第9話

文字数 897文字

僕たちは極寒の地に送られ、そこで鉄道敷設作業を強いられた。

それは囚人労働の中でも最も辛くて厳しいものだった…



囚人労働にも何種類かあった。中には比較的楽なものもあったが、僕には常に一番辛い労働が当てがわれた…



僕は戦争中『親衛隊』に所属していた。

親衛隊は戦争中に非道な行為に及んだとして、ここでは特に嫌われた…

それは一部の部隊がやったことだったが、親衛隊の軍服を着ていた以上、敵側から見れば僕も同罪なのだった…



毎朝、脱走者がいないか確認するために、捕虜全員で宿舎の庭に整列させられた。

僕たちの人数を数える兵士は、必ずと言っていいほど途中で数の勘定を間違えた。
そこでまた最初から数え直しとなった。
長引く時はこれに2時間近くかかることもあった。
その間僕たちは薄着で立たされ続けた…



食事も酷いものだった…
ほぼ毎日冷めた薄いスープで、中にはジャガイモと何の肉かわからない肉の欠片が僅かに入っているだけだった。
あとは石のように固いパンが一人一欠片程度与えられた。



過酷な労働に加え、寒さと飢えで元戦友たちはバタバタと倒れていった…



その上、見張りの兵士たちからの日常的な暴力もあり、骨折するなどの重症を負う者もいた。



病気や怪我、凍傷などで働けなくなった者は何処かに連れて行かれ、二度と戻って来ることはなかった…



僕はヒルデの写真を見ながら、故郷に帰ることだけを考え続けた…



トロイメライは言った…

『死ぬより辛い目に遭っても生きていたいか… それともいっそ死んで楽になりたいか… どっち?』

と……



僕は生きる選択をした…



ならば今がどんなに辛くても、この道がいつか故郷に通じているだろうと信じることができた…



あぁ、トロイメライ…

僕はもう君を疑わない!

これは君が示してくれた未来…

僕は生きて必ず故郷に帰る!!



その決意が僕に生きる力を与えた…



外での作業時…
見張りの目を盗んでは、雪の下に生えている柔らかい草の芽を食べた…

木の幹の皮を剥がすと、小指ほどの大きさの白い幼虫がいた。そんな虫でさえ僕にとっては貴重な蛋白源だった…



ここでの生活は毎日が生きるための戦いだった…



いつ終わるとも知れない僕の戦争は、まだ始まったばかりだった…



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