ハーバー

文字数 3,556文字

…ハーバー


この時レオは、ハーバーの名前を聞くと、何故か知っているような…
どこかで会った事があるような感覚に陥っていた。

そして何故か、レオの心の中は、イライラと胸騒ぎがレオの中を襲い、レオはハーバーを見て落ち着かず、苛立ちを隠せなかった。


そしてそれは、ハーバーも同じ気分だった。

ハーバーもレオの姿を見て、落ち着かず、苛立ちが溜まっていた。

そんなレオを見て、ハーバーは、

「もしかしたら過去に、我々は出会ったのかもしれませんね」

と言い、レオの方を睨み付け、ハーバーはこの時苦笑した。



ギュッ…

この時レオは、エヴァンの亡骸の身体をギュッと抱き締め、エヴァンの顔を見た。

そして同時に、レオは思った。


こいつだけは絶対、生かしてはいけない。


生かせば、確実にこの世を混沌の渦に巻き込み、人間はやがて、こいつの手によって滅亡する。


何としても、俺がとめなければ…



だが、一体どうやってこいつを仕留める?


吸血鬼になった先生でさえ、このパワーだ。


それが親玉になると、さらに力があり、恐ろしい能力の持ち主だろう。



はたして俺の力がこいつに通じるのか…

……


いや、通じるも何も絶対にこいつを仕留めなきゃならない。



先生を自殺に追い込み、殺した相手だからな。



ギリッ!

レオはハーバーの顔を睨み付け、怒りの表情を顕にした。

ハーバーはそんなレオの表情を見て、冷淡な声で、


「…私が憎いですか、レオ?

師を自殺に追い込み、

吸血鬼にした、この私を…」

ギリリッ!


レオはハーバーのその言葉を聞いて、歯を立て、よけいに怒りを顕にした表情になった。

ハーバーは、そんなレオの表情を見て、フッと嘲笑い、
レオに向かってもう少し怒ってもらおうと面白がり、エヴァンの事について、もう少し話した。


「彼は実にいい駒でしたよ、レオ。

たっぷり人間の生き血を吸い、私の元で、吸血鬼を増やしていたのですから…


…そう、

彼なくしてはここまで仲間は増えませんでした。
偉業を為し遂げ、私の計画に大きく貢献しましたからね」

それを聞いたレオは、

「彼はお前のせいで、今まで培ってきた清い善行が、ことごとく潰れ、魂が汚されたんだ。

お前に接触したせいで…


………!!


悪い悪行を積み、彼の人生をめちゃめちゃにさせたんだ!」

レオはさらに怒りを顕にし、表情は増して険しくなった。

そしてハーバーに対して、続けて話を進め、

「お前は、さっきから、偉業だの、計画だのと言っているが一体何の話をしているんだ?

先生の身体を使って吸血鬼を増やし、一体何を企んでいたんだ?

言え!

お前の計画って一体なんなんだ?」

レオの言葉を聞いて、ハーバーは顔がニヤけ、嘲笑った。
そしてレオに向かって、顔を笑いながら、ハーバーは静かに計画の内容について、レオに話し出した。それは、


「…エヴァンの身体を使ってですか…

クククッ…



…いいですか、レオ。


ここに一匹の吸血鬼がいるとします。

その吸血鬼は人を襲い、人間を吸血鬼に変えるとしましょう。

(まあ、仮に一匹だけじゃ、場合によっては人間に取り押さえられてしまうかもしれませんが…)


しかしそれが、一匹だけじゃなくて、国単位の吸血鬼が突然襲ってきたら、貴方達はどうしますか?


…それも一斉に襲ってきたら…


貴方達人類は、ひとたまりもありませんよね。

(何せ、理性がなく、
肉体は人間より遥かに強靭で、凶暴ですからね)


