙間から差し込む光につられて、目が覚める。
昨日お母さんが、ご飯の事とか考えなくて良い、とは言ってくれていたものの、いつもの生活リズムで休みの日に目を覚ましてしまう午前7時。
「おはよう。お母さん」
下に降りるとお母さんだけが起きていて、お父さんも慶もまだ寝ているみたいだった。
「もう起きたの? お母さんたちがいる時くらいゆっくりして良いっていつも言ってるのに」
そんな私をお母さんが苦笑いを持って、私の方を振り返る。
「いつもよりかはゆっくりしたつもりなんだけどね。とりあえず顔洗ってくる」
私はお母さんに断りを入れて洗面所・自分部屋へと戻り、軽くだけ身支度を整える。
暑いのが苦手と言うのも手伝って、髪も短くしているから身支度自体は軽くで終わってしまう。
え? 一応女の子のつもりだから、家に居る時でも最低限の身だしなみはするよ?
これ以上はもっと仲良くなってからねっ。
そして、手持無沙汰も助けて、結局我が家の男2人が起きてくるまで、私はお母さんと一緒に、朝ご飯を手伝った。
「愛美が作ってくれた朝ごはん!」
なんか朝からお父さんが感動してる。一方慶はと言うと
「いつも同じような朝ごはんだけどな」
お父さんは慶に言った訳ではないだろうけど、慶は少しぶっきらぼうにお父さんに答える。
「そんな事言うけどな慶。お父さんは愛美の作ってくれたゴハンをお父さんは中々食べられないんだぞ」
するとお父さんがまた、大げさに慶に言い返す。
「お父さん? 私のゴハンでは文句がおありですか?」
なんか微笑ましいんだけど、お母さんがちょっとオカンムリ。
「お母さんのご飯も美味しいに決まってるじゃないか! ただ愛娘 の手料理も食べたくなるのは男親ってもんなんだよっ!」
そんなお母さんに必死で訴えかけるお父さん。なんだかおもしろい。
「なら、今日の夜は私がお父さんとお母さんに夜ご飯振舞おうか?」
そんなに喜んでくれるならと、提案したのだけれど、
「いや、それもとても嬉しすぎる提案なんだけど、今日はみんなで外食にしよう!
ゴールデンウィークも結局全然帰って来られなかったし、母さんにも愛美にもたまには楽して欲しいしな! それに慶にもたまには外で食べてさせてやらないとな」
「やった! マジで! オヤジ最高!!」
お父さんの提案に飛びあがる慶。たまには外食にして連れて行った方が良いのかもしれない。
でも慶と二人で外食と言うのもなぁ。そんなことを考えていると、
「はいはい、お父さんも落ち着いてください。じゃあ今日は昼から買い物に行きますけど、慶久 はどうする?」
「買い物はパス。だってオカンもねーちゃんもなげーからな」
「じゃあ今日はお父さんとお母さんと愛美の3人ですね」
お父さんと私を置いて、話しがトントンと進んでいく。
「あれ? 俺も行くの?」
3人と言われて驚いたお父さんが、すかさず確認するけど
「何を言ってるんですか? 可愛い愛美の服を買うのに、荷物を愛美に持たせるんですか?」
お母さんの中ではすでに決まった事のように、お父さんに言い返す。
「行かせて頂きます」
そんなお父さんの返事に満足したのか、
「じゃあ慶久? 夕方食べに行くのに家に寄るから、ちゃんと家に居なさいよ」
「わかってるって」
慶に一声かけたお母さんに対して、めんどくさそうに答える慶。
そうして、女の買い物は長いと言う理由で、昼からは少し別行動になる。
車で移動しないと遠く感じる程度には離れている距離にある大型の総合商業施設にて買い物中、
「やっぱり、小柄な方が選べる服の種類が多くて良いわねぇ」
私をそっちのけで、服選びを満喫するお母さん。
「お母さん? 私そんなにかわいい服着られないよ?」
なんか蒼ちゃんが着たら似合いそうな服を、どんどん選んでくる。
「なあ、愛美? こんな服なんてどうよ?」
