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文字数 1,044文字

 小説はいくら私小説だと言っても、フィクションの部分もあるし、デフォルメして盛って書く場合もある。
 だから、どの部分が真実で、どの部分が嘘だなんて、本当は書かないらしい。
 書いた後で、気が付いたけれど、まあ、処女作だから許してもらおう。
 それにしても、小説を書くって、クソみたいに地味で、暗い作業なんだよ。
 だから作家って、ネクラなイメージがあるのかなぁ、何て思ったよ。
 まぁ、そうでもないやつだっているだろうし、書くことが生きがい何ていう、おれからしたら、頭おかしいんじゃないのって思うような奴も、いるんだろうね。
 書いている最中は、思うようにかけなくてイライラするし、ストレスたまるし、頭は痛くなるし、タバコの本数は増えるし、おまけに、異常に肩がこるしね。
 体に良くないよね。
 やっぱり。
 部屋に一日こもって、小説書くなんて。
 酒でも飲みながら、リラックスして書こうとすれば、すぐに飲み過ぎて、眠たくなるし。
 実家に帰省中の一か月を、このくだらない小説を書くために費やしたなんて、今から考えると、ありえないことだ。
 最初はのぼせ上って、勢いだけで書き始めたが、それも長続きせずに、段々と飽きてくる。
 おれって元々飽き性だから。
 何やっても長く続かないのよ。
 だから、すぐに飽きるんだ。
 それでも最後まで仕上げようと頑張った。
 青春時代は、無益なことや、バカバカしいことを、したがるものだ。
 書き始めたことを、何度も後悔しながら、人生には無駄も大事と、自分に言い聞かせながら書いた。
 何のためにって?
 それはわからない。
 しかし時々、何かにとりつかれたように、書くことに没頭する瞬間があるんだよ。
 あれ、一体何なんだろうね。
 だからちょっと勘違いをしてしまうんだ。
 おれって、ちょっと才能あるんじゃないかって。
 笑わせるぜ。
 まったくよ。
 小学生レベルの作文のくせによ。
 書き終えた後、一度だけ読み返そうとした。
 最初の一ページを読んだだけで、あまりの下手さに、反吐が出そうになった。
 目から火が出るほど恥ずかしいとは、こういうことを言うのかと実感した。
 書いたものをすぐに、すべて破棄したくなった。
 が、まあ誰に読ませるわけでもないから、別に慌てて破棄しなくてもいいか、と気持ちを静めた。
 下手くそなりに、せっかく書いたんだしね。
 どっちみち、この稚拙な物語は、誰にも読まれないまま、いつか消えてなくなるんだろうから……。

 夏休みも後数日で、終わる。

 この物語も以上で、終わり。


(了)




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