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文字数 7,721文字
白木のアパートには、入れ替わり立ち代り、授業をさぼってタバコをふかしにくる連中が増えてきた。
その中には、同級のアイや、一学年下のミチコなどもアイと連れ立ってくるようになった。
女の子たちも何をするでもなく、ただおれたちと一緒にハイライトを怠惰に吸っていた。
ミチコは、可愛らしい外見だけではとてもタバコを吸うようには見えなかった。
この夏休み中に、童貞を捨てたとおれにささやいたテツヤも、アイやミチコと白木のアパートに来ては、ただ黙ってハイライトを吹かしていた。
テツヤたちは、隣町の被差別部落から通っていた。
そのことを、おれにわざわざ耳打ちした、アホがいた。
当時のおれは、被差別部落の意味さえ知らなかった。
その後、その意味を高校の社会科で習ったが、それがどうしたっていう感じだった。
そのことで、テツヤたちに偏見や差別心を持つことは全くなかった。奴らに罪はない。奴らがおれは好きだった。
テツヤは授業中、いつも太宰治を読んでいた。
テツヤが童貞を捨てた相手がミチコであることを、白木のアパートに授業をさぼってハイライトを吹かしている時に聞いた。
その話しによれば、テツヤはミチコの部屋に夜這いして、そこで事を成したとのこと。
しかし、おれにはこの話しはどうやらテツヤの、文学好きがこうじた作り話に思えてしかたなかった。
おれは、目の前の可愛らしいミチコが、テツヤになかば強姦された場面を想像しては、「クソ、コンチクショウ」と内心穏やかではいられなかった。
剣道部時代にはややぽっちゃりした体型で、アイたちと同じ中学出身のユミが、二年になっておれと同じ頃に剣道部を辞めた。
その後、男に狂ったと噂になった。
「ユミが、チンピラとつきおうて、覚醒剤打たれよう話しは本当か?」
ユミと朋輩のアイに聞いてみた。
「ユミもバカよね、付き合う相手が悪かったがよ」
アイは、おれの言ったことに否定をしなかった。
おれは、剣道部の夏休みの合宿のことを思い出した。
一年の男子は六人いたが、みんな練習の厳しさから夏までに辞めてしまった。
男は岡本とおれだけになっており、嫌々ながら合宿に参加した。
サルも剣道部だったが、サトミと付き合い始め、早々に辞めていた。
この合宿は実質引退した三年が、最後に後輩を徹底的にしごくことが慣習になっており、おれたちは気が重たかった。
三年は県の大会で団体優勝もしており、強かった。
特にキャップテンだった吉村は、化け物のように強い。
個人で二年連続、優勝していた。
厳しい練習についていけずに、二年も全員辞め、新しく入った一年も夏までに岡本とおれ以外は辞めてしまった。
おれはこの合宿後、三日ほど寝込んだ。
声もつぶれてでなくなっていた。
かかり稽古といって、台になる相手に休みなくかかっていく稽古が、死ぬほどきつい。
息がすぐに上がる。
攻撃をやめて止めてしまうと、台になっている先輩に突き飛ばされてしまう。
おれは朦朧とする意識の中で、フラフラになりながらかかっていったが、最後に気を失い、倒れた。
そのたびに、バケツの水をかけられた。
まるで軍隊のようだった。
中学の時の、野球部の練習が、遊びのように思えたものだ。
一年の女はユミを含めてまだ六人ほどいた。
覗こうとしたわけではないが、どういうわけか、女子の更衣室に当てていた体育館のステージの右側のドアが開いていた。
おれと岡本が朝の食事から帰ってきた時、着替え中のユミの、白いブラジャー姿が丸見えだった。
おれたちは顔を見合わせほくそえんだ。
こういう、ちょっとしたことに、地獄の合宿にきたかいがあったと喜ぶのである。
合宿では信じがたいことに体育館のステージの上で、男女が一緒になって寝た。
岡本は二年でキャプテンの篠山の横に寝た。
横に寝たというよりたまたまそこが男女の境界で、キャプテンの篠山が女子の盾になるために岡本の横に寝ただけのこと。
篠山は三年のキャプテンだった吉村の彼女で、吉村たちが退いた後、二年の男子がいないため、女子でキャプテンになった。
篠山の実家は市内で大きなスーパーや、ホテルを経営しており、かなり裕福だった。
可愛い顔に似合わずかなり気が強く、おれが部を辞める時も、教室までやって来て、すったもんだあった。
「三木、オレ夜中に手がしらんまに、篠山さんのオッパイのところにのっちょってよ、せっかくやけん、きづかれんようにそのまま手をおいちょったぜよ。オラ、今度の合宿はいやでいやでたまらんかって、途中でよっぽどいのうかとおもうたけんど、いや、来てよかったかもしれん」
