夢十夜 壱
文字数 546文字
私は車を運転している。行き先は分からない。
助手席には親友の男。顔に見覚えはあるのだが、誰なのかは思い出せない。
男は何処へ向かうべきなのか、知っているらしい。問いかけるが見当はずれな答えばかりが返ってくる。困る。
道は真っ直ぐ。ほぼ等間隔に並ぶ信号機。しかし、右折路も左折路もない。横断歩道すらない。ひたすら真っ直ぐな道。
赤信号に止められる。が、いったい何を待っているのだろう。人通りはない。後続の車が次々と追い抜いていく。止まっているのはこの車だけ。留まっているのは自分たちだけ。まだ青に変わらない。待ち切れずにアクセルを踏む。
「待て」
助手席の男が制止する。
「何故止める?」
「まだ赤だろう」
「もう五分もあのままだ」
「焦らなくてもいい。間に合う」
「何処に行くんだ?」
「行けば分かる」
「ちゃんと辿り着くのか?」
「それは分からない」
それきり彼は黙ってしまう。信号が青に変わる。私は車を走らせる。どこまでも。直線の道を、どこまでも。道の両側には背の高い木々が立ち並ぶ。同じような景色が延々続く。走っているのか、止まっているのか。進んでいるのか、戻っているのか。もはや分からない。不安になって助手席の男に問う。答えはない。
ふと横を見る。
男はもういない。
「通り過ぎたかな」
【第四夜 疾走】
助手席には親友の男。顔に見覚えはあるのだが、誰なのかは思い出せない。
男は何処へ向かうべきなのか、知っているらしい。問いかけるが見当はずれな答えばかりが返ってくる。困る。
道は真っ直ぐ。ほぼ等間隔に並ぶ信号機。しかし、右折路も左折路もない。横断歩道すらない。ひたすら真っ直ぐな道。
赤信号に止められる。が、いったい何を待っているのだろう。人通りはない。後続の車が次々と追い抜いていく。止まっているのはこの車だけ。留まっているのは自分たちだけ。まだ青に変わらない。待ち切れずにアクセルを踏む。
「待て」
助手席の男が制止する。
「何故止める?」
「まだ赤だろう」
「もう五分もあのままだ」
「焦らなくてもいい。間に合う」
「何処に行くんだ?」
「行けば分かる」
「ちゃんと辿り着くのか?」
「それは分からない」
それきり彼は黙ってしまう。信号が青に変わる。私は車を走らせる。どこまでも。直線の道を、どこまでも。道の両側には背の高い木々が立ち並ぶ。同じような景色が延々続く。走っているのか、止まっているのか。進んでいるのか、戻っているのか。もはや分からない。不安になって助手席の男に問う。答えはない。
ふと横を見る。
男はもういない。
「通り過ぎたかな」
【第四夜 疾走】