ティファー
文字数 13,091文字
「……!
ティファー…」
「!
王妃!」
エヴァンはティファーの顔を見て驚いた。
そしてレオも、戦意喪失しながらもティファーが突然姿が現れた事に驚き、ティファーの顔を見て、ティファーの名前を呼んだ。
エヴァンは驚いた顔で、ティファーに向かって顔を向けた。
そしてエヴァンは驚いた表情で、ティファーに対してこう言った。それは、
「…まさかハーバーによって、
時空間に幽閉されていた貴方が出てこれたなんて…
…一体どうやって…
…なんで、出てきたんだ、
ティファー…」
エヴァンが驚いた表情でそう言うと、ティファーはキッとエヴァンの顔を睨み返し、そしてティファーはエヴァンに向かって右手で激しく平手打ちし、エヴァンの顔は叩かれた方向に顔を向いた。
パァーン!!!!!!
「!!」
ティファーがエヴァンに平手打ちした音が、場内に対して鳴り響く。
ティファーは叩いたエヴァンに対して、
「貴方…、自分がやった事、解っててしてるの?
貴方、レオ(弟子)に手を出すなんて…
仮にも貴方、自分の手で育てた子でしょう?
それを、傷つけようとするなんて…
私は絶対貴方を許せない!
エヴァン!」
そうティファーが、エヴァンに向かって叫ぶと、エヴァンは叩かれた頬を手で押さえながら呆然とした。
そしてこの時エヴァンは、ティファーの顔を睨み返し、
「なんで自分だけ、こんな扱いに…
…レオにしろ、ティファーにしろ、みんなして私(吸血鬼)を除け者扱いにしやがってえぇー!!!
………!!!
…どいつもこいつも、人間があぁー!!!」
と思いながら、彼の中に今まで溜まっていた黒い物(思い)が、ティファーに叩かれた事で一気に爆発し、エヴァンはすごい形相をしながらいきなりティファーに向かって両手を手で押さえ、ティファーはエヴァンによってその場で押し倒された。
「きゃっ!
……!!
…何するの!エヴァン!
…はっ!」
ぞくっ!
ティファーは倒されたエヴァンに向かって怒鳴りつけ、エヴァンの顔を睨み付けた。
だがエヴァンもティファーの顔をじっと睨み付け、一匹の吸血鬼の眼をしたエヴァンがティファーの顔の前におり、赤い眼をしてティファーの顔を睨んでいた。
「………!!
エ…エヴァン、貴方…」
エヴァンの血のような赤い瞳を見て、驚愕し、身震いするティファー。
エヴァンはその姿を見たティファーに向かって、冷たい低い声で、
「…私が怖いですか?
ティファー。
…クックックッ、
所詮私は貴方達とは違うのです。
種族も、生き様の道もね…
…クックック、
…あぁ、今貴方をこうして見下ろしていると、貴方がちっぽけな餌に見えてくる。
人間だった頃の私は、私にとって貴方はとても近寄り難く、輝き、すべてが眩しく思えた。
でも今、この吸血鬼の身体になった私は…
クックック…
今ではなんでも手に入られ、力づくで思い通り君を支配出来そうだ」
「え?」
エヴァンの驚愕な言葉を聞いて、言葉を失うティファー。
そしてティファーはそんなエヴァンに向かって、
「あっ、貴方…、何言ってるの?」
と、エヴァンに聞き返し、ティファーはエヴァンの顔を見て、汗を流しながらエヴァンの顔をもう一度見た。
すると、そんなティファーの表情を見たエヴァンはティファーに向かって冷たい声で、鋭い歯をぎらつかせながら、
「…さあ、この私を楽しませてくださいよ、ティファー。
吸血鬼(支配者)のこの私を…
餌(人間)は餌(人間)なりに抵抗をね…
…クックックッ」
とそう言い、エヴァンは嘲笑いながらティファーの服を力づくで手で引きちぎり、ティファーの姿は皆の前で、恥ずかしい姿になった。
ビリビリビリ!
(エヴァンがティファーの服をやぶる音)
ティファーがエヴァンに強引に押し倒され、エヴァンに向かって叫び倒すと、ティファーはエヴァンの顔を見て、
「いっ…嫌!
やめてエヴァン!
レオ(子供)が見てる!
奴(仮面)も見てる!
みんなの前でこんな洗いざらいな姿を見せるのは嫌!」
と、ティファーはエヴァンに向かって、悶えながらエヴァンに叫び倒した。
エヴァンはそんな抵抗をするティファーを見て、ティファーに向かって、無言で顔を近づけてきた。
そして、暴れるティファーの姿を見て、ティファーに対して首から下に向かって舌を使って甘噛みをし、左手で胸を押さえ、苦痛と快楽をティファーに与えた。
レオはそんなエヴァンの行為を見て、ティファーの姿を見てハッとし、エヴァンに対して、
「やめてください、先生!王妃が!」
と、エヴァンに対してレオは叫び、エヴァンの行為をやめさせようとした。
だがこの時、頭に血がのぼりながらも、横目でチラッとレオの様子を見ていたエヴァンは、左手で魔法を唱え、レオの地面の下から鎖みたいな物が出現し、その鎖がレオの体を縛り、彼を拘束した。
ガチャッ!ガチャッ!ガチャッ!
「!?」
レオはこの時、エヴァンの魔法から出現した鎖を見て、
「なんでわざわざ鎖なんだろう?」
と、疑問に思い、
「鎖以外でも氷系の呪文とか拘束する物があるだろう」
と、思った。
そしてこの時、レオの体に取り巻いている拘束している鎖を見て、
「…完全にこれ(鎖)は、先生の趣味だな」
と、レオは心の中で思い、エヴァンの顔を見て、エヴァンの意外な素顔を垣間見た瞬間だった。
エヴァンは悶えるティファーの姿を見て、ティファーに向かって押し倒しながらこう言った。
それは、
「もっと抵抗しなさい、ティファー…。
そして私に屈するのです。
お綺麗な貴方の姿が、皆の前で公表され、身も心もグチャグチャに汚されて、淫らな乱れっぷりな姿を私は是非とも見て見たい。
さあっ!踊れ!人間!
踊って私に恐怖し従い、私をもっと感じさせろ!
従え!従え!人間!!」
そう言い、エヴァンはティファーの胸の所をもみ、耳横で卑猥な言葉を連発した。
ティファーはそんな心が変わり果てたエヴァンの姿を見て、エヴァンの顔を見ながら涙目をして、エヴァンに向かってこう言った。
それは、
「貴方、自分がこんな事をしてて、自分に対して恥ずかしくないの?
皆の前でこんな事をして…、
レオ(子供・弟子)も目の前にいるのに…
今の貴方の姿に、ミシュランが見ていたら、果たしてなんて言うのかしら?
最低よ、エヴァン…」
それを聞いたエヴァンは、さらに頭に血がのぼり、カッとして、
「だっ…、黙れ!ティファー!
潔白で、すべての環境が整っていた貴方に対して、私の気持ちなど解りはせんよ!
…私はいつも一人だった。
一人で本当に欲しく、守りたかった者は次々と奪われ生きてきた。
父や母も殺され、挙げ句の果てに守りたかった弟も、私の目の前に惨殺させられ、私はすべてを失った。
そして私の心は魔物に対して復讐心だけが残り、復讐の赴くままに彼らを惨殺し、挙げ句の果てに私は人間に仇をなす吸血鬼になった。
魔物に対して殺戮を繰り返してきた私にとって、自業自得と言えばそれまでだが、すべてが整っている貴方に、ミシュランの事について言われる権利はない!
私はこれから本能の赴くままに生き、この力を使ってすべてを支配する王になり、人間どもを支配し、皆殺しにしてやる。
そして失う悲しみを彼ら(人間)にも味あわせてやり、悲痛な叫びをたくさん浴びせ、この世の絶望を彼らに叩き知らしめてやるんだ!」
「!」
それを聞いたティファーはギョッとした顔で、エヴァンに向かってすかさず言葉を発し、
「それは貴方の本当に思っている台詞ではないわ、エヴァン!