その上お父さんも私の服を選んでくるんだけれど、
「いや、それはちょっと……」
いや、確かに似合えば可愛いとは思うけど、いかんせん肩が全部出ているような服だから露出が大きすぎて私には着られない。そんなお父さんを見とがめたのか、
「お父さん? お父さんはもう外で待っててください」
お母さんに言われたお父さんは、渋々外に向かって歩いていく。
ちょっとフォローもしたかったけど、あの服は私には着られない。恥ずかしすぎる。
そんな一幕のあった買い物も、結局は上下の服と靴下、靴を買って帰宅する。
なんだかんだ言って、本当に私の服を買っただけだった。
でも、これだけ可愛いと着るだけでも勇気がいる。こういうのも蒼ちゃんが着ると映えるんだろうなぁ。
そんな事を思いつつ、一度家に帰って、慶を拾ってから、外食へと向かった。
あくる日曜日の夜には、もう両親とも朝早くから仕事に向かうとの事で、
「今日はカレーですからね」
夜ご飯も簡単なもので、
「少し多めに作っておいたから、明日の夜にも食べられると思うわよ」
仕事に向かう前日は日持ちをするものをよく作ってくれる。
「またカレーかよ!」
慶は文句を言っていたけど、それでも作ってもらえるだけ私はありがたい。
そんな夕食も終わり、明日、月曜日の全校集会の簡単な原稿を作ろうと机に向かっていると、
「愛美、少し良いか?」
今日は外からお父さんの声がする。
「うん開いてるよー」
と、お父さんに返事をしたけど、
「ちょっとお父さんと話をしないか?」
部屋に入るのにためらいを感じているのか、部屋には入ってこない。
とりあえずペンを置いて、ドアを開けて、
「部屋入って良いよ?」
そう言ったけど、ちょっと申し訳なさそうに
「いや、入ると母さんに怒られそうだし」
と言いながら、リビングで話をしようと再度お父さんに誘われたから
「じゃあ一緒にいこっか」
そう言って私もお父さんの後についていく。
「あれ? お母さんは?」
私の問いに
「お母さんは今日は慶久と話してると思うぞ」
「そっか」
「……」
「……」
すぐに答えるも、そこからの会話は中々続かない。
もちろん仲が悪いってわけじゃないのは、もうわかってもらえると思う。
多分何を話していいのか分からないんだと思う。私も何を話そうか迷ってるから。
「また来週、帰ってくるつもりだけど、本当に困った事とか心配事とか大丈夫か?」
昨日と今日の昼までの雰囲気とは少し違う、そんな声色で私に聞いてくる。
「うん。大丈夫だよ。お母さんは慶の事心配してるみたいだけど、慶はそんなに悪い子じゃないよ」
慶の男の子特有のって良いのか分からないけれど、思春期の事かなとも思ったけど、そんな私の答えに少しもどかしそうにして
「いや、それもそうなんだが、家の事ほとんど任せっきりで、友達と遊ぶ時間、自分の時間を持ててるか? 好きな事は出来てるか?」
私自身の心配をしてくれてる。
「家事は好きでしていることだし、毎日のお弁当だって、自分で作ってきてる子もいるし、そんなに負担に感じた事は無いよ」
どれだけ忙しくても、土日のどっちかだけでも、両親の内どちらかだけでも必ず顔を出してくれる。だから、週一回はどうあっても気分転換やリラックスに自分の時間として全部をあてがうことも出来ている。
「でも結局、塾に行かせてやれてないし、習い事も――」
「――お父さん。私は今でも十分に幸せだから」
多分私の成績の事を気にしているんだろうけど、
「でも、もっとやりたい事させてられていれば――」
――それだけ成績が良ければ、もっとやりたい事、
したい事の選択肢も増えただろうに――
私は幼いころ、お父さんとお母さんが、おぼろげだけど、どれだけ苦労しているのかを知っている。だからお金は大切だと思う。だったらお金さえあれば幸せになれるかと言われても、そういう風には微塵も考えられない。