岡本は、篠山のオッパイに触れたことが余程うれしかったらしく、昨日までとは打って変って嬉々とした顔で言った。
吉村にばれたら、岡本は半殺しにされるだろう。
話しがそれたが、ユミといえばこの時の合宿でみたブラジャー姿、Dカップはあるとおもわれたふくよかな胸のことをすぐ思い出すのである。
その健康的でポッチャリしたどちらかと言えば、あまり目立たない感じのユミであったが、部活を辞めてから別人のようになってしまった。
眉はそり、スカートの丈は突然サトミやアキと同じくらいに長くなり、いきなりツッパリに変身したのである。
その変貌振りが急激だったことから、何かあるのではないかとうわさはしていた。
案の定、チンピラにひっかかって、覚醒剤を打たれ、中毒になっているとのうわさが校内に広まったのである。
頬もこけ、すっかり変貌したユミが、暇をもてあますように、白木のアパートにアイとやってきて、授業をさぼりながら、ハイライトを吸う仲間に加わった。
おれが午後の授業をさぼって、白木のアパートに行くと、そこにユミがいた。
ユミも授業をさぼって、タバコを吸いにきたとのことだ。
剣道部時代、ユミとは口をきいたことがなかった。
剣道部時代のユミは、大人びた感じはあったが、大人しいイメージしかない。
ユミと、タバコを吹かしながら、
「何か面白いことあるか?」
とか、
「どうぜ?」
とか、
「学校、かったるいね」
とか、どうでもいいような話を振るが、
「別に」
とか、
「何が?」
とか、
「そうね」
とか言うだけで、話が終わる。
かったるそうに虚ろな目をして、部屋にいる間、ただ黙々とハイライトを吸い続ける。
自分から、何かを話すことは皆無に等しく、白木のアパートにきても、人の話を聞いているのか、いないのかわからないような感じで、タバコを吸っている。
ユミの場合は、みんなとバカ話をするために、ここにくるのでない。
アイに誘われて、暇だから、ここにきて、ただボーっと過ごしている、そんな風に見える。
みんなもそれがわかっているから、ユミにあえて話を振ったりしない。
部屋にユミがいても、誰もユミの存在を気にしないようにして、過ごしていた。
いつの頃からか、ユミの視線に落ち着きがなくなり、何かに怯えているような表情をするようになった。
態度に出すわけではないが、瞳の奥に怯えた光がちらちらと見え隠れする。
何かが彼女には見えていて不安にさせている、そんな感じだった。
それが段々ひどくなり、いつも落ち着かないように、小刻みに体を震わせていた。
そんなユミの様子が不気味な予兆を暗示させ、おれたちにも緊張が伝わった。
そうこうしているうちに、ユミは学校に来なくなった。
うわさでは、精神病院に通院しているらしかった。
いつの間にか、白木のアパートには、いろんな奴が授業をさぼってくるようになった。
ふらりとアパートに行くと、とんでもない場面に遭遇することもある。
一度は、ドアを開けると、そこで、ミチコが野村とキスをしていた。
野村はテツヤたちと同じ中学出身で、空手をしているキザな奴で、おれは虫が好かなかった。
聞けば、ミチコはおれたちと同い年で、私立の名門女子校に入学していたのであるが、問題を起こし、退学となり、この高校に再入学したらしい。
ミチコと野村は、中学の時付き合っていた。
ミチコが遠く離れた街の学校に入学したため、別れたとのことだった。
「なんだ、そんなことだったのか、くだらねぇ。しかし、最近来出した野村のアホに、ここで好い思いをさせることはままならん」
と、おれは惚れかけていたミチコに、すでに恋仲の男が存在していたことで、少なからずショックを受けたのである。
それからしばらくして、ミチコが学校を辞めた。
妊娠したらしい。
親が堕胎手術をするようすすめたが、ミチコは産むと言って聞かなかった。
相手が野村であることを、誰もが疑わなかった。
しかしアイに聞くと、それは違うときっぱり否定した。
その時おれは、
「えっ、まさか、テツヤの子かぁ?」
と叫んでしまった。
「まさかぁ」
と言って、アイは笑った。
おれは何故かホッとした。
アイにテツヤの童貞喪失話をすると、
「まさかぁ」
と、またアイが笑った。
どうやらやっぱり、テツヤの話はうそのようだ。
結局ミチコの相手は誰か分からないままだった。
ミチコは私生児として子どもを育てるらしい。
学校を辞めたミチコが、N市内のスナックで働き始めたということを、その後、アイから知らされた。
白木のアパートで、アイと二人で、タバコを吹かしながら、どうでもいいような話をしていた。
血液型の話になり、それで性格が大体わかると、アイが言う。
