第6話 容疑者Ⅴは、もと生徒のクソ雑魚ポリス

文字数 2,325文字

第六話 元生徒の赤心と悪戯
 この路は誰も知らない。
 三番館の203号室の非常口から自電車置き場に出て、中庭テラスにワザと造られた迷路を抜けて隣の四番館に入る。四番館には自宅があって両親と弟と暮らしいている。

 澪(みお)は小学五年生、六年生と「みらい塾」に通った。思春期の入口へと向かう時期、先生に恋をした。あえかなる恋心。教師が近づくと心が弾け顔が火照る。返す言葉もか細くかすれる。まともに顔も見られない。どうすることも出来やしない。
 ただ六年生のバレンタインデーに母親に手伝ってもらってハート型のチョコを手作りした。丁寧にラッピングして大好きな(アナ雪)と赤いハートのシールを中央に貼った。手渡す時には手が震えた。声にもならない。
 これが精一杯の恋のあかし。
 中学生になって塾が遠い存在になると徐々に恋心は薄れる。また高校生になると彼氏が出来てセックスも覚える。塾の先生は過去の清き乙女の赤心。玉響の恋。
 短大のJD1になったものの学業はさっぱり。先も見えない。自分が何をしたいのかも分からない。ただ毎日ゲーム機に没頭する。そして、SNS。インスタ、YouTube、TikTokに居場所を求める。
 結果、いいね!、フォロワー、登録者数だけを求める。(数十万~百万単位)が欲しい。そのためには、女子は身体を張り出す。若さは最大の武器。オンナらしさを際立たせ存分に見せつける。そして仕上げにフォロワーの中から厳選してTwitterに誘い込みp活する。
 エビガデ(恵比寿ガーデンプレイス)でひとランク上のお食事と流行のスイーツ、飲み物、最新のファッションを強請る。相性がいいPとはオトナもする。一回十万円なり。
 たまらない……でも飽きた。

 人生つらめろでぃ腹いてえ毎日病むうぅがしちゅ
 三学期はがんばります人生病むめろでぃ 
 病んだ完全に病んだたすけて

 そんな時、塾の先生にバッタリ出くわした。とっくに忘れたはずの赤心に火が点く。もう小学生の澪ではない。何人ものオトコを知ったミオ。すぐに懐に入り込もうとする。そして過去の先生と生徒の関係は男女のそれに変貌する。
 澪は教師から秘密の抜け道のための鍵を貰う。また秘密の保持を条件に小遣いも受け取る。でも金額よりは秘密の関係が嬉しい。心が弾む。久しぶりに気分が盛り上がる。
 p活でたんまり貯め込んだ財布で、新型ゲーム機を買い、コスメを買い、SNSにアップするためのコスプレを買う。(今日はポリスだぞ!) そして、際どいコスプレの婦警になり、拳銃を胸にあてポーズを決める。


 クソ雑魚ポリス――
 いっちょ、あがり! 

 これで四桁のいいね!、三桁のフォロワー、登録者数を増やす。
 けれど満足かと言われれば、まだまだ足りない。
 澪は教師宅の「みらい中央通り」側の一室をあてがわれている。一日の大半をここで過ごす。親はウザい。学校には行くと嘘をつく。また八時には帰宅し家族でちゃんと晩御飯も食べる。親には飲食店でバイトをしているとも話してある。
 門限の八時までに帰宅すれば不審な顔もされない。新品の洋服やバッグなどはバイトの対価だと思っている。疑われる高級品はすべて(あの部屋)に置いてある。
 毎日、テレビゲームとSNSにのめり込む。散歩がてらに海沿いの高層ビル最上階にある、料金高めのネカフェに行く。好きなだけコミックマンガ、映画を観る。
 自分の部屋の中は散らかし放題。若い女子の部屋はなもんだ。ただ撮影に使用する一画だけは別。聖地に仕立てる。ここには教師に買ってもらった照明機材や撮影用に特化された最新機種のスマホも固定されている。ここで普段の澪や別のミオを演じる。
 いまは何と云ってもTiKToKとYouTube。ここでは素の自分。橋本環奈似の澪でOK!身バレしても平気。@澪〇で710Kのフォロワー、2.8Mのいいね! を持つ。特段に評判がよければ芸能事務所だってスカウトに来る。
 インスタの写真も同じ@澪〇。リールへもTiKToKとYouTubeと同じ内容を投稿する。
 けれどだけど、何より一番スッキリするのがTwitterの#裏アカ女子。ここでは別のミオが暗躍する。惜しみなく裸を出す。オトコが好きそうな処を際立たせる。そして求めに応じて(時限オナニー)もする。フォロワー数は4万~。顔はギリスタやアプリでちょっと改変する。絶対に身バレだけはゴメン。でも、スッキリする。スッキリ、キリギリス。(笑)
 さてさて、本日のツイート。

  ワガママだしゴミだしグズだからしにたい
 バイト学校行きたい学校バイト行きたい最近まじでこれ 
 テストあかてんばかりだしバイトも入れてないから最近クズ極めてる

 教師との関係はどうなの? 肉体関係はない。澪をまるで置物、そうだな、観葉植物のように見ている。でもお水の替わりはオンナの蜜。澪はまるで挑発するかのようにそそる。
 ソファーに脚を組む教師の上に両脚を拡げて坐り込む。ふくよかな乳房が顔にあたるように。そして下へ。ズボンを下ろして果てるまで舐めてあげる。全身を痙攣させて教師は果てる。
 ふふ。
 教師はもてる。多数の奥様(子供を塾に通わている)たちがちょっかいを出す。お花のプレからお弁当。(弁当はおおかた澪が食べる。美味しかったり不味かったり) 露出の多い服。香水の香り。一体何を望んでいるのやら?
 自室から覗いて聞き耳をたてこそっと笑う。
 時に自分の母親を連想する。彼女もこうだったの?
 
 さて、本日のツイート。

 まて舐めてあげる私のことだけ見てくれればいいのに
 こころ狭いからすぐ嫉妬しちゃう 
やばすき噛みたい噛みたい跡をつけたい噛み跡をつけたい思いっ切り噛みたい
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