第5話

文字数 776文字

「そりゃ生きていたいね! 死んでしまったら何もかもお終いだから…」



「そう… 憶えておくわ…」



そう言ってトロイメライは空を見上げた。

そして急に立ち上がると…



「ねぇ? 続きは別の場所で話さない?」

と言い出した。



僕が立ち上がり…トロイメライに促されるままついて行くと、突然僕の背後で爆発音がした。

爆発の規模からすると敵の迫撃砲が着弾したようだ。

しかもそこはさっきまで僕たちが座っていた場所だった。



僕は思わずゾッとした…



何に…?



もちろん命が危なかったことに対してだ…
あのままあそこに座っていれば、確実に迫撃砲にやられていただろう…



しかしそれ以上に僕をゾッとさせたのはトロイメライ本人に関してだ…



「トロイメライ… 君は一体…?」



「何? 私は別の場所で話したかっただけよ… 良かったわね

命拾いできて…」



違う
あれは偶然なんかじゃない
トロイメライにはわかっていたんだ!



僕は目の前の女がただの女ではなく、何か途方もない力を秘めた

であることを、はっきりと認識したのだった…





それからも不思議なことが続いた…



戦闘は日増しに激しくなり、トロイメライの姿を見かけることもなくなった。

にもかかわらず、僕はトロイメライの存在を感じることができた…
彼女の『視線』を常に感じていたのだ…



そして時に彼女の声を聞いた。



『5つ数えてから急いで通りを横切りなさい』

とか…

『10m先、左手の路地に入って8番街まで移動』

など…
実に具体的な指示が頭の中に直接聞こえてきたのだ。



驚いたことに、その指示通りに動くことで、僕は何度も窮地を救われた。



トロイメライの正体が何なのかは知らない…

だが僕にとっては幸運の女神以外の何者でもなかった!



このままトロイメライが導いてくれれば、生きて故郷に帰ることだって叶うかもしれない?

一度は諦めた望みだったが、それは僕の中で希望という光となって輝き出した…



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