女子はこういう話が、好きだ。
おれがAB型だというと、そんな感じ、と言う。
どんな感じがAB型なのかって聞くと、
「ちょっと静かで謎っぽい雰囲気とか、芸術家っぽい感じがするところとか、場の空気を読みながら、人に合わせたりできるところとかかな」
と言う。
アイに言わせると、AB型は変人が多く、二重人格で、芸術家タイプが多いらしい。
おれは自分のことを芸術家タイプだなんて、まったく思わないし、多少二重人格っぽいところはあるかもしれないけれど、少なくとも変人ではないと思う。
じゃあ谷本はどう、と聞くと、
「谷本君は、Bっぽいよね。人の意見に振り回されずに、自分が決めたように行動するタイプね、だから自己中なところがあると思うよ」
と言う。
眠について聞くと、
「眠君は、何だか、ちょっとわかりにくいタイプだけど、そうねぇ、どっちかっていうと、Oっぽいかなぁ。のさな感じだしね」
アイは眠のことが、いまいち、よくわからないと言う。
確かに眠は、茫洋としてつかみどころのない男だ。
「白木君は、絶対Aだと思う。几帳面だし、真面目だしね」
と言う。
几帳面で真面目だったらみんなA型だと決めるアイの血液判断も、妙にあやしいもんだ。
「ワタシは何型だと思う?」
って聞かれ、
「そうやねぇ、Aっぽくもないし、ABっていう感じでもないし、おまえは多分Cだなぁ」
何て冗談を言っていた。
おれはアイに、女子は普段どんなことを話しようかと聞いてみた。
「三木君のことは、結構話題になりようよ」
とアイが言う。
「うそこけぇ」
とおれは、目じりを下げて言う。
アイと二人きりの時は、女子のことを聞いたりもした。
特に誰が誰に好意を寄せているかという話などを、興味を持って聞いた。
さすがにアイには、誰が処女で誰が処女でないかなんていう話はできない。
「ところでよ、ユミやミチコは元気か?」
と二人の消息を聞いた。
ミチコには何回か会ったが、変わった様子なく、元気でやっていると、アイは言った。
しかしユミは自宅に引きこもっており、会いに行っても部屋から出てこないと言った。
ユミの症状は、相当深刻なようである。
ユミのことが心配だとアイは言った。
この時期、同級生の中で、一日何回こけるかと言うことが、話題になっていた。
こくことに関しては、何かと話題を提供してくれる谷本でも、
「五回が限度やにや」
と言った。
しかし、大熊が
「おれよ、昨日朝から一日で、十六回こいたぞ」
と豪語した。
みんなは、
「うそこけぇ」
と笑った。
「ばかいえ、十三回目までは、まだかまんがやけんど、それから後がきつかった。ピクピクっとなるけんど、もう、なんちゃでんしにや」
と、向きになって言う。
おれたちは大熊の話を、一応は信じることにした。
それ以来彼のことを、敬意と侮蔑の念を込めて、コキー大熊と命名した。
その、コキー大熊がある日おれにそっと耳打ちをした。
「おまえ、あいつら部落出身ゆうこと、知っちょってつきあいようがか?」
「そんなこと、全然関係ないぜよ」
事実おれは、テツヤやアイが好きだった。
「そうか、そんなら別にかまんがやけんど」
コキー大熊は、おれがここのところ頻繁に白木のアパートでテツヤやアイたちとたむろしていることを聞いて、おれのことを心配し、良かれと思って言ったのだろう。
大熊はいらん事をゆうてすまんかった、という顔をして、教室から出ていった。
久しぶりに、白木のアパートに集まって、谷本と眠とおれと白木で酒を飲んだ。
眠は、この前下級生たち三人と、寮の女風呂を覗いていて、足を滑らせて天井に穴をあけてしまい、覗きがばれた。
何とか内々にすませてもらったと、眠が苦笑した。
多分、県会議員のオヤジのはからいで、処分を受けずに済んだのろう。
「おれこの前、川村の授業を受けよったら、川村んおれの席の横通る時、ここ、セブンスターくさいゆうてよ、おれだけに放課後職員室にきなさいってゆうがやけん、やられたちや、あのクソブス」
と、眠がハイライトを吸いながら苦々しく言った。
川村とは化学を教えている三十半ばのハイミスで、お世辞にも綺麗と言えない気分屋の女だった。
「職員室に行ったら、今度は隣の面談室みたいなところに連れていかれち、タバコのことは許してあげるから、今度私と食事に行かないってゆわれたがよや、本当ぞっとしたけんね」
と、眠は今でも思い出したら寒気がするという風に、体をブルブル震わせた。
「そりゃ眠、蜘蛛の巣張った川村の処女膜、貫通させたら、おまえは化学がいっきに五になるぞ」
と谷本が言った。
「ばかゆうな、チンボが腐ってしまうろう」
眠が向きになって言う。