「愛美、お母さんだけでも家にずっといてもらうか? 仕事の方は忙しいが、安定しているから、お父さんが頑張れば何とかなるぞ」
時間は等しくみんなに平等だと思っている。もちろん病気や不慮の事故なんかで時間がそこで終わってしまう事もあると思う。
その中でも、だったらその時間をいかに大切にするか。
「お父さんだけが頑張って、お母さんと共有する時間が少なくなって、それでお父さんは幸せ?」
人が幸せだと思えるのは、結局そこだと私は思っている。
そう言う意味では、この家も、学校の友達も、私からすれば十分に幸せだと言える。
「……」
私の問いに答えられないお父さん。
「お父さん。本当に大丈夫だから。何かあったらお父さんにもお母さんにもちゃんと連絡する」
「本当に愛美は、良い子に育ってくれたよ」
それを最後にまたしばらく無言の時間が続く。
静寂が奏でる、独特の空気音が耳につき始めるころ、
「お父さんいつもありがとう! でも私たちは大丈夫だからお父さんも体に気を付けて、頑張ってね」
お父さんに、昨日お母さんに見せた笑顔を見せる。
やっぱり、笑顔を見せるのが子供が親に出来る孝行だと私は思うから。
「さっき何かやりかけてたんだよな? 呼び出して悪かったな」
そんな私の笑顔に満足したのか、また気を遣い始める。
「明日のスピーチの原稿。紙一枚分だからすぐに終わるよ」
気を遣わなくても良いのに、
「じゃあ、お父さんもお母さんも明日早いからもう寝るな。愛美も風邪ひかない
ように、無理しないようにな。また帰ってくる」
早々に話を切り上げる。
そんなお父さんの背中を見送って、少しだけこの余韻の中で耽ってから自室へと戻った。
翌朝カーテンの隙間から差し込む光につられて、目が覚める。
昨日お母さんが、ご飯の事とか考えなくて良い、とは言ってくれていたものの、いつもの生活リズムで休みの日に目を覚ましてしまう午前7時。
「おはよう。お母さん」
下に降りるとお母さんだけが起きていて、お父さんも慶もまだ寝ているみたいだった。
「もう起きたの? お母さんたちがいる時くらいゆっくりして良いっていつも言ってるのに」
そんな私をお母さんが苦笑いを持って、私の方を振り返る。
「いつもよりかはゆっくりしたつもりなんだけどね。とりあえず顔洗ってくる」
私はお母さんに断りを入れて洗面所・自分部屋へと戻り、軽くだけ身支度を整える。
暑いのが苦手と言うのも手伝って、髪も短くしているから身支度自体は軽くで終わってしまう。
え? 一応女の子のつもりだから、家に居る時でも最低限の身だしなみはするよ?
これ以上はもっと仲良くなってからねっ。
そして、手持無沙汰も助けて、結局我が家の男2人が起きてくるまで、私はお母さんと一緒に、朝ご飯を手伝った。
「愛美が作ってくれた朝ごはん!」
なんか朝からお父さんが感動してる。一方慶はと言うと
「いつも同じような朝ごはんだけどな」
お父さんは慶に言った訳ではないだろうけど、慶は少しぶっきらぼうにお父さんに答える。
「そんな事言うけどな慶。お父さんは愛美の作ってくれたゴハンをお父さんは中々食べられないんだぞ」
するとお父さんがまた、大げさに慶に言い返す。
「お父さん? 私のゴハンでは文句がおありですか?」
なんか微笑ましいんだけど、お母さんがちょっとオカンムリ。
「お母さんのご飯も美味しいに決まってるじゃないか! ただ
そんなお母さんに必死で訴えかけるお父さん。なんだかおもしろい。
「なら、今日の夜は私がお父さんとお母さんに夜ご飯振舞おうか?」
そんなに喜んでくれるならと、提案したのだけれど、
「いや、それもとても嬉しすぎる提案なんだけど、今日はみんなで外食にしよう!
