本心

文字数 8,928文字

「…先生」

レオはもう一度エヴァンに声をかけ、一緒に人間の身体に戻ろうと話をもちかけた。

だがエヴァンは、レオの呼び掛けに応じず、そしてレオに向かって意外な言葉をはなった。

それは、

「…出ていって下さい、レオ。

直ちに私の心から…」


「…え!?」

レオはエヴァンのその意外な言葉を聞いて戸惑い、驚愕した。

そしてレオは、エヴァンに向かって、


「…なんで?先生…?

一緒に人間の身体に戻りたくないんですか?」

と尋ね、レオはエヴァンに向かって言った。

するとエヴァンは、レオに向かって冷たい声で、

「私の事はもう構わないで下さい…

私は所詮、あなた達と生き方が違い、歩んできた道も違うのです。



私は魔法騎士団に在籍していた時、多くの魔物の命を殺めて生きてきました。

もちろん騎士団自体、それが仕事で、存在価値が魔物を討伐する為だけにできた組織でした。


でも私は自ら率先して魔物討伐の任務に着いていました。

任務に着いて毎回数百の魔物を残酷な方法で叩き斬っていました。




…楽しかったんです。

殺しが…


自分の磨きあげられた力がその場で生かされ、実戦的に実行できる。

そしてどんどん私はもっと力をつけていき、病みつきになり、殺しの快楽を求めていったのです。



人間同士の機会では、なかなかありませんでしたけどね…

クックック…」

「なっ!」

レオはそのエヴァンの言葉を聞いて驚き、驚愕した。
そして、レオはエヴァンに対して、

「…何言ってるの、先生?
俺、先生が言ってること、全く理解出来てないんだけど…


殺しが楽しい…?

なっ!?

嘘でしょ、先生…

先生に限ってそんな台詞、
俺は絶対、吐かないんだと思うけど…





…っ!

…ははっ!

わかりましたよ!先生…


またそいつ(子供)に心を操られ、言わされているんでしょう。

悪い奴ですね、そいつ…


そいつを倒して、俺が先生の心を解放します。


そうとしか思われません。





せっ、先生が、先生が…、

自らの意思でそんな事を言うなんて…

そんな馬鹿げた事…

ふっふっふ…


あっはっはっは…」


レオは目の前の現状が把握出来ず、戸惑い、受け入れたくなかった。


俺を今まで育ててくれた先生が…

殺しが楽しい?


馬鹿な、なんで先生がそんな事…

あり得ない、

あり得ないんですけれどもと、
何度もレオは自分の心の中で、違う、そんな事ないよねと繰り返されて、自問自答していた。


そんなレオを見て、エヴァンはずっとレオの顔を無言で見ていた。

そして冷たくあしらった声で、レオに向かって、

「…これが、私の本音の声ですよ」

と、レオに言い、エヴァンは、

「現実ですよ」

「…嘘だ、先生」

「ほんとですよ、レオ」

レオはエヴァンのその言葉を聞いて愕然とし、身体の力が抜け、地面に手がついた。

そしてレオはエヴァンに向かって、

「…なんで?

なんで急に考え方が心変わりしたのですか?先生…

俺と一緒に、元の身体に戻って、一緒にみんなを吸血鬼の支配から解き放って、先生と一緒にハーバーを倒すんじゃなかったんですか?」

レオは一生懸命エヴァンに向かい、話し合いを進めた。

だがエヴァンは、ただジッとレオの方を見て、無言で黙っていた。

レオはあの時、2人で泊まっていた宿の庭の会話をエヴァンに話した。



「でもだからこそこの生き残った命、人のために使いたい、守りたい、自分と同じ思いを二度とさせたくない、そう思い私は、魔法騎士になった。」

レオはエヴァンにむかって、


「…先生、確か俺にこの台詞を言いましたよね?

俺にむかって…




何故です?

何故いきなり違う答えが返ってきたのです?