「ああいう女は、結構何の時、ええかもわからんぞ」
と、おれも面白がって眠をからかった。
「おい、今から、テニス部の部室に入ってみんか?」
缶ビールを五、六本程飲んだ頃、眠が言った。
「ええけんど、もう九時過ぎちょうど」
と、酔いがまわってやや眠くなっていたおれはだるそうに言った。
「知っちょうか? テニス部の部室には汚れたブルーマーがそのままあらや」
こう言う話しをしだすと、いたずら好きの眠の顔がランランと輝く。
「おれは、やめちょくよ」
白木は、こう言う時必ず臆して行きたがらない。根っから真面目にできている。
おれと眠と谷本は暗闇に目立たぬようにと、黒のジャージを着て出た。
おれたちのような下宿生は、夏になると高校のプールを銭湯代わりに使っていたので、深夜学校に忍び込むことには、慣れていたし抵抗もなかった。
さすがに、部室に入る時には誰かに見られはしないかと、ヒヤヒヤした。
眠は慣れているらしく、落ち着いている。
部室に入ってしばらくすると、目が慣れてきて中の様子がわかってきた。
谷本は、テニス部員が食べ残した菓子を食べている。
さすがに、ブルーマーは置いてなかったが、おれは、生まれて初めて入った女子の運動部の部室というものが、思ったほど清潔感もなく雑然とした印象で、色気もクソもないと思った。
この頃おれたちの中では、現国の宮田の産休の間、臨時で来ている松宮のことが、話題の中心だった。
まだ短大を出たばかりで、二十歳の松宮は顔も童顔で可愛らしく、おれたちの同級生くらいにしか見えない。
松宮はたちまち、おれたちのアイドルになった。
男好きする雰囲気の松宮が、いつもスケスケのブラウスやミニスカートで教壇に立つので、男子は授業に集中できずに、松宮の胸元や太ももにくぎ付けになる。
松宮の授業は、おれたちの股間を常に熱くしてくれる。
コキー大熊などは、
「昨日は、松宮の太もも思い出しながら三回こいたぞ」
と喜んで言った。
実際松宮は、学生時代短距離のスプリンターだったと言うだけあって、ほれぼれするような脚線美の持ち主だった。
男子は、このままずっと、宮田が復職しないことを願っていた。
おれたちは白木のアパートでハイライトを吹かしながら、「松宮とやりてぇ」と、叫びあった。
そんな度胸もないくせに、松宮をひっかけて最初にやった奴には、その勇気をたたえて、みんなが一万ずつ出し合おうと話し、勝手に盛り上がっていた。
松宮をひっかける作戦を、結構マジな顔をして、色々と練ったりした。
松宮が男子生徒を車に乗せて走行中、スピード違反で捕まって懲戒免職になった。
おれたちをさらに驚かしたことには、松宮はアキの彼氏である仲田とモーテルに行った帰りに捕まったらしい。
おれは、事件の結果に驚くよりも、どういう経過で、松宮が仲田とモーテルに行ったのか、そのことばかり考えていた。
仲田はおれが知っているだけでも、相当数の女子と過去に付き合っていた。
アキの前には、三年のバドミントン部の同級生を孕ませて、堕胎させている。
また、他校の女子とも何人とも付き合っていたはずだ。
女狂いの仲田が、男好きの松宮に接近し、モーテルにいくというシナリオはいかにもありふれている。
「チキショウ、なんで仲田みたいなヤロウばっかりがいい思いをするがやろうにや」
おれは嫉妬し、内心怒りの炎でメラメラしていた。
おれはミチコや松宮のことを忘れようと、谷本と眠を誘い、隣の市までバスで、パチンコをしに行った。
さすがに地元のパチンコ屋には、先生に会いそうで入れない。
いつも行くつぶれかけの小さなパチンコ屋で、手打ちの台で遊んでいた。
おれたちのような貧乏学生がパチンコして遊ぶには、手打ちの台の方が良い。
電動の台だと、打ち方のスピードの調整が出来ないため、負けるときはあっさり負けて、遊ぶことができない。
何時ものように、ハイライトを吹かしながら打っていると、背後から太ったおばさんが声をかけてきた。
「きみ、高校生じゃない?」
と太ったおばさんが言う。
私服の婦人警官だと、ピンときたので、
「ちがうけんど」
と、わざと平静を装い、横柄な口の利き方をして、ごまかした。
「あら、そう、ごめんね。てっきり高校生に見えたけん……」
デブの婦人警官は、疑い深そうな顔をしながら、パチンコ屋を出て行った。
おれは何か悪い胸騒ぎがしたので、谷本と眠に声をかけ、パチンコ屋をすぐに出た。
案の定、同じ日におれの友達が、同じ市内の別のパチンコ屋で補導されていた。
どうやらその日、高校生がパチンコをしているという情報を警察がつかんで、一斉にパチンコ屋の取り締まりをしたらしい。