ゴールデンウィークも結局全然帰って来られなかったし、母さんにも愛美にもたまには楽して欲しいしな! それに慶にもたまには外で食べてさせてやらないとな」
「やった! マジで! オヤジ最高!!」
お父さんの提案に飛びあがる慶。たまには外食にして連れて行った方が良いのかもしれない。
でも慶と二人で外食と言うのもなぁ。そんなことを考えていると、
「はいはい、お父さんも落ち着いてください。じゃあ今日は昼から買い物に行きますけど、
「買い物はパス。だってオカンもねーちゃんもなげーからな」
「じゃあ今日はお父さんとお母さんと愛美の3人ですね」
お父さんと私を置いて、話しがトントンと進んでいく。
「あれ? 俺も行くの?」
3人と言われて驚いたお父さんが、すかさず確認するけど
「何を言ってるんですか? 可愛い愛美の服を買うのに、荷物を愛美に持たせるんですか?」
お母さんの中ではすでに決まった事のように、お父さんに言い返す。
「行かせて頂きます」
そんなお父さんの返事に満足したのか、
「じゃあ慶久? 夕方食べに行くのに家に寄るから、ちゃんと家に居なさいよ」
「わかってるって」
慶に一声かけたお母さんに対して、めんどくさそうに答える慶。
そうして、女の買い物は長いと言う理由で、昼からは少し別行動になる。
車で移動しないと遠く感じる程度には離れている距離にある大型の総合商業施設にて買い物中、
「やっぱり、小柄な方が選べる服の種類が多くて良いわねぇ」
私をそっちのけで、服選びを満喫するお母さん。
「お母さん? 私そんなにかわいい服着られないよ?」
なんか蒼ちゃんが着たら似合いそうな服を、どんどん選んでくる。
「なあ、愛美? こんな服なんてどうよ?」
その上お父さんも私の服を選んでくるんだけれど、
「いや、それはちょっと……」
いや、確かに似合えば可愛いとは思うけど、いかんせん肩が全部出ているような服だから露出が大きすぎて私には着られない。そんなお父さんを見とがめたのか、
「お父さん? お父さんはもう外で待っててください」
お母さんに言われたお父さんは、渋々外に向かって歩いていく。
ちょっとフォローもしたかったけど、あの服は私には着られない。恥ずかしすぎる。
そんな一幕のあった買い物も、結局は上下の服と靴下、靴を買って帰宅する。
なんだかんだ言って、本当に私の服を買っただけだった。
でも、これだけ可愛いと着るだけでも勇気がいる。こういうのも蒼ちゃんが着ると映えるんだろうなぁ。
そんな事を思いつつ、一度家に帰って、慶を拾ってから、外食へと向かった。
あくる日曜日の夜には、もう両親とも朝早くから仕事に向かうとの事で、
「今日はカレーですからね」
夜ご飯も簡単なもので、
「少し多めに作っておいたから、明日の夜にも食べられると思うわよ」
仕事に向かう前日は日持ちをするものをよく作ってくれる。
「またカレーかよ!」
慶は文句を言っていたけど、それでも作ってもらえるだけ私はありがたい。
そんな夕食も終わり、明日、月曜日の全校集会の簡単な原稿を作ろうと机に向かっていると、
「愛美、少し良いか?」
今日は外からお父さんの声がする。
「うん開いてるよー」
と、お父さんに返事をしたけど、
「ちょっとお父さんと話をしないか?」
部屋に入るのにためらいを感じているのか、部屋には入ってこない。
とりあえずペンを置いて、ドアを開けて、
「部屋入って良いよ?」
そう言ったけど、ちょっと申し訳なさそうに
「いや、入ると母さんに怒られそうだし」
と言いながら、リビングで話をしようと再度お父さんに誘われたから
「じゃあ一緒にいこっか」
