第5話 カタナ野郎がマジ外道!

文字数 2,727文字

と、いうわけで、そのままちっこいの待て。と言う指示。
無理に今日帰らなくていいから、ロンドと相談して決めろ。らしい。

仕方ないので、撃たれた手を救急セットで応急手当てして、痛み止め飲んでじっと待つ。
しかしぜんぜん来る気配がない。
なんか、おなか減ったので非常食食べて、マックスと水飲んでブラブラして待つことにした。
しばらくすると、乗合馬車が近くに止まる。
乗ってくかい?と声かけられたけど、大丈夫ですと見送った。

はあ〜ヒマ。
石に座ってまた非常食の残り食う。
まあ、不味いけど、食えないことはないわ。

「ねえ、マックス。荷物取り戻すとか無理じゃない?
置いてくとか、マジ信じられない。
普通さ〜、

“荷物はいい!お前さえ無事なら!”

とか言うのが王子系の台詞じゃない?
あいつさー、セシリーちゃんの王子なんだってさ。王子よ?!王子なのに、ねーーー」

いきなりドカッと、背中を蹴られた。

「きゃっ!ちょ、なに?」

「何が王子だ!このクソ野郎!!荷物盗られんじゃねえよ!
あーっ!マジか!このクソ、人働かせてメシ食ってやがる!!」

ドカッドカッ!と腹いせに、更に2回乙女の背中蹴られた。

「いった!痛いったら!ちょ、マジ失礼!野郎じゃないわよ!良く見てよ!」

ムカついて勢いよく立ち上がり、声の方振り返る。
あたしは、ゲエッと口が開いた。
ちっこいの、ボロいジーンズと白シャツだけど、ジーンズ膝下には返り血浴びて服に血しぶきとかホラー。

「クソ女、ロンドに帰るぞ。
くそー、あいつら荷物盾にして、無駄に抵抗しやがって、遅くなったなー。
なまじ殺すなっての、マジめんどくせえ。倍、手がかかる。
お前今日デリーに帰るんだろ?帰りは盗られるなよ、2度目は殺すぞ。」

やだー、ご機嫌最悪、口汚いのー
見ると、ちっこいのの馬には、盗られた荷物がちゃんとある。

「え?まさか、あんた取り戻したの?」

「当たり前だろーが、ロンドの荷物盗られてたまるかよ。
大事な手紙待ってる人がいるんだぜ?換金されたらもう戻らねえんだ、お前考えろよな!

クソ女、さっさとしろ。てめえ、ゴム弾なんかクソ甘い物使ってんじゃねえよ。
下手くそのクソ野郎なら最初から散弾使え、殺したくないなら馬狙うんだな。
可哀想とか、寝言ほざいたら首飛ばすぞ!」

あー、なんだろ、なんだかもの凄く機嫌が悪そう。やだわー
さっさと馬に乗り込む彼の後を,慌てて追う。

「ねえねえ、ちょっと、ちっこいの!待ってよ!」

「サトミだ!クソ女!!次ちっこい言ったら首飛ばすぞ!」

「あたしクソ女じゃないわよ!レイル!レイル・グラント!
え?女の子の名前じゃないだろって?いいのよ!勇ましく生きろって、パパが付けたんだから!」

「ふうん……」

ちらっと見て、馬に乗ってさっさと先を行く。

「ちょっと、まってえ〜、ねえ、死んだ人どうすんの?」

「連絡しただろーが。そのくらいした?!な!!」

「したわよー、いちいち怒鳴らないでよ。」

慌てて後を追いながら、手の痛みガマンしてあとを追った。


それにしても、後ろ姿見るとマジでちっこい。
馬までちっこくて、馬に乗って並ぶと、あたしはめっちゃ見下ろさなきゃならない。
それが気に障るのか、並ぶとサッと前に出る。

それにこいつ、銃が無い。背に長〜い棒とナイフが腰に10本くらい刺さってるだけ。
なんで?どうやって強盗やっつけてんの?