おれたちもそのまま続けていたら、補導されていたかもしれない。おれは、そういうところの鼻が、昔から妙に利くのである。
その中には、同級のアイや、一学年下のミチコなどもアイと連れ立ってくるようになった。
女の子たちも何をするでもなく、ただおれたちと一緒にハイライトを怠惰に吸っていた。
ミチコは、可愛らしい外見だけではとてもタバコを吸うようには見えなかった。
この夏休み中に、童貞を捨てたとおれにささやいたテツヤも、アイやミチコと白木のアパートに来ては、ただ黙ってハイライトを吹かしていた。
テツヤたちは、隣町の被差別部落から通っていた。
そのことを、おれにわざわざ耳打ちした、アホがいた。
当時のおれは、被差別部落の意味さえ知らなかった。
その後、その意味を高校の社会科で習ったが、それがどうしたっていう感じだった。
そのことで、テツヤたちに偏見や差別心を持つことは全くなかった。奴らに罪はない。奴らがおれは好きだった。
テツヤは授業中、いつも太宰治を読んでいた。
テツヤが童貞を捨てた相手がミチコであることを、白木のアパートに授業をさぼってハイライトを吹かしている時に聞いた。
その話しによれば、テツヤはミチコの部屋に夜這いして、そこで事を成したとのこと。
しかし、おれにはこの話しはどうやらテツヤの、文学好きがこうじた作り話に思えてしかたなかった。
おれは、目の前の可愛らしいミチコが、テツヤになかば強姦された場面を想像しては、「クソ、コンチクショウ」と内心穏やかではいられなかった。
剣道部時代にはややぽっちゃりした体型で、アイたちと同じ中学出身のユミが、二年になっておれと同じ頃に剣道部を辞めた。
その後、男に狂ったと噂になった。
「ユミが、チンピラとつきおうて、覚醒剤打たれよう話しは本当か?」
ユミと朋輩のアイに聞いてみた。
「ユミもバカよね、付き合う相手が悪かったがよ」
アイは、おれの言ったことに否定をしなかった。
おれは、剣道部の夏休みの合宿のことを思い出した。
一年の男子は六人いたが、みんな練習の厳しさから夏までに辞めてしまった。
男は岡本とおれだけになっており、嫌々ながら合宿に参加した。
サルも剣道部だったが、サトミと付き合い始め、早々に辞めていた。
この合宿は実質引退した三年が、最後に後輩を徹底的にしごくことが慣習になっており、おれたちは気が重たかった。
三年は県の大会で団体優勝もしており、強かった。
特にキャップテンだった吉村は、化け物のように強い。
個人で二年連続、優勝していた。
厳しい練習についていけずに、二年も全員辞め、新しく入った一年も夏までに岡本とおれ以外は辞めてしまった。
おれはこの合宿後、三日ほど寝込んだ。
声もつぶれてでなくなっていた。
かかり稽古といって、台になる相手に休みなくかかっていく稽古が、死ぬほどきつい。
息がすぐに上がる。
攻撃をやめて止めてしまうと、台になっている先輩に突き飛ばされてしまう。
おれは朦朧とする意識の中で、フラフラになりながらかかっていったが、最後に気を失い、倒れた。
そのたびに、バケツの水をかけられた。
まるで軍隊のようだった。
中学の時の、野球部の練習が、遊びのように思えたものだ。
一年の女はユミを含めてまだ六人ほどいた。
覗こうとしたわけではないが、どういうわけか、女子の更衣室に当てていた体育館のステージの右側のドアが開いていた。
おれと岡本が朝の食事から帰ってきた時、着替え中のユミの、白いブラジャー姿が丸見えだった。
おれたちは顔を見合わせほくそえんだ。
こういう、ちょっとしたことに、地獄の合宿にきたかいがあったと喜ぶのである。
合宿では信じがたいことに体育館のステージの上で、男女が一緒になって寝た。
岡本は二年でキャプテンの篠山の横に寝た。
横に寝たというよりたまたまそこが男女の境界で、キャプテンの篠山が女子の盾になるために岡本の横に寝ただけのこと。
篠山は三年のキャプテンだった吉村の彼女で、吉村たちが退いた後、二年の男子がいないため、女子でキャプテンになった。
篠山の実家は市内で大きなスーパーや、ホテルを経営しており、かなり裕福だった。
可愛い顔に似合わずかなり気が強く、おれが部を辞める時も、教室までやって来て、すったもんだあった。
「三木、オレ夜中に手がしらんまに、篠山さんのオッパイのところにのっちょってよ、せっかくやけん、きづかれんようにそのまま手をおいちょったぜよ。オラ、今度の合宿はいやでいやでたまらんかって、途中でよっぽどいのうかとおもうたけんど、いや、来てよかったかもしれん」
岡本は、篠山のオッパイに触れたことが余程うれしかったらしく、昨日までとは打って変って嬉々とした顔で言った。
吉村にばれたら、岡本は半殺しにされるだろう。