貴方は今、吸血鬼の身体になって、感情がコントロールできず、抑制できていない状態なのよ!
元の貴方は、人の痛みが解り、そんな事は絶対に言わないはずよ、エヴァン!」
ティファーは再度また、しっかりとエヴァンの顔を見て、
「…お願いよ、エヴァン!
もう一度、もう一度だけ、
私達と一緒に元の人間の身体に戻る方法を検索し、探しましょう!
そして元の身体(人間)に戻って、国民達も元に戻し、また執政を続け、みんなの為にその力を使っていくの!
お願い…
エヴァン!!」
ティファーはエヴァンに向かってしっかりと顔を見て、真剣にエヴァンにお願いをした。
それを見たエヴァンは、
「……ティファー…」
と、小声がもれ、エヴァンは悲しそうな顔をし、ティファーの顔を赤い瞳でジッと見た。
そんな二人のやり取りを見ていたハーバーはギロッとエヴァンの方を見て、
「…エヴァン」
と、低い声でエヴァンを黒い瞳で牽制した。
エヴァンはそんなハーバーとティファーの表情を見て、しばし少し無言になり、言葉を詰まらせて、
彼はゆっくりと瞳を閉じた。
「……………
……………
………」
キッ!!
だが、この時エヴァンはティファーに向かって鋭い声で、
「黙れ!黙れ!黙れ!!」
と赤い瞳で威嚇し、両手でティファーの体を押さえ、力づくで押さえつけた。
そして、
「従え!従え!従え!
貴方の心などいらない!
ただ黙って力のある吸血鬼の私に、骸のように従っとけばいいんだ!!!!」
とティファーを大声で罵倒し、エヴァンは恐ろしい顔でティファーの顔を睨んだ。
するとティファーは、エヴァンの行動を見て、スッと諦めたのか、フッと体の力を抜き、抵抗するのをやめ、エヴァンの顔を見ずに寝ながら横を向き、ティファーは悲しい顔をしながら一粒の涙が縦にツゥーと顔にそって流れ落ちた。
「…ハッ!」
エヴァンはそのティファーの悲しい顔を見て、怖じけつき、両手で押さえていたティファーの体を離れ、ビクッと表情を怖がらせた。
そしてエヴァンは、ティファーから手を離したその両手を顔に持っていき、顔を覆い隠し、
「…そんな表情をするな」
と、ガタガタ体を震わせ、そして、
「私を拒絶するな、ティファー…!!」
と、声を震わせながら声を高らかにあげ、再度ティファーに向かって、
「私を見ろ!!!!
ティファー!!!!!!!!!」
と、声を大にし、エヴァンはその場でティファーの表情を見て、ガタガタと震え、彼は悲壮な顔をした。
「ティファー!!!」
エヴァンは再度ティファーに自分の顔を見ろと、ティファーに向かって声をあげ、威嚇し、促した。
するとティファーはエヴァンに向かって、涙を流し、憐れんだ顔で、エヴァンの方をスッと向き、エヴァンの顔を真っ直ぐ見た。
「………
…エヴァン」
「…!!!」
エヴァンはティファーのエヴァンに対して憐れんだ顔見て、
「…あっ、あっ、あっ、あっ…、
うっ…、
あぁっ…
あぁぁ!!!!!!!」
エヴァンはティファーの表情を見て、顔からたくさん汗を流し、赤い瞳の目線を自分の両手に向け、醜い自分の手を目の前でかざし、エヴァンはその時動揺し体全体震えた。
そしてエヴァンは動揺しながらティファーに向かって、
「わっ…、私を憐れむな、ティファー!
たっ、頼む…
そんな顔で見ないでくれ!
そんな目で私を、異質な者という見方で見ないでくれ!
…みっ、見るな!
ティファー!!!!
……!!!!!!
やめろおぉぉー!!!!!!!!」
ガッ!!
「あっ!」
ギリリッ…!!
「…!!
…先生!!」
エヴァンは動揺し、顔から汗を出しながら震え、ティファーの表情に恐怖を怯え、エヴァンは咄嗟にティファーの首に手をかけた。
「…あっ、あぁ…!」
グググッ…
…そう、彼の中では、もっとも愛しい人に拒絶されるのを一番怖れ、
自分の姿が醜く変化しているのを誰よりも愛している者に見せたくないとこの時思い、
咄嗟に彼はティファーに暴挙な行動が出てしまい、
手を出してしまったのだ。
ギリリリッ…
「…あぁぁ…、エヴァン…」
「……!!
先生!
……!!!!!
くそー!
先生を止めなきゃ!」
レオはエヴァンの行動を見て、体に縛られている鎖をガチャガチャと音をたて、急いで鎖を外そうとした。
ガチャガチャ…
ガチンッ!
鎖を外そうとしながらレオは、
「くそー!
なかなか外れない!
すごく頑丈だ…
早くなんとかしないと…
……!!!
先生!やめて下さい!
でないとこのままでは…
このままでは…
貴方の手で、王妃を殺してしまう!」
レオはエヴァンに向かって大声で叫び、エヴァンにやめさせるように促した。
「…………、ティファー」
エヴァンがティファーの首をギュッと絞め、ティファーの顔を赤い瞳でギッと視線を合わせたその時、
「カハッ!…」
ドロドロドロ…
「!?」
エヴァンは急に血を吐き、その場でグラッと倒れた。
「カハッ!コホッ!ゴホッ!…」
そして血を吐く口を手で押さえ、そしてエヴァンは痛みを感じる心臓に手をやり、
「…心臓が痛い。
剣で貫いた傷口がジクジク痛い…
胸が…
心臓が…
心が…痛い」
と涙目になり、その場でうずくまり、視線を下に向けた。
「…ハァ、ハァ、ハァ…
ぐぅっ…
ガハッ!」
エヴァンは体がグラつき、地面に片手がついた。
そしてティファーの元から口から血を流しながら離れ、レオ達に背を向け、その場をよろめきながらエヴァンはティファーの元から離れた。
…そうこの時エヴァンは、自らで刺した心臓がまだ完璧に修復されていなかった。
いかに吸血鬼の体で自己再生能力があるにしろ、心臓だけはなかなか完治されにくい。
刺した所が完治されにくい心臓だったかもしれないが、それよりも彼の心のダメージのほうがとても強く、もしかしたらその影響によって、心臓の方がなかなか完治せず影響がものすごく出たかもしれない。
「…先生!!」
レオは心臓を押さえ血を吐き苦しんでいるエヴァンの姿を見て、声を出し、大声でエヴァンの名前を叫んだ。
するとエヴァンは、苦しみながらもレオの顔を鋭い瞳でギロッと睨み、レオの名前を呼び、そして血を吐きながらレオに向かってこう言った。
それは、
「…レオ、
今の君には全く私は興味がない。
興味がなく、私はいつでも君をなぶり殺しにできる。
足りないからだ。力が…、
力がなく、強者(吸血鬼)に怯え醜く生き延びるがいい。
私は傷が完全に回復したら人間を皆殺しにし、一人残らずこの世から消す。
そして、強者だけが生き残る時代を作り、殺伐とした時代を作ろう…
それが嫌なら全力で私を倒せる力を持ってこい。
でなければ貴方達、人間はなすすべもなく滅ぶだろう…
…待っていますよ、レオ」
そう言い、エヴァンはレオに背を向け、ガクッと体を落とし、心臓を押さえながらうずくまり、エヴァンは意識を失いかけた。
「カハッ!カハッ!カハッ!」
エヴァンが血を吐きながらうずくまる姿を見てハーバーは、スッとエヴァンの方に近寄り、うずくまっているエヴァンに向かってこう言った。
それは、
「…フッフッフ、心臓が痛いですか、エヴァン。
それはそうですよね、エヴァン。
弟子にも裏切られ、
そして…
愛している者でさえ憐れみの目で見られ、
そして…
貴方は、拒絶されたのですから…
クックック…
こんなお笑い草の話しは、他にはないですよね、クックック…」
それを聞いたエヴァンは、うずくまり息をきらしながらハーバーに向かって、
「…黙れ」
と、エヴァンは左手で心臓を押さえ下を向きながらハーバーに対して言った。
ハーバーはそんな強がりなエヴァンの姿を見て、
「…フッ」
と、笑い、エヴァンに対して愛着を持ち、満足した笑みでエヴァンの体に触ろうとした。
「!」
エヴァンはハーバーがエヴァンの体に触ろうとした行為を見て、
パシッ!!!
