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文字数 2,412文字

 実家に帰省し、中学時代の同級生のヒロキと遊んでいる時、同じく中学時代の同級生で、地元の高校に通うシズエに偶然会った。
 シズエは地元の高校で不良になっていた。
 中学時代も突っ張ったところはあったが、どちらかというとよくしゃべりにぎやかで、明るいキャラの女子だった。
 久しぶりに会ったシズエは、目つきがきつくなっていた。
 茶髪のいかにも男好きする顔をした女子を従えて、暇を持て余すように、かったるそうに歩いていた。
 おれとシズエは、お互いの近況を少し話し合った後、明日おれの家で飲む約束をした。
「この子も連れて行っていい?」
 とシズエが聞くから、
「別に、かまんぞ」
 とおれは言った。
 おれはただのぐうたらだから、リーゼントして、ダボダボのズボンをはくいかにも突っ張りですという高校生ではないが、どういうわけか、この手の女子に好意を持たれる。
 不良の女子にもてるっていうのは、どういうことなんだろう?
 おれが性格的に積極的だったら、ずいぶん中・高校生時代に女の子と遊ぶことができただろうにと、後で思ったものだ。
 翌日シズエが茶髪の女子を連れて、おれの実家にやってきた。
 おれも一人では気まずいので、ヒロキを誘った。
 ヒロキはおれたちの住む田舎の町の隣の市にある高校に通っていた。
 真面目と不良の中間くらいで、もちろんタバコや酒は普通にやる。
 ヒロキはこういう時の誘いを、まず断らない。特に女子が絡む場合は。
 おれの部屋は、納屋の二階を子ども部屋に改造したもので、モグラの住み家のように(実際のモグラの住み家はどんなものか知らないが)天井が低い。
 隣には姉の部屋がある。姉は大阪の短大にいっており、現在は空き部屋になっていた。
 おれたちは、シズエたちが買ってきたビールとつまみ、おれが家にあった焼酎の一升瓶を持ってきて、酒盛りをした。
 シズエの連れてきた女子は、ケイといった。
 ケイは黙っていると、目つきが鋭く、少しきつい表情に見えるが、話しているとよく笑うし、可愛い顔をしていた。
 ケイは町内の隣の中学出身だった。
 中学時代はバレーボールをしていたらしい。背が低かったから、セッターだったとのこと。
 ケイは小柄で痩せていた。
 小さな顔に大きな目。その目が少し吊り上げっている。猫のように黒目が大きい。
 おれとヒロキはハイライトを吸い、シズエとケイはセブンスターを吸った。
 シズエもケイも、今付き合っている彼氏はいないと言った。
 おれもヒロキも彼女がいないと言うと、私たち付き合おうかと、かなり酔いが回ったところで、シズエが言った。
 おれも軽いノリで、おうええにゃ、と言った。
 おれはシズエが冗談で言ったものと思っていたが、シズエは満更そうではないようだった。
 シズエは中学時代、ヒロキに片思いをしていた。
 そのことは、同級生の間では有名だった。
 しかしヒロキは、中学時代一年先輩の卓球部の女子と付き合っていた。
 ヒロキから聞いたわけではないが、多分B以上の関係にはなっていないと思う。
 そんなわけで、シズエはずっと片思いのままだった。
 昨夜、あんなに速攻で飲みたいと言ったのは、当然ヒロキも一緒に来ると思ったからだろう。
 と言うことは、おれは出しに使われたことになる。
 まぁいいか。
 ヒロキも酔っていた。
 先輩との付き合いをシズエに聞かれると、ヒロキは、もう別れたと答えた。
 その瞬間、シズエの表情が緩んだ。
 不良でも女の子に変わりない。可愛いものである。
 中学時代は、少しぽっちゃりした体型だったシズエだが、今ではすっかり痩せ、髪はロングにし、大人っぽい雰囲気になっている。器量もそんなに悪くない。
 暇つぶしに付き合うには、この手の女子たちは、丁度いい。
 そんな風におれは飲みながら考えていた。
 シズエとヒロキが付き合えば、当然おれとケイが付き合うことになる。
 ケイさえよければ、まったく異論はない。
 おれたちは深夜まで、延々飲み続け、タバコを吸い続け、しゃべり続けた。
 その内、シズエがもう寝ようと言い出した。
 シズエとヒロキが姉の部屋に入って行く。まぁ、おれが使えと言ったんだけどね。
 その後二人が何をしたかなんて野暮なことは言わない。
 何となく想像はつくよね。若い男女が同じ部屋で、する事と言えば、多分一つしかない。
 酔っぱらった高校生の男女が、寝ながら哲学を語ったり、死後の世界のことを語ったりしたら、おかしいもんね。
 おれとケイは、もう少し飲み続けた。
 おれはかなり酔って酩酊しているが、下心があるため、絶対眠ってはいけないと、眠たくなると、階下に降りて風呂場で顔を洗った。
 ケイもかなり酔っているようだ。
 猫の目が、酔いで潤んでいる。
 段々とおれを見る目が、誘っているように感じる。
 隣の部屋では、どうやらはじめたらしく、何やらギシギシあやしい音がする。
 おれもその音に刺激され、目の前のケイに襲いかかった。
 もちろんケイも抵抗するはずがない。
 しかしおれは酔った頭でコンドームが無いことを、考えていた。
 まぁ、いいか。
 いざとなれば、外に出せばいい、と思っていると、その段になるとケイは自分の持ってきたバッグの中から、コンドームを出し、付けて、と促した。
 後から考えると、おれとヒロキはどうやらシズエとケイに遊ばれたらしい。
 遊ばれるのもいいじゃないかと、おれは思った。
 おれとケイとの関係は、この一夜だけだった。
 ケイには社会人の恋人がいたのだ。
 それよりおれを驚かせたのは、ケイと出身中学が一緒だった眠の話だ。
 眠によると、ケイは同級生の男の部屋で、一緒にいた男三人とその場で関係を持ったとのこと。
 おれが、それは輪姦っていう奴だろうって言うと、眠りはその中の一人から、ケイが誘ってきた事実を聞かされたと言った。
 たいした女だとおれは思った。
 ヒロキとシズエは半年ほど付き合ったらしいが、その後別れたようだ。


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