話しがそれたが、ユミといえばこの時の合宿でみたブラジャー姿、Dカップはあるとおもわれたふくよかな胸のことをすぐ思い出すのである。
その健康的でポッチャリしたどちらかと言えば、あまり目立たない感じのユミであったが、部活を辞めてから別人のようになってしまった。
眉はそり、スカートの丈は突然サトミやアキと同じくらいに長くなり、いきなりツッパリに変身したのである。
その変貌振りが急激だったことから、何かあるのではないかとうわさはしていた。
案の定、チンピラにひっかかって、覚醒剤を打たれ、中毒になっているとのうわさが校内に広まったのである。
頬もこけ、すっかり変貌したユミが、暇をもてあますように、白木のアパートにアイとやってきて、授業をさぼりながら、ハイライトを吸う仲間に加わった。
おれが午後の授業をさぼって、白木のアパートに行くと、そこにユミがいた。
ユミも授業をさぼって、タバコを吸いにきたとのことだ。
剣道部時代、ユミとは口をきいたことがなかった。
剣道部時代のユミは、大人びた感じはあったが、大人しいイメージしかない。
ユミと、タバコを吹かしながら、
「何か面白いことあるか?」
とか、
「どうぜ?」
とか、
「学校、かったるいね」
とか、どうでもいいような話を振るが、
「別に」
とか、
「何が?」
とか、
「そうね」
とか言うだけで、話が終わる。
かったるそうに虚ろな目をして、部屋にいる間、ただ黙々とハイライトを吸い続ける。
自分から、何かを話すことは皆無に等しく、白木のアパートにきても、人の話を聞いているのか、いないのかわからないような感じで、タバコを吸っている。
ユミの場合は、みんなとバカ話をするために、ここにくるのでない。
アイに誘われて、暇だから、ここにきて、ただボーっと過ごしている、そんな風に見える。
みんなもそれがわかっているから、ユミにあえて話を振ったりしない。
部屋にユミがいても、誰もユミの存在を気にしないようにして、過ごしていた。
いつの頃からか、ユミの視線に落ち着きがなくなり、何かに怯えているような表情をするようになった。
態度に出すわけではないが、瞳の奥に怯えた光がちらちらと見え隠れする。
何かが彼女には見えていて不安にさせている、そんな感じだった。
それが段々ひどくなり、いつも落ち着かないように、小刻みに体を震わせていた。
そんなユミの様子が不気味な予兆を暗示させ、おれたちにも緊張が伝わった。
そうこうしているうちに、ユミは学校に来なくなった。
うわさでは、精神病院に通院しているらしかった。
いつの間にか、白木のアパートには、いろんな奴が授業をさぼってくるようになった。
ふらりとアパートに行くと、とんでもない場面に遭遇することもある。
一度は、ドアを開けると、そこで、ミチコが野村とキスをしていた。
野村はテツヤたちと同じ中学出身で、空手をしているキザな奴で、おれは虫が好かなかった。
聞けば、ミチコはおれたちと同い年で、私立の名門女子校に入学していたのであるが、問題を起こし、退学となり、この高校に再入学したらしい。
ミチコと野村は、中学の時付き合っていた。
ミチコが遠く離れた街の学校に入学したため、別れたとのことだった。
「なんだ、そんなことだったのか、くだらねぇ。しかし、最近来出した野村のアホに、ここで好い思いをさせることはままならん」
と、おれは惚れかけていたミチコに、すでに恋仲の男が存在していたことで、少なからずショックを受けたのである。
それからしばらくして、ミチコが学校を辞めた。
妊娠したらしい。
親が堕胎手術をするようすすめたが、ミチコは産むと言って聞かなかった。
相手が野村であることを、誰もが疑わなかった。
しかしアイに聞くと、それは違うときっぱり否定した。
その時おれは、
「えっ、まさか、テツヤの子かぁ?」
と叫んでしまった。
「まさかぁ」
と言って、アイは笑った。
おれは何故かホッとした。
アイにテツヤの童貞喪失話をすると、
「まさかぁ」
と、またアイが笑った。
どうやらやっぱり、テツヤの話はうそのようだ。
結局ミチコの相手は誰か分からないままだった。
ミチコは私生児として子どもを育てるらしい。
学校を辞めたミチコが、N市内のスナックで働き始めたということを、その後、アイから知らされた。
白木のアパートで、アイと二人で、タバコを吹かしながら、どうでもいいような話をしていた。
血液型の話になり、それで性格が大体わかると、アイが言う。
女子はこういう話が、好きだ。
おれがAB型だというと、そんな感じ、と言う。
どんな感じがAB型なのかって聞くと、
