第19話 ちっこくて、でっかい奴

文字数 2,130文字

「お前の性衝動は病気だと思うけどな。
俺は今んとこ、セックスより戦ってる方がスカッとするわ。」

「な〜に、スレてるう!」

「セックスって、子作りだろ……
うーん、あれ、一般の時の誘拐案件だったっけ……
救出した女が急に産気づいて、出産に居合わせてなあ……
あん時はマジひでえ目に遭ったわ。
人間、何でも徐々に知った方がいい。

人間があんなとこから出てくるって知らなかったし、首になんかヒモが巻き付いてよ、首つって出てきやがった。
生まれた赤ん坊の顔は真っ青だし、一緒にいたババアはもうダメだ言いやがるし、大人は諦めるの早すぎる。
人間、生まれた時からバクチみたいなもんだなあってよ。
ギャアと泣いて、ようやく一人前だ。」

ダーリンがげんなりした顔で、携帯食食べて水を飲む。

「はぁ?マジ信じらんない。で、子供助かったの?戦時中?」

「あ?ああ、入隊してしばらく経った頃だったな。
クククッ…ほんっとさ、状況最悪、すげえの。

面白……じゃねえ、ひでえもんだぜ。
子供泣く上に産後の女までいて、部隊の奴ら次々やられて子供殺そうとか言いやがるし、無能な大人ばかりでイヤになっちまう。
子供がギャアギャア泣くのは当たり前だ。
それでも助けてやる、心配するなというのが男だろ?出来るか出来ないか、わからなくてもよ。
俺にそう言う大人の姿見せてくれよ。あれだけ最新の武装して、なんでそう言えねえんだ?

結局よ、俺が子供引き受けて、敵ほとんど殺しちまった。
ははっ!
あーあ、ほんとイヤになる。マジであいつクソ野郎。
子供一人の命重すぎだろ。容赦ねえ大人がバカすぎる。

ああ、まったく……

あーーーー!!俺ってよぉっ!!人生経験ありすぎだろーーーー!!! 」

ダーリンが、背中見せて広がる荒野に大声で叫ぶ。
確かにねえ、いくら戦時でも色々経験しすぎだわ。

「その後さ〜、子供と会った?」

「会ったぜ、軍の幹部の奥さんだったからな。お礼に色々もらったぜ。
あのココアは最高だったな〜。うん、俺としても美味しい仕事だった。」

笑って空見て伸びをする。
変な奴。


「ヒヒヒ、変な奴〜」

ん?今の声どこから??

キョロキョロするけど、ダーリン以外誰もいない。気のせいかしら。

「でも、だいたいさ〜、あんたなんで15?その前?なんで子供で軍にいたわけ??
なんで郵便局で働いてんの?首になったの?」

ダーリン無言、話す気ないらしい。

ちぇっ!!ちぇっ!!ケチ!!

でもまあ、なんとなくこいつが大人より大人びてるの、よくわかった。

「あー、もう、やだ。15って!ダーリン打ち止めだわ。
ちょ、胸隠すの、なんもないじゃん。」

ため息ついて水を飲み干し、四つん這いで服を探す。
あたしが入ってた袋に、ブラとツナギが丸めて入れてあったのか、辺りに転がっているので拾ってきた。

「きったな〜い。」

ブラは真っ黒、グチャグチャできちゃなくて付ける気がしないので、とりあえずツナギ着る。

「あ〜もう最悪だわ、ガキだったなんてさ〜」

「ガキで悪かったな。大人ならガキの手ぇ煩わせんじゃねえよ。」

「うっさいわねえ、あんたガキのくせ、年寄りくっさ!」

立ち上がって、馬に積んでた水のパックを取り、ごくごく飲み干すと、やっと少し元気出た。

「そろそろ出るぞ、さっさと馬に乗れ。」

「きっつぅい、ねえねえ、前に乗せてよお〜。
落馬しちゃうわ、きっとあたし、落ちて死ぬのよ。ううっ、可哀想なあたし〜」

泣き真似したけど無視された。さっさと馬に乗ってプイッとあさって向いてる。
仕方ない、だいたいこいつ小さすぎ。
あたしの王子になれそうもないじゃん?

マジキツでマックスに寄りかかる。
乗れる気がしない。
つーか、乗れるの?これ〜
鞍持って、マックスに乗ろうとするけど、全然力が出ない。
グズグズしてると元ダーリンがため息ついて馬を寄せ、あたしの首根っこ掴み、ひょいと持ち上げて乗せた。

「え?え?え〜〜〜〜
あたしって痩せた?? めっちゃ腕力有りすぎぃ!」

「てめえぐらい軽いもんだ。行くぞ、落ちたら叫べ、死んだら置いていく。」

「ひっど、ダーリン、ひっど!ま、いいけどさ。
その腕力、しびれるからダーリンに昇格してあげるわ!」

ダーリンが、ハハッと笑う。
なんだか、笑顔が爽やかじゃん?
ちょっとキュンときた。

「女って変な生き物だな、ダーリンだの王子だの、勝手に人に名前付けやがって。
俺はサトミだ、バカ女。」

「ま、クソ女からバカ女に昇格したじゃない?グフフ、そう言えば、頼みあるって言ってたのに、約束守れなかったわね、今度泊まりに行ってあげる!」

「却下だ。俺の家には二度と近づくな。貴様のイビキには辟易した。
行くぞ。」


「 いびきいいいいい!!!! あたしがぁぁぁぁぁぁっっ???????!!!!!!!!」


「最悪だ、貴様は口呼吸止めろ。ぼけっと口開けてると魂抜けるぞ。」


ひいいいいいいいいぃぃぃぃ……はずかしいぃぃぃ〜〜〜〜

こっ…このあたしを赤面させるとは、やるじゃないダーリン!


「これはね!恋を語ってるのよ!!恋!!ぼけーーーっと口開けてんじゃ無いの!
乙女には乙女の都合があんのよ!

ちょ、ちょっと待ちなさーーーい!!」

ダーリン、ちっこいのにデカい奴。
こいつが大人になったら、カッコいいんだろうなあって……

「ダーリンの未来にチョー期待って感じ〜!」
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登場人物紹介

レイル・グラント

デリーの新入りアタッカー。ダークブラウンのセミロングの髪、目はブラウン。

ミスが多く、脳天気で頻繁に強盗に襲われる。

酒を飲むと羞恥心が消える。いや、飲まなくても羞恥心はないのかもしれない。

・サトミ・ブラッドリー

日系クォーター、15才。黒髪、ブラウンの瞳。短髪だがボサボサ。中肉低身長、禁句はちっこい、チビ。

使用武器、主に背の日本刀

・ジェイク

デリー本局のリーダー、古参アタッカー。戦中からアタッカーをやっている強者。面倒見のいい男。

レイルの面倒で胃に穴があきそうな感じ

・セシリー・メイル

17才。プラチナブロンド、碧眼、白人ではない。

リッターとは父親違いの兄妹、可愛い系美少女。人を見て選別し、ガッツリ甘える世渡り上手。

馬は青毛の大きい馬ナイト、銃は見た目で選んだスバス。

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