と、その手を振り払い、ハーバーに向かって、
「…触るな!」
とハーバーに対して、声をきらしながら怒鳴り付け、下を向き、血を吐きながらハーバーの手を振り払った。
そのエヴァンの孤高なプライドの高い行為を見たハーバーはますますエヴァンが気に入り、うずくまっているエヴァンに向かって、
「…早く私色に染めてあげますね、エヴァン」
と言い、ハーバーはエヴァンに向かってニヤリと邪悪な笑みを浮かべた。
エヴァンのプライドの高いひねている態度を見たハーバーは安心したのか、
今度はレオに向かって勝利を確信したような顔で、
「完全に貴方達二人、心が分断しましたね、レオ…
フッフッフ…、
いい光景ですよレオ。
貴方達、二人失意に溢れ、いがみ合っている姿がね…
クックック…」
「…………」
ハーバーが二人に向かってそう言うと、レオとエヴァンは二人とも下を向き、無言で言葉を発っせず、沈黙が続いていた。
ハーバーはそんな二人の姿を見て、上機嫌な顔をしてレオに向かって、
「フフフ…、今回は見逃してあげますよ、レオ。
エヴァンの言った通り、醜く憐れに私達(吸血鬼)に怯えて生き延びるがいいと…
そしてエヴァンに対して、行動を止めたければエヴァンを討ちにこいと…
まあ、どのみち私達(吸血鬼)に対して、貴方は一生エヴァンには勝てないと思いますがね…
クックック…
…人間と吸血鬼の身体能力の差を圧倒的感じたとは思いますが……」
ぴくっ
それを聞いたエヴァンの心の中に棲んでいる黒いマントの男はハーバーに向かって、
「…よろしいんですか?
ハーバーさん。
レオを見逃しちゃっても?
あんだけ貴方はレオの事を警戒し恐れていたのに、こんなあっさり見逃すなんて…」
黒いマントの男の言葉を聞いたハーバーは上機嫌な顔をして、
「…フッ、別にいいですよ、レオの事なんて…
生かして惨めにしといたほうが、
この方が楽しい…
欲しい物(エヴァン)も手に入ったし、エヴァンも人間を皆殺しにすると言ってますしね、
こんなに愉快な事はないですよ、
クックック…
…それに、保険もかけてますし、
どの道良しとしますか…
クックックッ…」
そう言い、ハーバーは満足そうな顔をし、二人の事に対して嘲笑うと、ハーバーは手を前に広げ、レオに対して魔法を唱えた。
ギュイン!!
「!!?」
ハーバーがレオに向けて魔法を唱えると、突然レオの体が光り、音をたて揺れだした。
レオはハーバーに向かって、
「!?
…何をした?」
と、レオがハーバーの方を向き、ハーバーに問い詰めると、ハーバーはレオに向かって、
「見逃してあげますよ、レオ。
貴方は私達(吸血鬼)にとって、能力も技能も驚異ではない…
ただ一つ驚異だったのは、エヴァンに対しての繋がりの絆に関しての事だったが…
……
…………
………フッ!」
ハーバーはこの時、下を向いてうずくまっているエヴァンを見て、フッと嘲笑い、レオをけなした。
そしてレオに向かって、
「…どうやら、問題なさそうですね」
と言い、ハーバーはレオを見下した言い方をして、
「敗北を身に染めながら、惨めに無惨に生きていきなさい」
と言い、ハーバーはレオの顔を背け背中を向き、黒いフードをさっと翻した。
「エヴァン先生!」
レオは消える直前、もう一度エヴァンの顔を見た。
「…レオ」
その時のエヴァンの表情はレオの顔をジッと見て、鋭い目つきをしていた。
だが、ほんの消える直前エヴァンの顔はフッとレオに向かって笑みを浮かべた。
「えっ?」
レオはそのまさかのエヴァンの表情を見て驚き、
「何で?」
と疑問に思った。
その時のエヴァンの表情はまるで、レオに別れをつげるような顔をして、
今までありがとう…
君と一緒に過ごせてよかった。
たくさんの思い出をありがとう…
君の事はずっと忘れないよ…
これからも元気で…
と言うような表情をし、エヴァンは自分自身に対し、まるで自分の運命に逆らえないような歯痒さと悲しみをかみしめ、瞳を下におろし、そっと目を閉じ、レオを見送った。
「………!!!
先生!!!!!!」
レオはそんな表情を見て、エヴァンに向かって力いっぱい叫んだ。
だがレオの体は、ハーバーの魔法によって外に移動させられ、カルベロッカの場外のだいぶ遠いところの荒れ地に移動させられていた。
レオはこの時、右手を力いっぱい地面に叩きつけた。
そしてこの時、エヴァンが魔法で縛った鎖もいつの間にか崩れ落ち、消えて粉々に消え去っていた。
レオは思った。
滲み出る体から沸き起こる怒りと、彼の体の中で駆け巡る無念の思いの血がグルグルと駆け巡った。
そしてこの時ほどレオは、
力が欲しい…
余りにも自分に対して、力が全く足りなかった。
力を蓄え、どこか修行しなければ…
レオは右手を地面に押し付けながら体が震え、悔し涙を流しながら頭を地面に擦り付けた。
そしてレオはキッと顔を睨ませ、この時決意した。
先生を救う…
そしてにっくきハーバーをこの手で討つ!!
それにはまず、修行だ!
絶対に身に付け、力を手に入れてやる!
修行…修行…修行…
この時レオは、修行という言葉を繰り返していると、ある事が頭の中に甦り、気になる言葉が出てきた。
それは、エヴァンの心の中で話した会話、日本人の名前の相田コウという名の男の存在だった。
レオはこの時、エヴァンの口から、こんな事を思いだし、この男なら絶対に修行をついてもらったら、絶対に強くなれるぞと思った。それは、
「エヴァン先生と対等に戦う事ができて、実力は騎士団の中で№2…
おまけに独自の忍術の技法をもっており、優れた戦士だ」
レオはさっそくこの男の情報を調べるため、悔し涙をとめ、足を動かしはじめた。
そして自分の能力で、何かしら彼の遺品にふれ、彼とコンタクトを試みようと思った。
「よし!行くぞ!」
レオの表情からは悔し涙から希望の顔に変わり、心を前向きにし、心を弾ませた。
…そんなレオが足を一歩歩き始めた時、エヴァンは城の中の部屋でティファーと一緒にベットの所で療養していた。
そしてエヴァンはベットを椅子がわりにし、ティファーが眠っている横で、ただ黙って下を向き、無言でジッと鋭い目つきをしながら色々と考え事をしていた。
エヴァンが下を向き、心臓の回復の為に、ベットに座り療養していると、
エヴァンは自分の醜い手を見ながら、部屋に入る前、ハーバーと別れ際の会話の話が彼の頭の脳裏に流れた。
……
…………
「…クックックッ、嬉しいですよ、エヴァン。
私は貴方を手に入れられて…
貴方の心臓が治りましたらいろいろと計画の事についてお話したい事がありますので、それまでは各自待機でお願いします」
「…………」
それを聞いたエヴァンは、しばし下を向き無言になり、そしてキッと鋭い目つきをしながら、ハーバーに向かってエヴァンはこう言った。
それは、
「…別に私は、お前とは仲良くする気は断じてない。
お前の駒になりたくもないし…
それよりお前…
何故あのタイミングでティファーを解放したんだ?