そう言って私もお父さんの後についていく。
「あれ? お母さんは?」
私の問いに
「お母さんは今日は慶久と話してると思うぞ」
「そっか」
「……」
「……」
すぐに答えるも、そこからの会話は中々続かない。
もちろん仲が悪いってわけじゃないのは、もうわかってもらえると思う。
多分何を話していいのか分からないんだと思う。私も何を話そうか迷ってるから。
「また来週、帰ってくるつもりだけど、本当に困った事とか心配事とか大丈夫か?」
昨日と今日の昼までの雰囲気とは少し違う、そんな声色で私に聞いてくる。
「うん。大丈夫だよ。お母さんは慶の事心配してるみたいだけど、慶はそんなに悪い子じゃないよ」
慶の男の子特有のって良いのか分からないけれど、思春期の事かなとも思ったけど、そんな私の答えに少しもどかしそうにして
「いや、それもそうなんだが、家の事ほとんど任せっきりで、友達と遊ぶ時間、自分の時間を持ててるか? 好きな事は出来てるか?」
私自身の心配をしてくれてる。
「家事は好きでしていることだし、毎日のお弁当だって、自分で作ってきてる子もいるし、そんなに負担に感じた事は無いよ」
どれだけ忙しくても、土日のどっちかだけでも、両親の内どちらかだけでも必ず顔を出してくれる。だから、週一回はどうあっても気分転換やリラックスに自分の時間として全部をあてがうことも出来ている。
「でも結局、塾に行かせてやれてないし、習い事も――」
「――お父さん。私は今でも十分に幸せだから」
多分私の成績の事を気にしているんだろうけど、
「でも、もっとやりたい事させてられていれば――」
――それだけ成績が良ければ、もっとやりたい事、
したい事の選択肢も増えただろうに――
私は幼いころ、お父さんとお母さんが、おぼろげだけど、どれだけ苦労しているのかを知っている。だからお金は大切だと思う。だったらお金さえあれば幸せになれるかと言われても、そういう風には微塵も考えられない。
「愛美、お母さんだけでも家にずっといてもらうか? 仕事の方は忙しいが、安定しているから、お父さんが頑張れば何とかなるぞ」
時間は等しくみんなに平等だと思っている。もちろん病気や不慮の事故なんかで時間がそこで終わってしまう事もあると思う。
その中でも、だったらその時間をいかに大切にするか。
「お父さんだけが頑張って、お母さんと共有する時間が少なくなって、それでお父さんは幸せ?」
人が幸せだと思えるのは、結局そこだと私は思っている。
そう言う意味では、この家も、学校の友達も、私からすれば十分に幸せだと言える。
「……」
私の問いに答えられないお父さん。
「お父さん。本当に大丈夫だから。何かあったらお父さんにもお母さんにもちゃんと連絡する」
「本当に愛美は、良い子に育ってくれたよ」
それを最後にまたしばらく無言の時間が続く。
静寂が奏でる、独特の空気音が耳につき始めるころ、
「お父さんいつもありがとう! でも私たちは大丈夫だからお父さんも体に気を付けて、頑張ってね」
お父さんに、昨日お母さんに見せた笑顔を見せる。
やっぱり、笑顔を見せるのが子供が親に出来る孝行だと私は思うから。
「さっき何かやりかけてたんだよな? 呼び出して悪かったな」
そんな私の笑顔に満足したのか、また気を遣い始める。
「明日のスピーチの原稿。紙一枚分だからすぐに終わるよ」
気を遣わなくても良いのに、
「じゃあ、お父さんもお母さんも明日早いからもう寝るな。愛美も風邪ひかない
ように、無理しないようにな。また帰ってくる」
早々に話を切り上げる。
そんなお父さんの背中を見送って、少しだけこの余韻の中で耽ってから自室へと戻った。