「ちょっと静かで謎っぽい雰囲気とか、芸術家っぽい感じがするところとか、場の空気を読みながら、人に合わせたりできるところとかかな」
と言う。
アイに言わせると、AB型は変人が多く、二重人格で、芸術家タイプが多いらしい。
おれは自分のことを芸術家タイプだなんて、まったく思わないし、多少二重人格っぽいところはあるかもしれないけれど、少なくとも変人ではないと思う。
じゃあ谷本はどう、と聞くと、
「谷本君は、Bっぽいよね。人の意見に振り回されずに、自分が決めたように行動するタイプね、だから自己中なところがあると思うよ」
と言う。
眠について聞くと、
「眠君は、何だか、ちょっとわかりにくいタイプだけど、そうねぇ、どっちかっていうと、Oっぽいかなぁ。のさな感じだしね」
アイは眠のことが、いまいち、よくわからないと言う。
確かに眠は、茫洋としてつかみどころのない男だ。
「白木君は、絶対Aだと思う。几帳面だし、真面目だしね」
と言う。
几帳面で真面目だったらみんなA型だと決めるアイの血液判断も、妙にあやしいもんだ。
「ワタシは何型だと思う?」
って聞かれ、
「そうやねぇ、Aっぽくもないし、ABっていう感じでもないし、おまえは多分Cだなぁ」
何て冗談を言っていた。
おれはアイに、女子は普段どんなことを話しようかと聞いてみた。
「三木君のことは、結構話題になりようよ」
とアイが言う。
「うそこけぇ」
とおれは、目じりを下げて言う。
アイと二人きりの時は、女子のことを聞いたりもした。
特に誰が誰に好意を寄せているかという話などを、興味を持って聞いた。
さすがにアイには、誰が処女で誰が処女でないかなんていう話はできない。
「ところでよ、ユミやミチコは元気か?」
と二人の消息を聞いた。
ミチコには何回か会ったが、変わった様子なく、元気でやっていると、アイは言った。
しかしユミは自宅に引きこもっており、会いに行っても部屋から出てこないと言った。
ユミの症状は、相当深刻なようである。
ユミのことが心配だとアイは言った。
この時期、同級生の中で、一日何回こけるかと言うことが、話題になっていた。
こくことに関しては、何かと話題を提供してくれる谷本でも、
「五回が限度やにや」
と言った。
しかし、大熊が
「おれよ、昨日朝から一日で、十六回こいたぞ」
と豪語した。
みんなは、
「うそこけぇ」
と笑った。
「ばかいえ、十三回目までは、まだかまんがやけんど、それから後がきつかった。ピクピクっとなるけんど、もう、なんちゃでんしにや」
と、向きになって言う。
おれたちは大熊の話を、一応は信じることにした。
それ以来彼のことを、敬意と侮蔑の念を込めて、コキー大熊と命名した。
その、コキー大熊がある日おれにそっと耳打ちをした。
「おまえ、あいつら部落出身ゆうこと、知っちょってつきあいようがか?」
「そんなこと、全然関係ないぜよ」
事実おれは、テツヤやアイが好きだった。
「そうか、そんなら別にかまんがやけんど」
コキー大熊は、おれがここのところ頻繁に白木のアパートでテツヤやアイたちとたむろしていることを聞いて、おれのことを心配し、良かれと思って言ったのだろう。
大熊はいらん事をゆうてすまんかった、という顔をして、教室から出ていった。
久しぶりに、白木のアパートに集まって、谷本と眠とおれと白木で酒を飲んだ。
眠は、この前下級生たち三人と、寮の女風呂を覗いていて、足を滑らせて天井に穴をあけてしまい、覗きがばれた。
何とか内々にすませてもらったと、眠が苦笑した。
多分、県会議員のオヤジのはからいで、処分を受けずに済んだのろう。
「おれこの前、川村の授業を受けよったら、川村んおれの席の横通る時、ここ、セブンスターくさいゆうてよ、おれだけに放課後職員室にきなさいってゆうがやけん、やられたちや、あのクソブス」
と、眠がハイライトを吸いながら苦々しく言った。
川村とは化学を教えている三十半ばのハイミスで、お世辞にも綺麗と言えない気分屋の女だった。
「職員室に行ったら、今度は隣の面談室みたいなところに連れていかれち、タバコのことは許してあげるから、今度私と食事に行かないってゆわれたがよや、本当ぞっとしたけんね」
と、眠は今でも思い出したら寒気がするという風に、体をブルブル震わせた。
「そりゃ眠、蜘蛛の巣張った川村の処女膜、貫通させたら、おまえは化学がいっきに五になるぞ」
と谷本が言った。
「ばかゆうな、チンボが腐ってしまうろう」
眠が向きになって言う。
「ああいう女は、結構何の時、ええかもわからんぞ」
と、おれも面白がって眠をからかった。
「おい、今から、テニス部の部室に入ってみんか?」
缶ビールを五、六本程飲んだ頃、眠が言った。