自力でティファーが、お前の時空間魔法を破って出られたとはとうてい考えられない…
…お前、
ティファーを使って、一体何を考えているんだ?」
それを聞いたハーバーは顔をニヤかせ、エヴァンに向かって、
「…なに、いちおー念のためですが、貴方が勝手な行動をしない為に念には念をですね…
まあ、貴方も愛しの妻といれて、気分的にもいいかなっと思い、この時このタイミングで解放させて頂きました」
それを聞いたエヴァンは、少し間をあけ、ハーバーに向かって、
「…つまりティファーは、
私に対しての人質か…
私の動きを拘束し、思いのまま動かす為に…
…まあお前は、いざとなったら私を操り、無理矢理にでも計画に加担させようとするがな」
それを聞いたハーバーはクスッと笑い、エヴァンに対して、
「私はできれば貴方に積極的に望んで計画に参加して欲しいんですよ。
私は貴方を高く買ってる(評価)んです。
人間の中ではずば抜けて能力も高いし、頭もいいほうですしね…
ですから、貴方には積極的に参加をして頂けたいのですが…
…おっと、貴方はもう人間ではないですよね…
クックックッ…」
「……………」
エヴァンはハーバーの話を聞き、ギリッと顔を睨ませ、ハーバーを睨み付けハーバーに対してこう言った。それは、
「お前が笑っていられるのも今のうちだ。
お前の顔が苦悶に歪む顔を楽しみにしてるよ」
エヴァンがハーバーに対してそう言うと、ハーバーはエヴァンに向かって、
「…さあ、苦悶に顔を歪むのはどうでしょうね?
案外近いうちかもしれませんけど…」
「…………」
二人はにらみ合い、場が硬直し動かなくなった。
エヴァンはハーバーの顔をギリギリと睨み付け、
「話しは以上だ、出来ればお前と話をしたくない
私はティファーを連れて、部屋に戻る」
と言い、エヴァンはその場を去ろうとした。
「…待ちなさい、エヴァン」
「?」
エヴァンがその場を離れ、意識を失っているティファーを連れて部屋に戻ろうとすると、ハーバーはエヴァンの足をとめ、声をかけた。
そしてハーバーは、エヴァンが自分の心臓を押さえながらティファーを連れて部屋に戻ろうとするエヴァンに向かってこう話かけてきた。
それは、
「…貴方、人間の血は飲まないのですか?
心臓も破損している事もですし、飲んでおかないと、また衝動が襲い、大変な事になりますよ」
それを聞いたエヴァンは、ハーバーに向かって汗を垂らしながら苦虫が走ったような顔をして、
「私は人間の血には興味がないんだ。
あまり興味がなく、飲みたくはない…」
それを聞いたハーバーは、エヴァンの苦虫のような顔をしている表情を見て、ニヤッとして、
「…では貴方は一体、何に興味があるのですか?
まさか何も興味がないとは思いませんが…」
エヴァンはハーバーの言葉を聞き、両目を片方に寄せ、汗を垂らし、沈黙した。
…そう、この時エヴァンは嘘をついた。
本当は人間の血が欲しい。
頭では嫌がり、嫌悪感を抱いているが、彼の体が欲し全身がズキズキと痛み、今にでも喉から手が出そうなくらい体が悲鳴を浴びていていた。
ハーバーは、人間の血に興味がないと言っているエヴァンに向かって、
「…本当にいらないのですか?
体が欲しているんじゃないんじゃないですか?」
それを聞いたエヴァンは怒った声で、
「…いらん!
何度も言わせるな!
私は人間の血などいらない!」
と言い、ハーバーの言葉に対して怒鳴り付け、ティファーを連れて足を進めようとした。
そんな時、ハーバーはエヴァンに対して、別の提案をしてきた。
それは、ハーバーが隠し持っていたグラスにハーバーの血が入った入れ物を渡し、これを飲めと言ってきたのだ。
エヴァンはこの時、少し沈黙しながらそのグラスを受け取った。
そして、吸血衝動に襲われたくないと思い、そのグラスを一気飲みをした。
飲み終わった後、エヴァンは無言でハーバーにグラスを返した。
そしてエヴァンはティファーを抱き抱え、心臓を手に押さえながら自分達の部屋に戻った。
エヴァンは自分の部屋に戻り、自分の醜い手を見つめていると、
「いよいよ私も本格的に化け物だな…」
と、ボソッと小声で言い、自分の姿に嫌悪感を抱いていた。
そしてまた手を見ながら小声で、
「…これではレオに退かれる訳だ」
と言い、自分を卑下していた。
エヴァンは下を向きながらつぶやき、
「早く人間の姿に戻って、この状況を何とかしなければ…
だが、人間の姿に戻るには奴を倒すか、はたまた別の方法があるのかわからないが、現状私の力では奴を倒す事ができない…
奴に全てを握られ、支配されている状況だからな…
…はて、どうしたものか…」
エヴァンは下を向いて悩み、ベットの上で椅子がわりに使い、悩み、考え事をしていた。
そして、
「あまりにも不利な状況だ…」
と言い、瞳を下に向け、醜い手を見つめていた。
だが、そんな彼の考えと反比例するかのように、彼の吸血鬼の体は力が溢れていた。
そしてどこかエヴァンは、強い者と戦いたい、争いを好む性格も強調され、血に飢えてる面も内面で強調されていた。
ハーバーの目指す、争いのある世界…
エヴァンはどこか、その計画を頭では望んではいけないと思う彼だが、どこかかすかに戦いを欲し、心が望んでる面の顔もあり、複雑な心境でいていた。
「…………!!」
エヴァンは手を見つめながら落ち着かず、気分が安定せず、この時イライラしていた。
そして力が溢れるばかりの吸血鬼の体で、気持ちがコントロールしにくく、苛立ちを感じていた。
「…ぐっ…」
エヴァンはスッとその場をたち、手を顔に押さえながら無言で立った。
そしてティファーが気絶して寝ている事もあり、ティファーの様子を見て安心しているのか、
黙って横に置いてあった剣を持ち出し、エヴァンは部屋を出た。
エヴァンが黙って部屋を出た後、近くの荒野の外に出ていた。
そして溢れんばかりの魔力を開放する為、エヴァンは風の魔法と雷の魔法を同時に唱え、剣を上に向け魔法を高らかに唱えた。
この時、エヴァンの上空に大きな魔法円と、エヴァンの体の回りに激しく暴風の嵐が彼を中心に激しく風が包みこむ。
そしてもう一度魔法を唱え、彼が叫んだその時、
ドカアァーン!!!!!!!!!!
ピシャーン!!!!!!!!!!!!
「…フッフッフ」
この時ハーバーは別の部屋でチェスを指している時、エヴァンの雷の轟音を聞いて嘲笑い、フッと笑みを浮かべた。
そして独り言でエヴァンに向かって、
「やがて貴方は吸血鬼の力に溺れ、元の人間に戻りたいと思わなくなる…
そして徐々に人間の事を餌と思い、何の感情も抱くことなく、血の衝動に走るだろう…
…人間の気持ちを完璧に捨て去った時、貴方は…
……
…………先が楽しみです、
エヴァン。
……クックックックッ…」
そう言い、ハーバーはエヴァンに対して、彼の今後の流れについて期待を持ち、嘲笑った。
そしてもう一度エヴァンに向かって、
「楽しみです…」
と言い、盤の上にあるチェスを手で駒を持ち上げさしだした。
エヴァンが魔法を放った荒野には、辺り一面地面がえぐれ、火の海となっていた。
そして彼の目つきは鋭い眼光と化し、戦いを望み、争いを好む一匹の修羅の顔つきと化していた。
ティファー…」
「!
