第18話

文字数 606文字

私は永遠のお別れを幾度も繰り返しています。

私は繋いだ手の感覚を永遠のものにしようと、そっと目を瞑りました。

そして、この記憶を忘れないために死んでしまおうと思いました。視界が霞みました。そして(しずく)が線を描き、音を立てました。ぽたり。また「ぽたり」と…。










私は手の甲に温かく、柔らかい感覚が広がるのを感じました。そっと目を開けました。

片膝をついた川上優作がそこにはいました。彼は消えることなく、そこにいました。
「…ありがとう」
彼はそう言い、頬を夕日で赤く染めていました。

そして何度も何度も私を掴んで離さなかったその透き通る瞳が再び私を捉えました。
「もう君に寂しい思いなんかさせない。

だ」
彼は言いました。

私は理解しました。彼の言葉を。私の愛を。全てを。
私は理解しました。私の望みを。理想を。

を。だから優作は消えなかったんだと…。

とたん、私の頬も夕日色に染まりました。




私は舟の上にいる彼を見ました。私は彼の手に引かれました。彼は私を舟の上に上手に引っ張り上げ、笑っていました。そして、雲が次第に流れていき、光の線が空に引かれました。やがて太陽が顔を覗かせました。

私の心の雨は止みました。でも私の温かい雨はとどまることを知りません。

「ねえ、優作」
そこは二人だけの世界です。



私たちは夕日の下、互いに見つめ合いました。

そして、永遠に海馬に刻まれるようなキスをしました。







『この手を離さないで』(完)

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