夢十夜 肆

文字数 648文字

 一人っきりで放り出されたから、独りっきりで遊ぶことにした。
 箱の中にはたくさんの玩具。
 さて、何をしよう。どれから遊ぼう。
 最初に取ったものは、十五秒で飽きてしまった。
 次に手にしたものは、色が気に入らなかった。
 三番目に目についたものは、私を捕らえて離さなかった。
 分割されたプレートをスライドさせ、それぞれのプレートに書かれている数字の順番に並び替えるパズル。
 私はこの遊びが得意なことを思い出した。
 バラバラにはぐれてしまった数字たちを、正しい位置に戻してやろう。最短距離を一直線に。迂回路を通って合理的に。私の指先は、自然な動きで彼らを順に導いていった。
 さぁ、これで完成した。
 そう思ったのも束の間。
 数字たちは、まだランダムに配置されたままだった。
 不可思議な現象に戸惑う。考えていても仕方ないので、もう一度挑戦した。
 すぐに出来上がる。瞬きの後には元に戻っている。
 何度やっても、結果は同じだった。
 せっかく私が正しい位置まで持っていっても、彼らは勝手気ままに動いてしまうのだ。
 左上に一番を移動させてやると、その場所を九番が無理矢理奪ってしまう。六番の隣りに七番をくっつけてやると、二人は互いを忌み嫌うように離れていってしまう。指を近づけるだけで逃げていくのは、五番と十番と十四番だ。三番と十一番は手を取り合ったまま動こうとしない。
 それでも何とかしようと、強引に動かしてみた。
 力を込めて、押してみた。
 わがままなプレートたちは、バラバラに弾け跳んでしまった。


【第八夜 場所】
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