王妃!」
エヴァンはティファーの顔を見て驚いた。
そしてレオも、戦意喪失しながらもティファーが突然姿が現れた事に驚き、ティファーの顔を見て、ティファーの名前を呼んだ。
エヴァンは驚いた顔で、ティファーに向かって顔を向けた。
そしてエヴァンは驚いた表情で、ティファーに対してこう言った。それは、
「…まさかハーバーによって、
時空間に幽閉されていた貴方が出てこれたなんて…
…一体どうやって…
…なんで、出てきたんだ、
ティファー…」
エヴァンが驚いた表情でそう言うと、ティファーはキッとエヴァンの顔を睨み返し、そしてティファーはエヴァンに向かって右手で激しく平手打ちし、エヴァンの顔は叩かれた方向に顔を向いた。
パァーン!!!!!!
「!!」
ティファーがエヴァンに平手打ちした音が、場内に対して鳴り響く。
ティファーは叩いたエヴァンに対して、
「貴方…、自分がやった事、解っててしてるの?
貴方、レオ(弟子)に手を出すなんて…
仮にも貴方、自分の手で育てた子でしょう?
それを、傷つけようとするなんて…
私は絶対貴方を許せない!
エヴァン!」
そうティファーが、エヴァンに向かって叫ぶと、エヴァンは叩かれた頬を手で押さえながら呆然とした。
そしてこの時エヴァンは、ティファーの顔を睨み返し、
「なんで自分だけ、こんな扱いに…
…レオにしろ、ティファーにしろ、みんなして私(吸血鬼)を除け者扱いにしやがってえぇー!!!
………!!!
…どいつもこいつも、人間があぁー!!!」
と思いながら、彼の中に今まで溜まっていた黒い物(思い)が、ティファーに叩かれた事で一気に爆発し、エヴァンはすごい形相をしながらいきなりティファーに向かって両手を手で押さえ、ティファーはエヴァンによってその場で押し倒された。
「きゃっ!
……!!
…何するの!エヴァン!
…はっ!」
ぞくっ!
ティファーは倒されたエヴァンに向かって怒鳴りつけ、エヴァンの顔を睨み付けた。
だがエヴァンもティファーの顔をじっと睨み付け、一匹の吸血鬼の眼をしたエヴァンがティファーの顔の前におり、赤い眼をしてティファーの顔を睨んでいた。
「………!!
エ…エヴァン、貴方…」
エヴァンの血のような赤い瞳を見て、驚愕し、身震いするティファー。
エヴァンはその姿を見たティファーに向かって、冷たい低い声で、
「…私が怖いですか?
ティファー。
…クックックッ、
所詮私は貴方達とは違うのです。
種族も、生き様の道もね…
…クックック、
…あぁ、今貴方をこうして見下ろしていると、貴方がちっぽけな餌に見えてくる。
人間だった頃の私は、私にとって貴方はとても近寄り難く、輝き、すべてが眩しく思えた。
でも今、この吸血鬼の身体になった私は…
クックック…
今ではなんでも手に入られ、力づくで思い通り君を支配出来そうだ」
「え?」
エヴァンの驚愕な言葉を聞いて、言葉を失うティファー。
そしてティファーはそんなエヴァンに向かって、
「あっ、貴方…、何言ってるの?」
と、エヴァンに聞き返し、ティファーはエヴァンの顔を見て、汗を流しながらエヴァンの顔をもう一度見た。
すると、そんなティファーの表情を見たエヴァンはティファーに向かって冷たい声で、鋭い歯をぎらつかせながら、
「…さあ、この私を楽しませてくださいよ、ティファー。
吸血鬼(支配者)のこの私を…
餌(人間)は餌(人間)なりに抵抗をね…
…クックックッ」
とそう言い、エヴァンは嘲笑いながらティファーの服を力づくで手で引きちぎり、ティファーの姿は皆の前で、恥ずかしい姿になった。
ビリビリビリ!
(エヴァンがティファーの服をやぶる音)
ティファーがエヴァンに強引に押し倒され、エヴァンに向かって叫び倒すと、ティファーはエヴァンの顔を見て、
「いっ…嫌!
やめてエヴァン!
レオ(子供)が見てる!
奴(仮面)も見てる!
みんなの前でこんな洗いざらいな姿を見せるのは嫌!」
と、ティファーはエヴァンに向かって、悶えながらエヴァンに叫び倒した。
エヴァンはそんな抵抗をするティファーを見て、ティファーに向かって、無言で顔を近づけてきた。
そして、暴れるティファーの姿を見て、ティファーに対して首から下に向かって舌を使って甘噛みをし、左手で胸を押さえ、苦痛と快楽をティファーに与えた。
レオはそんなエヴァンの行為を見て、ティファーの姿を見てハッとし、エヴァンに対して、
「やめてください、先生!王妃が!」
と、エヴァンに対してレオは叫び、エヴァンの行為をやめさせようとした。
だがこの時、頭に血がのぼりながらも、横目でチラッとレオの様子を見ていたエヴァンは、左手で魔法を唱え、レオの地面の下から鎖みたいな物が出現し、その鎖がレオの体を縛り、彼を拘束した。
ガチャッ!ガチャッ!ガチャッ!
「!?」
レオはこの時、エヴァンの魔法から出現した鎖を見て、
「なんでわざわざ鎖なんだろう?」
と、疑問に思い、
「鎖以外でも氷系の呪文とか拘束する物があるだろう」
と、思った。
そしてこの時、レオの体に取り巻いている拘束している鎖を見て、
「…完全にこれ(鎖)は、先生の趣味だな」
と、レオは心の中で思い、エヴァンの顔を見て、エヴァンの意外な素顔を垣間見た瞬間だった。
エヴァンは悶えるティファーの姿を見て、ティファーに向かって押し倒しながらこう言った。
それは、
「もっと抵抗しなさい、ティファー…。
そして私に屈するのです。
お綺麗な貴方の姿が、皆の前で公表され、身も心もグチャグチャに汚されて、淫らな乱れっぷりな姿を私は是非とも見て見たい。
さあっ!踊れ!人間!
踊って私に恐怖し従い、私をもっと感じさせろ!
従え!従え!人間!!」
そう言い、エヴァンはティファーの胸の所をもみ、耳横で卑猥な言葉を連発した。
ティファーはそんな心が変わり果てたエヴァンの姿を見て、エヴァンの顔を見ながら涙目をして、エヴァンに向かってこう言った。
それは、
「貴方、自分がこんな事をしてて、自分に対して恥ずかしくないの?
皆の前でこんな事をして…、
レオ(子供・弟子)も目の前にいるのに…
今の貴方の姿に、ミシュランが見ていたら、果たしてなんて言うのかしら?
最低よ、エヴァン…」
それを聞いたエヴァンは、さらに頭に血がのぼり、カッとして、
「だっ…、黙れ!ティファー!
潔白で、すべての環境が整っていた貴方に対して、私の気持ちなど解りはせんよ!
…私はいつも一人だった。
一人で本当に欲しく、守りたかった者は次々と奪われ生きてきた。
父や母も殺され、挙げ句の果てに守りたかった弟も、私の目の前に惨殺させられ、私はすべてを失った。
そして私の心は魔物に対して復讐心だけが残り、復讐の赴くままに彼らを惨殺し、挙げ句の果てに私は人間に仇をなす吸血鬼になった。
魔物に対して殺戮を繰り返してきた私にとって、自業自得と言えばそれまでだが、すべてが整っている貴方に、ミシュランの事について言われる権利はない!
私はこれから本能の赴くままに生き、この力を使ってすべてを支配する王になり、人間どもを支配し、皆殺しにしてやる。
そして失う悲しみを彼ら(人間)にも味あわせてやり、悲痛な叫びをたくさん浴びせ、この世の絶望を彼らに叩き知らしめてやるんだ!」
「!」
それを聞いたティファーはギョッとした顔で、エヴァンに向かってすかさず言葉を発し、
「それは貴方の本当に思っている台詞ではないわ、エヴァン!