ハーバーはレオに対して話を続け、人差し指を前にたてた。
そして、レオに向かって結論を言い、レオに対してこう言った。
それは、


…そう、



つまり、私は、




エヴァンの国王の立場を利用して、確実に吸血鬼を増やし、速やかに増やしたいのですよ…」

「…なっ!」

レオはハーバーの言葉を聞いて驚き、反応した。

ハーバーはレオのその反応を見て、話を進め、

「彼は国王…、

しかも民衆に好かれ、由緒正しきカルベロッカの王ですからね。
国民はおろか、諸外国の国も彼を信頼し、彼に心を許すでしょう。

…クククッ」


この時ハーバーは下を向き、低い声でレオに向かって嘲笑った。
そして、核心的な答えを延べ、レオに向かってこう答えた。
それは、


「…私は、そこを突きたいのですよ、レオ」

「!?」

レオがハーバーの答えに対して意表を持ち、疑問を浮かべると、ハーバーは続けてレオに向かってこう答えた。
それは、


「人間は各国でサミット(世界会議)を開くでしょう。
その時に互いに意見し、情報を交換し、結束を高める。

そして各国の重要な人物がそこに集まる。


「………!!!」


「もうお分かりだと思いますが、

彼らを(仲間)吸血鬼にして上から操る。

そして戦争を引き起こさせて、この世を破滅へと導く」


「!!!」

ハーバーはレオに話を続け、

「吸血鬼はですね、レオ。
一見普通にしていれば人間となんら見た目は変わりません。
姿、形、共に本性を出さなければ、なかなか見分けがつかないでしょう

クククッ…」



「そして私はエヴァンを使い、彼らを吸血鬼へと代える。
変えて彼らを操り、裏から世界をコントロールする。



…楽しいですよ、レオ。

人間同士、殺し合いが始まるのです。

憎み、悲しみ、悲鳴などが聞こえ、互いに奪い殺し合い、永遠の輪廻の地獄に堕ちるのです」

ハーバーはその時レオに対して、ニコッと笑った。

そしてレオに対して最後、恐ろしく、意外な言葉を発した。
それは、


「エヴァンは非常に重要で計画に必要な駒です。


彼にはもっと活躍し、働いてもらわなければ…

クククッ…



…そう、


これからも、


私の元でずっと…」

「!!?」

レオはハーバーのその言葉を聞き、耳を疑い、戸惑った。

そしてレオはハーバーに向かって、

「これからも、私の元でずっとだと?

一体どういう意味だ!」

と、ハーバーに対して罵倒し、レオはハーバーを問い詰めた。

するとハーバーはその時レオに向かって、大きく顔を歪ませて嘲笑った。

そしてレオに向かって衝撃な発言をした。
それは、

「クククッ…

安心しなさい、レオ。

彼は死んでませんよ。

言ったでしょう、吸血鬼は死なず、永遠の命があると。

例え心臓を貫かれても死にはしません。
(…まあ、頭を破壊され、潰されたらさすがに死にますが…)」


レオは、そのハーバーの言葉を聞いて、エヴァンの身体を見た。

そして、

「先生が生きてる?

心臓を刺したのに…

そんな事が…」

レオは驚き、もう一度エヴァンの顔を見た。

ハーバーはレオの驚いた顔を見て、レオに向かって、
「良かったですね、レオ。

大好きな先生が死んでなくて…」

と、顔をニヤケながらレオに向かって言った。

だがその後ハーバーは、レオに対して不敵な笑みを浮かべ、レオに向かってこう発言した。
それは、

「彼は、永久に死にません。

時間がたてば身体の組織が再生し、何度も何度も生き返るでしょう。

そして終わりなき地獄の旅が始まり、彼の魂に安らぎがありません。


何故なら、

この先永遠に私に仕え、彼の人生は、人間に仇なす存在として生きていくからです。

クククッ…」

「なっ!?」

レオはそのハーバーの言った言葉を聞き、驚き、絶句した。

そしてまた、だんだんハーバーに対して怒りの感情が込み上げてきて、ハーバーの顔を見て、レオは睨み付けた。

そんなレオの姿を見たハーバーは、尚も輪をかけ、レオに向かって挑発してきた。

そして、最後にエヴァンの死の事を、

「無駄死でしたね…」

と言い、レオに向かってエヴァンの事をけなし嘲笑った。

その言葉を聞いて、レオは怒り、頭の中が真っ白になった。

そしてレオはエヴァンの身体を握りしめたまま、フルフルとレオの身体が怒りで震え、

胸についていたエヴァンの血が、レオの手に血がべっとりと付き、

彼の血を通して、レオは拳をギュッと握りしめ、フツフツと怒りの感情がこの時沸き、爆発した。


そしてレオは、凄い形相をしながらハーバーに対して、

「よくも誇り高い師の心を傷つけ、嘲笑い、けなしたな!」

と怒鳴りつけ、

そのままレオは、ハーバーに向かって、全身全霊、右手から巨大な炎を発生させ、ハーバーの方に向かい、凄まじい形相でレオは殴りかかった。
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