「ねえねえ、なんで銃持ってないの〜?下手くそだから?
どうやって強盗やっつけんの?」

返事待つ。

待つ。

……………

ない?!無視?!マジ?可愛い女の子と二人っきりで、何これ!
よ〜し

「ねえねえ、セシリーちゃんとキスした?エッチまでいった?
やっだー!エッチだって!セックスよ、セックス!ねえねえ」

……………

「まさか、どーてーーー???」

……………

無視
ガン無視

怒るかと思ったのに、ちっこいのは完全無視。
いーわよ、そう来るならしつっこく喋るだけよ〜
無視なんてさ、あたしここにいる限り喋るんだから。

「ねえねえ、ちっこいのいくつ?いくつって、砂糖じゃないわよ?年よ、年齢!
あたし、いくつと思う?やだ!未成年じゃ無いわよお!あんたもそうよね?」

……………

ちょ、何よ、ちょっとくらいさ、相手してもいいと思うのよ。

「あ〜〜撃たれた手が痛いわ。もうガマン出来ないくらい。
ほら、弾が貫通してんの!信じられる?もう手綱も握らんないの!
ほら!手当てしたのに血がにじんできたわ、ねえ、見てよほら!
血!血が出たの!すっごく痛いの!」

マジ痛いんだってば!

「ねえ、なんでカタナっての?長いナイフなんでしょ?それ。ねえってば!」

………………

「ねえねえ!なんでだまってんのーーーー???」

く、くっそーーーーー

はっ!まさか、こいつゲイ?!
そうよね、こんなプリティなあたしと一緒で、こんな無視ってあり得ない!

「ねえ、好きな女の子って、やっぱセシリーちゃんタイプ?
まさか、ゲイじゃ無いわよね?」

……………

反撃が無い。と、言うことはノーマルかな?
ガサガサポケット探って何するのかと思ったら、あめ玉何個も口に放り込んでガリガリ食べ始めた。

「ねえねえ、やっぱさ〜ふくよか系が好き?
ロンドのほら、なんだっけ?セシリーちゃんの下僕って人。
今のふっくらセシリーが好きなんだって!きゃはは!かっわい〜!
でも、セシリーどんど痩せてるでしょ?寂しそうなの、正直よねえ。」

………………

ロンドの話なら食いつくと思ったのに〜ハズレかぁ。

「あたしさ、彼募集中〜、あ、でもセシリーちゃんと王子取り合う事しないから!
やっぱさ〜、彼って背が高くてぇ、こうがっしり筋肉付いてるような〜、男は包容力じゃない?
まあ、だからちっこいのは射程範囲外って感じ?だから、あたしのこと諦めて!
うん、でもね、大丈夫よ、どうしてもって言うなら、略奪愛オケーみたいな?キャーーーー!」

くねくねしてたら、ぼそっと声がした。

「ベン、俺のガマンも限界突破だ。俺の為にお前が逃げろ。」

「 ヒシシシシ、あとでにんじんな 」

「え?誰と話してんの?」


「 行け! ビッグベン! 」


だああっと、いきなりちっこいのの馬が全速で駆け出した。

「  ああああっ!! 逃げた!  」

マックス追いつけなくて、どんどん引き離される。

「えええええええええ!なんでえええええ!!」

どんどんどんどん引き離される!
げえええ!マジですかーー!!

「ちょ!マジ女の子置いて逃げるとか信じらんない!
誰がクソ野郎よーー!あんたの方がクソ野郎じゃーーーん!!

待ってええええーーー!!」

手が痛くて握られないから、落馬怖くて諦める。
そうして早足で、強盗来ないこと祈って後を追いかけた。

マジ、ゲス野郎じゃん!ちっこいの!

「 なによーーー!このどーてー野郎ーーー!!ガッデーーーーーム! 」

むなしい叫びが荒野に響いた。
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登場人物紹介

レイル・グラント

デリーの新入りアタッカー。ダークブラウンのセミロングの髪、目はブラウン。

ミスが多く、脳天気で頻繁に強盗に襲われる。

酒を飲むと羞恥心が消える。いや、飲まなくても羞恥心はないのかもしれない。

・サトミ・ブラッドリー

日系クォーター、15才。黒髪、ブラウンの瞳。短髪だがボサボサ。中肉低身長、禁句はちっこい、チビ。

使用武器、主に背の日本刀

・ジェイク

デリー本局のリーダー、古参アタッカー。戦中からアタッカーをやっている強者。面倒見のいい男。

レイルの面倒で胃に穴があきそうな感じ

・セシリー・メイル

17才。プラチナブロンド、碧眼、白人ではない。

リッターとは父親違いの兄妹、可愛い系美少女。人を見て選別し、ガッツリ甘える世渡り上手。

馬は青毛の大きい馬ナイト、銃は見た目で選んだスバス。

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