貴方は今、吸血鬼の身体になって、感情がコントロールできず、抑制できていない状態なのよ!
元の貴方は、人の痛みが解り、そんな事は絶対に言わないはずよ、エヴァン!」
ティファーは再度また、しっかりとエヴァンの顔を見て、
「…お願いよ、エヴァン!
もう一度、もう一度だけ、
私達と一緒に元の人間の身体に戻る方法を検索し、探しましょう!
そして元の身体(人間)に戻って、国民達も元に戻し、また執政を続け、みんなの為にその力を使っていくの!
お願い…
エヴァン!!」
ティファーはエヴァンに向かってしっかりと顔を見て、真剣にエヴァンにお願いをした。
それを見たエヴァンは、
「……ティファー…」
と、小声がもれ、エヴァンは悲しそうな顔をし、ティファーの顔を赤い瞳でジッと見た。
そんな二人のやり取りを見ていたハーバーはギロッとエヴァンの方を見て、
「…エヴァン」
と、低い声でエヴァンを黒い瞳で牽制した。
エヴァンはそんなハーバーとティファーの表情を見て、しばし少し無言になり、言葉を詰まらせて、
彼はゆっくりと瞳を閉じた。
「……………
……………
………」
キッ!!
だが、この時エヴァンはティファーに向かって鋭い声で、
「黙れ!黙れ!黙れ!!」
と赤い瞳で威嚇し、両手でティファーの体を押さえ、力づくで押さえつけた。
そして、
「従え!従え!従え!
貴方の心などいらない!
ただ黙って力のある吸血鬼の私に、骸のように従っとけばいいんだ!!!!」
とティファーを大声で罵倒し、エヴァンは恐ろしい顔でティファーの顔を睨んだ。
するとティファーは、エヴァンの行動を見て、スッと諦めたのか、フッと体の力を抜き、抵抗するのをやめ、エヴァンの顔を見ずに寝ながら横を向き、ティファーは悲しい顔をしながら一粒の涙が縦にツゥーと顔にそって流れ落ちた。
「…ハッ!」
エヴァンはそのティファーの悲しい顔を見て、怖じけつき、両手で押さえていたティファーの体を離れ、ビクッと表情を怖がらせた。
そしてエヴァンは、ティファーから手を離したその両手を顔に持っていき、顔を覆い隠し、
「…そんな表情をするな」
と、ガタガタ体を震わせ、そして、
「私を拒絶するな、ティファー…!!」
と、声を震わせながら声を高らかにあげ、再度ティファーに向かって、
「私を見ろ!!!!
ティファー!!!!!!!!!」
と、声を大にし、エヴァンはその場でティファーの表情を見て、ガタガタと震え、彼は悲壮な顔をした。
「ティファー!!!」
エヴァンは再度ティファーに自分の顔を見ろと、ティファーに向かって声をあげ、威嚇し、促した。
するとティファーはエヴァンに向かって、涙を流し、憐れんだ顔で、エヴァンの方をスッと向き、エヴァンの顔を真っ直ぐ見た。
「………
…エヴァン」
「…!!!」
エヴァンはティファーのエヴァンに対して憐れんだ顔見て、
「…あっ、あっ、あっ、あっ…、
うっ…、
あぁっ…
あぁぁ!!!!!!!」
エヴァンはティファーの表情を見て、顔からたくさん汗を流し、赤い瞳の目線を自分の両手に向け、醜い自分の手を目の前でかざし、エヴァンはその時動揺し体全体震えた。
そしてエヴァンは動揺しながらティファーに向かって、
「わっ…、私を憐れむな、ティファー!
たっ、頼む…
そんな顔で見ないでくれ!
そんな目で私を、異質な者という見方で見ないでくれ!
…みっ、見るな!
ティファー!!!!
……!!!!!!
やめろおぉぉー!!!!!!!!」
ガッ!!
「あっ!」
ギリリッ…!!
「…!!
…先生!!」
エヴァンは動揺し、顔から汗を出しながら震え、ティファーの表情に恐怖を怯え、エヴァンは咄嗟にティファーの首に手をかけた。
「…あっ、あぁ…!」
グググッ…
…そう、彼の中では、もっとも愛しい人に拒絶されるのを一番怖れ、
自分の姿が醜く変化しているのを誰よりも愛している者に見せたくないとこの時思い、
咄嗟に彼はティファーに暴挙な行動が出てしまい、
手を出してしまったのだ。
ギリリリッ…
「…あぁぁ…、エヴァン…」
「……!!
先生!
……!!!!!
くそー!
先生を止めなきゃ!」
レオはエヴァンの行動を見て、体に縛られている鎖をガチャガチャと音をたて、急いで鎖を外そうとした。
ガチャガチャ…
ガチンッ!
鎖を外そうとしながらレオは、
「くそー!
なかなか外れない!
すごく頑丈だ…
早くなんとかしないと…
……!!!
先生!やめて下さい!
でないとこのままでは…
このままでは…
貴方の手で、王妃を殺してしまう!」
レオはエヴァンに向かって大声で叫び、エヴァンにやめさせるように促した。
「…………、ティファー」
エヴァンがティファーの首をギュッと絞め、ティファーの顔を赤い瞳でギッと視線を合わせたその時、
「カハッ!…」
ドロドロドロ…
「!?」
エヴァンは急に血を吐き、その場でグラッと倒れた。
「カハッ!コホッ!ゴホッ!…」
そして血を吐く口を手で押さえ、そしてエヴァンは痛みを感じる心臓に手をやり、
「…心臓が痛い。
剣で貫いた傷口がジクジク痛い…
胸が…
心臓が…
心が…痛い」
と涙目になり、その場でうずくまり、視線を下に向けた。
「…ハァ、ハァ、ハァ…
ぐぅっ…
ガハッ!」
エヴァンは体がグラつき、地面に片手がついた。
そしてティファーの元から口から血を流しながら離れ、レオ達に背を向け、その場をよろめきながらエヴァンはティファーの元から離れた。
…そうこの時エヴァンは、自らで刺した心臓がまだ完璧に修復されていなかった。
いかに吸血鬼の体で自己再生能力があるにしろ、心臓だけはなかなか完治されにくい。
刺した所が完治されにくい心臓だったかもしれないが、それよりも彼の心のダメージのほうがとても強く、もしかしたらその影響によって、心臓の方がなかなか完治せず影響がものすごく出たかもしれない。
「…先生!!」
レオは心臓を押さえ血を吐き苦しんでいるエヴァンの姿を見て、声を出し、大声でエヴァンの名前を叫んだ。
するとエヴァンは、苦しみながらもレオの顔を鋭い瞳でギロッと睨み、レオの名前を呼び、そして血を吐きながらレオに向かってこう言った。
それは、
「…レオ、
今の君には全く私は興味がない。
興味がなく、私はいつでも君をなぶり殺しにできる。
足りないからだ。力が…、
力がなく、強者(吸血鬼)に怯え醜く生き延びるがいい。
私は傷が完全に回復したら人間を皆殺しにし、一人残らずこの世から消す。
そして、強者だけが生き残る時代を作り、殺伐とした時代を作ろう…
それが嫌なら全力で私を倒せる力を持ってこい。
でなければ貴方達、人間はなすすべもなく滅ぶだろう…
…待っていますよ、レオ」
そう言い、エヴァンはレオに背を向け、ガクッと体を落とし、心臓を押さえながらうずくまり、エヴァンは意識を失いかけた。
「カハッ!カハッ!カハッ!」
エヴァンが血を吐きながらうずくまる姿を見てハーバーは、スッとエヴァンの方に近寄り、うずくまっているエヴァンに向かってこう言った。
それは、
「…フッフッフ、心臓が痛いですか、エヴァン。
それはそうですよね、エヴァン。
弟子にも裏切られ、
そして…
愛している者でさえ憐れみの目で見られ、
そして…
貴方は、拒絶されたのですから…
クックック…
こんなお笑い草の話しは、他にはないですよね、クックック…」
それを聞いたエヴァンは、うずくまり息をきらしながらハーバーに向かって、
「…黙れ」
と、エヴァンは左手で心臓を押さえ下を向きながらハーバーに対して言った。
ハーバーはそんな強がりなエヴァンの姿を見て、
「…フッ」
と、笑い、エヴァンに対して愛着を持ち、満足した笑みでエヴァンの体に触ろうとした。
「!」
エヴァンはハーバーがエヴァンの体に触ろうとした行為を見て、
パシッ!!!