「ええけんど、もう九時過ぎちょうど」
と、酔いがまわってやや眠くなっていたおれはだるそうに言った。
「知っちょうか? テニス部の部室には汚れたブルーマーがそのままあらや」
こう言う話しをしだすと、いたずら好きの眠の顔がランランと輝く。
「おれは、やめちょくよ」
白木は、こう言う時必ず臆して行きたがらない。根っから真面目にできている。
おれと眠と谷本は暗闇に目立たぬようにと、黒のジャージを着て出た。
おれたちのような下宿生は、夏になると高校のプールを銭湯代わりに使っていたので、深夜学校に忍び込むことには、慣れていたし抵抗もなかった。
さすがに、部室に入る時には誰かに見られはしないかと、ヒヤヒヤした。
眠は慣れているらしく、落ち着いている。
部室に入ってしばらくすると、目が慣れてきて中の様子がわかってきた。
谷本は、テニス部員が食べ残した菓子を食べている。
さすがに、ブルーマーは置いてなかったが、おれは、生まれて初めて入った女子の運動部の部室というものが、思ったほど清潔感もなく雑然とした印象で、色気もクソもないと思った。
この頃おれたちの中では、現国の宮田の産休の間、臨時で来ている松宮のことが、話題の中心だった。
まだ短大を出たばかりで、二十歳の松宮は顔も童顔で可愛らしく、おれたちの同級生くらいにしか見えない。
松宮はたちまち、おれたちのアイドルになった。
男好きする雰囲気の松宮が、いつもスケスケのブラウスやミニスカートで教壇に立つので、男子は授業に集中できずに、松宮の胸元や太ももにくぎ付けになる。
松宮の授業は、おれたちの股間を常に熱くしてくれる。
コキー大熊などは、
「昨日は、松宮の太もも思い出しながら三回こいたぞ」
と喜んで言った。
実際松宮は、学生時代短距離のスプリンターだったと言うだけあって、ほれぼれするような脚線美の持ち主だった。
男子は、このままずっと、宮田が復職しないことを願っていた。
おれたちは白木のアパートでハイライトを吹かしながら、「松宮とやりてぇ」と、叫びあった。
そんな度胸もないくせに、松宮をひっかけて最初にやった奴には、その勇気をたたえて、みんなが一万ずつ出し合おうと話し、勝手に盛り上がっていた。
松宮をひっかける作戦を、結構マジな顔をして、色々と練ったりした。
松宮が男子生徒を車に乗せて走行中、スピード違反で捕まって懲戒免職になった。
おれたちをさらに驚かしたことには、松宮はアキの彼氏である仲田とモーテルに行った帰りに捕まったらしい。
おれは、事件の結果に驚くよりも、どういう経過で、松宮が仲田とモーテルに行ったのか、そのことばかり考えていた。
仲田はおれが知っているだけでも、相当数の女子と過去に付き合っていた。
アキの前には、三年のバドミントン部の同級生を孕ませて、堕胎させている。
また、他校の女子とも何人とも付き合っていたはずだ。
女狂いの仲田が、男好きの松宮に接近し、モーテルにいくというシナリオはいかにもありふれている。
「チキショウ、なんで仲田みたいなヤロウばっかりがいい思いをするがやろうにや」
おれは嫉妬し、内心怒りの炎でメラメラしていた。
おれはミチコや松宮のことを忘れようと、谷本と眠を誘い、隣の市までバスで、パチンコをしに行った。
さすがに地元のパチンコ屋には、先生に会いそうで入れない。
いつも行くつぶれかけの小さなパチンコ屋で、手打ちの台で遊んでいた。
おれたちのような貧乏学生がパチンコして遊ぶには、手打ちの台の方が良い。
電動の台だと、打ち方のスピードの調整が出来ないため、負けるときはあっさり負けて、遊ぶことができない。
何時ものように、ハイライトを吹かしながら打っていると、背後から太ったおばさんが声をかけてきた。
「きみ、高校生じゃない?」
と太ったおばさんが言う。
私服の婦人警官だと、ピンときたので、
「ちがうけんど」
と、わざと平静を装い、横柄な口の利き方をして、ごまかした。
「あら、そう、ごめんね。てっきり高校生に見えたけん……」
デブの婦人警官は、疑い深そうな顔をしながら、パチンコ屋を出て行った。
おれは何か悪い胸騒ぎがしたので、谷本と眠に声をかけ、パチンコ屋をすぐに出た。
案の定、同じ日におれの友達が、同じ市内の別のパチンコ屋で補導されていた。
どうやらその日、高校生がパチンコをしているという情報を警察がつかんで、一斉にパチンコ屋の取り締まりをしたらしい。
おれたちもそのまま続けていたら、補導されていたかもしれない。おれは、そういうところの鼻が、昔から妙に利くのである。
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