と、その手を振り払い、ハーバーに向かって、
「…触るな!」
とハーバーに対して、声をきらしながら怒鳴り付け、下を向き、血を吐きながらハーバーの手を振り払った。
そのエヴァンの孤高なプライドの高い行為を見たハーバーはますますエヴァンが気に入り、うずくまっているエヴァンに向かって、
「…早く私色に染めてあげますね、エヴァン」
と言い、ハーバーはエヴァンに向かってニヤリと邪悪な笑みを浮かべた。
エヴァンのプライドの高いひねている態度を見たハーバーは安心したのか、
今度はレオに向かって勝利を確信したような顔で、
「完全に貴方達二人、心が分断しましたね、レオ…
フッフッフ…、
いい光景ですよレオ。
貴方達、二人失意に溢れ、いがみ合っている姿がね…
クックック…」
「…………」
ハーバーが二人に向かってそう言うと、レオとエヴァンは二人とも下を向き、無言で言葉を発っせず、沈黙が続いていた。
ハーバーはそんな二人の姿を見て、上機嫌な顔をしてレオに向かって、
「フフフ…、今回は見逃してあげますよ、レオ。
エヴァンの言った通り、醜く憐れに私達(吸血鬼)に怯えて生き延びるがいいと…
そしてエヴァンに対して、行動を止めたければエヴァンを討ちにこいと…
まあ、どのみち私達(吸血鬼)に対して、貴方は一生エヴァンには勝てないと思いますがね…
クックック…
…人間と吸血鬼の身体能力の差を圧倒的感じたとは思いますが……」
ぴくっ
それを聞いたエヴァンの心の中に棲んでいる黒いマントの男はハーバーに向かって、
「…よろしいんですか?
ハーバーさん。
レオを見逃しちゃっても?
あんだけ貴方はレオの事を警戒し恐れていたのに、こんなあっさり見逃すなんて…」
黒いマントの男の言葉を聞いたハーバーは上機嫌な顔をして、
「…フッ、別にいいですよ、レオの事なんて…
生かして惨めにしといたほうが、
この方が楽しい…
欲しい物(エヴァン)も手に入ったし、エヴァンも人間を皆殺しにすると言ってますしね、
こんなに愉快な事はないですよ、
クックック…
…それに、保険もかけてますし、
どの道良しとしますか…
クックックッ…」
そう言い、ハーバーは満足そうな顔をし、二人の事に対して嘲笑うと、ハーバーは手を前に広げ、レオに対して魔法を唱えた。
ギュイン!!
「!!?」
ハーバーがレオに向けて魔法を唱えると、突然レオの体が光り、音をたて揺れだした。
レオはハーバーに向かって、
「!?
…何をした?」
と、レオがハーバーの方を向き、ハーバーに問い詰めると、ハーバーはレオに向かって、
「見逃してあげますよ、レオ。
貴方は私達(吸血鬼)にとって、能力も技能も驚異ではない…
ただ一つ驚異だったのは、エヴァンに対しての繋がりの絆に関しての事だったが…
……
…………
………フッ!」
ハーバーはこの時、下を向いてうずくまっているエヴァンを見て、フッと嘲笑い、レオをけなした。
そしてレオに向かって、
「…どうやら、問題なさそうですね」
と言い、ハーバーはレオを見下した言い方をして、
「敗北を身に染めながら、惨めに無惨に生きていきなさい」
と言い、ハーバーはレオの顔を背け背中を向き、黒いフードをさっと翻した。
「エヴァン先生!」
レオは消える直前、もう一度エヴァンの顔を見た。
「…レオ」
その時のエヴァンの表情はレオの顔をジッと見て、鋭い目つきをしていた。
だが、ほんの消える直前エヴァンの顔はフッとレオに向かって笑みを浮かべた。
「えっ?」
レオはそのまさかのエヴァンの表情を見て驚き、
「何で?」
と疑問に思った。
その時のエヴァンの表情はまるで、レオに別れをつげるような顔をして、
今までありがとう…
君と一緒に過ごせてよかった。
たくさんの思い出をありがとう…
君の事はずっと忘れないよ…
これからも元気で…
と言うような表情をし、エヴァンは自分自身に対し、まるで自分の運命に逆らえないような歯痒さと悲しみをかみしめ、瞳を下におろし、そっと目を閉じ、レオを見送った。
「………!!!
先生!!!!!!」
レオはそんな表情を見て、エヴァンに向かって力いっぱい叫んだ。
だがレオの体は、ハーバーの魔法によって外に移動させられ、カルベロッカの場外のだいぶ遠いところの荒れ地に移動させられていた。
レオはこの時、右手を力いっぱい地面に叩きつけた。
そしてこの時、エヴァンが魔法で縛った鎖もいつの間にか崩れ落ち、消えて粉々に消え去っていた。
レオは思った。
滲み出る体から沸き起こる怒りと、彼の体の中で駆け巡る無念の思いの血がグルグルと駆け巡った。
そしてこの時ほどレオは、
力が欲しい…
余りにも自分に対して、力が全く足りなかった。
力を蓄え、どこか修行しなければ…
レオは右手を地面に押し付けながら体が震え、悔し涙を流しながら頭を地面に擦り付けた。
そしてレオはキッと顔を睨ませ、この時決意した。
先生を救う…
そしてにっくきハーバーをこの手で討つ!!
それにはまず、修行だ!
絶対に身に付け、力を手に入れてやる!
修行…修行…修行…
この時レオは、修行という言葉を繰り返していると、ある事が頭の中に甦り、気になる言葉が出てきた。
それは、エヴァンの心の中で話した会話、日本人の名前の相田コウという名の男の存在だった。
レオはこの時、エヴァンの口から、こんな事を思いだし、この男なら絶対に修行をついてもらったら、絶対に強くなれるぞと思った。それは、
「エヴァン先生と対等に戦う事ができて、実力は騎士団の中で№2…
おまけに独自の忍術の技法をもっており、優れた戦士だ」
レオはさっそくこの男の情報を調べるため、悔し涙をとめ、足を動かしはじめた。
そして自分の能力で、何かしら彼の遺品にふれ、彼とコンタクトを試みようと思った。
「よし!行くぞ!」
レオの表情からは悔し涙から希望の顔に変わり、心を前向きにし、心を弾ませた。
…そんなレオが足を一歩歩き始めた時、エヴァンは城の中の部屋でティファーと一緒にベットの所で療養していた。
そしてエヴァンはベットを椅子がわりにし、ティファーが眠っている横で、ただ黙って下を向き、無言でジッと鋭い目つきをしながら色々と考え事をしていた。
エヴァンが下を向き、心臓の回復の為に、ベットに座り療養していると、
エヴァンは自分の醜い手を見ながら、部屋に入る前、ハーバーと別れ際の会話の話が彼の頭の脳裏に流れた。
……
…………
「…クックックッ、嬉しいですよ、エヴァン。
私は貴方を手に入れられて…
貴方の心臓が治りましたらいろいろと計画の事についてお話したい事がありますので、それまでは各自待機でお願いします」
「…………」
それを聞いたエヴァンは、しばし下を向き無言になり、そしてキッと鋭い目つきをしながら、ハーバーに向かってエヴァンはこう言った。
それは、
「…別に私は、お前とは仲良くする気は断じてない。
お前の駒になりたくもないし…
それよりお前…
何故あのタイミングでティファーを解放したんだ?
自力でティファーが、お前の時空間魔法を破って出られたとはとうてい考えられない…
…お前、
ティファーを使って、一体何を考えているんだ?」
それを聞いたハーバーは顔をニヤかせ、エヴァンに向かって、
「…なに、いちおー念のためですが、貴方が勝手な行動をしない為に念には念をですね…
まあ、貴方も愛しの妻といれて、気分的にもいいかなっと思い、この時このタイミングで解放させて頂きました」
それを聞いたエヴァンは、少し間をあけ、ハーバーに向かって、
「…つまりティファーは、
私に対しての人質か…
私の動きを拘束し、思いのまま動かす為に…
…まあお前は、いざとなったら私を操り、無理矢理にでも計画に加担させようとするがな」
それを聞いたハーバーはクスッと笑い、エヴァンに対して、
「私はできれば貴方に積極的に望んで計画に参加して欲しいんですよ。
私は貴方を高く買ってる(評価)んです。
人間の中ではずば抜けて能力も高いし、頭もいいほうですしね…
ですから、貴方には積極的に参加をして頂けたいのですが…
…おっと、貴方はもう人間ではないですよね…
クックックッ…」
「……………」
エヴァンはハーバーの話を聞き、ギリッと顔を睨ませ、ハーバーを睨み付けハーバーに対してこう言った。それは、
「お前が笑っていられるのも今のうちだ。
お前の顔が苦悶に歪む顔を楽しみにしてるよ」
エヴァンがハーバーに対してそう言うと、ハーバーはエヴァンに向かって、
「…さあ、苦悶に顔を歪むのはどうでしょうね?
案外近いうちかもしれませんけど…」
「…………」
二人はにらみ合い、場が硬直し動かなくなった。
エヴァンはハーバーの顔をギリギリと睨み付け、
「話しは以上だ、出来ればお前と話をしたくない
私はティファーを連れて、部屋に戻る」
と言い、エヴァンはその場を去ろうとした。
「…待ちなさい、エヴァン」
「?」
エヴァンがその場を離れ、意識を失っているティファーを連れて部屋に戻ろうとすると、ハーバーはエヴァンの足をとめ、声をかけた。
そしてハーバーは、エヴァンが自分の心臓を押さえながらティファーを連れて部屋に戻ろうとするエヴァンに向かってこう話かけてきた。
それは、
「…貴方、人間の血は飲まないのですか?
心臓も破損している事もですし、飲んでおかないと、また衝動が襲い、大変な事になりますよ」
それを聞いたエヴァンは、ハーバーに向かって汗を垂らしながら苦虫が走ったような顔をして、
「私は人間の血には興味がないんだ。
あまり興味がなく、飲みたくはない…」
それを聞いたハーバーは、エヴァンの苦虫のような顔をしている表情を見て、ニヤッとして、
「…では貴方は一体、何に興味があるのですか?
まさか何も興味がないとは思いませんが…」
エヴァンはハーバーの言葉を聞き、両目を片方に寄せ、汗を垂らし、沈黙した。
…そう、この時エヴァンは嘘をついた。
本当は人間の血が欲しい。
頭では嫌がり、嫌悪感を抱いているが、彼の体が欲し全身がズキズキと痛み、今にでも喉から手が出そうなくらい体が悲鳴を浴びていていた。
ハーバーは、人間の血に興味がないと言っているエヴァンに向かって、
「…本当にいらないのですか?
体が欲しているんじゃないんじゃないですか?」
それを聞いたエヴァンは怒った声で、
「…いらん!
何度も言わせるな!
私は人間の血などいらない!」
と言い、ハーバーの言葉に対して怒鳴り付け、ティファーを連れて足を進めようとした。
そんな時、ハーバーはエヴァンに対して、別の提案をしてきた。
それは、ハーバーが隠し持っていたグラスにハーバーの血が入った入れ物を渡し、これを飲めと言ってきたのだ。
エヴァンはこの時、少し沈黙しながらそのグラスを受け取った。
そして、吸血衝動に襲われたくないと思い、そのグラスを一気飲みをした。
飲み終わった後、エヴァンは無言でハーバーにグラスを返した。
そしてエヴァンはティファーを抱き抱え、心臓を手に押さえながら自分達の部屋に戻った。
エヴァンは自分の部屋に戻り、自分の醜い手を見つめていると、
「いよいよ私も本格的に化け物だな…」
と、ボソッと小声で言い、自分の姿に嫌悪感を抱いていた。
そしてまた手を見ながら小声で、
「…これではレオに退かれる訳だ」
と言い、自分を卑下していた。
エヴァンは下を向きながらつぶやき、
「早く人間の姿に戻って、この状況を何とかしなければ…
だが、人間の姿に戻るには奴を倒すか、はたまた別の方法があるのかわからないが、現状私の力では奴を倒す事ができない…
奴に全てを握られ、支配されている状況だからな…
…はて、どうしたものか…」
エヴァンは下を向いて悩み、ベットの上で椅子がわりに使い、悩み、考え事をしていた。
そして、
「あまりにも不利な状況だ…」
と言い、瞳を下に向け、醜い手を見つめていた。
だが、そんな彼の考えと反比例するかのように、彼の吸血鬼の体は力が溢れていた。
そしてどこかエヴァンは、強い者と戦いたい、争いを好む性格も強調され、血に飢えてる面も内面で強調されていた。
ハーバーの目指す、争いのある世界…
エヴァンはどこか、その計画を頭では望んではいけないと思う彼だが、どこかかすかに戦いを欲し、心が望んでる面の顔もあり、複雑な心境でいていた。
「…………!!」
エヴァンは手を見つめながら落ち着かず、気分が安定せず、この時イライラしていた。
そして力が溢れるばかりの吸血鬼の体で、気持ちがコントロールしにくく、苛立ちを感じていた。
「…ぐっ…」
エヴァンはスッとその場をたち、手を顔に押さえながら無言で立った。
そしてティファーが気絶して寝ている事もあり、ティファーの様子を見て安心しているのか、
黙って横に置いてあった剣を持ち出し、エヴァンは部屋を出た。
エヴァンが黙って部屋を出た後、近くの荒野の外に出ていた。
そして溢れんばかりの魔力を開放する為、エヴァンは風の魔法と雷の魔法を同時に唱え、剣を上に向け魔法を高らかに唱えた。
この時、エヴァンの上空に大きな魔法円と、エヴァンの体の回りに激しく暴風の嵐が彼を中心に激しく風が包みこむ。
そしてもう一度魔法を唱え、彼が叫んだその時、
ドカアァーン!!!!!!!!!!
ピシャーン!!!!!!!!!!!!
「…フッフッフ」
この時ハーバーは別の部屋でチェスを指している時、エヴァンの雷の轟音を聞いて嘲笑い、フッと笑みを浮かべた。
そして独り言でエヴァンに向かって、
「やがて貴方は吸血鬼の力に溺れ、元の人間に戻りたいと思わなくなる…
そして徐々に人間の事を餌と思い、何の感情も抱くことなく、血の衝動に走るだろう…
…人間の気持ちを完璧に捨て去った時、貴方は…
……
…………先が楽しみです、
エヴァン。
……クックックックッ…」
そう言い、ハーバーはエヴァンに対して、彼の今後の流れについて期待を持ち、嘲笑った。
そしてもう一度エヴァンに向かって、
「楽しみです…」
と言い、盤の上にあるチェスを手で駒を持ち上げさしだした。
エヴァンが魔法を放った荒野には、辺り一面地面がえぐれ、火の海となっていた。
そして彼の目つきは鋭い眼光と化し、戦いを望み、争いを好む一匹の修羅の顔つきと化していた。