これは先生の夢で、台詞ではなかったのですか?」


レオはエヴァンに問い詰め答えを迫った。

するとエヴァンはレオの問いに対しての意外な答えが返してきた。

それは、

「…確かに貴方にその台詞を伝えました。

力を人のために使い、守りたいと…

だがこの台詞は、私の、オリジナルの台詞ではないのです」

レオはエヴァンのそれを聞いて、

「えっ?

一体どうゆう事なんですか?先生」

と、聞き返し、レオはエヴァンに対し、答えを求めた。

するとエヴァンはある日本人の事を話だした。


その人物の名は、(相田(あいだ) コウ)


エヴァンとは騎士団時代に同期で、パートナーであり、

(無理矢理上層部がパートナーにさせた)
エヴァンとは真逆な性格をもち、明るく、破天荒な性格だった。

(因みにお酒をエヴァンに進め、彼をビール好きにさせた張本人…エヴァンはお酒は一切飲めなかった。16歳だったし…)


経歴は、日本から騎士団に派遣された忍者使いの者であり、実力はエヴァンと互角に戦え、実質No.2の地位をもつ。


そして彼は、ありとあらゆる日本独自の剣術や忍術に優れており、その技を駆使して多くの仲間を救った。

だが彼はエヴァンと共に任務中、敵の魔物の攻撃をうけ、最後はエヴァンと人質になっていた子供達の命を救い、戦場で華々しく散った。


以来、彼の夢は生きているエヴァンへと引き継がれるようになり、エヴァンはコウのその力を人の為に使う考え方に感化され、エヴァンはレオにコウの教えを伝え、エヴァンは今までコウの考え方に従い生きてきた。


だがここにきてエヴァンは、自分の本質を考え、思い悩んだ。

本当の自分って一体何を求めているんだろう?

何が一番自分の中で大切で生きているんだろうと悩み、

彼の身体が人間から吸血鬼になった事もあいまって、彼の一番望んでいる本能に従い、

結果、

レオと敵対する事になり、
彼は吸血鬼として生きる決意をしたのだ。

「…そう、私は、今までその日本人の生き方に感化され今まで生きてきました。

そしてその日本人自身も師を持っており、育ててもらった師をとても大事にし、その師から学んだ教えに従い彼は生きてきました。



私は最初理解できなかった。


何故自分の為にその力を使わず、他人の為に命をはるのだと…


でも彼が言うには、


悲しんでる顔の人達を見るより、うれしい顔をされたほうが気分がいいじゃない……

と、さりげに私に言ってきて、そしてそのまま彼は帰らぬ人になりました。



私は弟子を取るタイプでもない…

むしろあまり人間に興味がなく、孤独が好きで、独りが好きだ。

いや、弟子を取るなんておこがましい…

取れる器も持っていないし…


…でも彼に出会って、


…………

………………


……………………!!!」


この時エヴァンは右手をぎゅっと握り震わせ、下を向き、押し黙った。

彼の中で何か境界線があり、境目があるのだろう。


人間と吸血鬼の狭間…



コウの友としての思いと、

そして、彼の獣の欲望がある、自分自身の中の殺しの本性。


相対する二つの思いが彼を苦しめ悩ませる。



だがエヴァンは顔をあげ、そしてレオに向かって、溜め息をつきながら、


「…でも、もういいんです。

もういい…


私は悩むのを疲れました。

これから長い人生を贈るなか、私は自分自身の思いに忠実に生きていきたい。


例えそれが人の道に外れていたとしても、自分の欲望に添って生きていきたい。


私はもう、人間ではありません。

これからは好きにやらせて頂きますよ。

レオ…」

そう言い、エヴァンはレオに向かって、悪魔の笑みを浮かべながら嘲笑った。

レオはエヴァンの悪魔の笑みを見て、エヴァンに向かってこう言った。
それは、

「好きにする?

一体何をやらかすつもりなのですか、先生?


まさか先生…


ハーバーの計画に加担する気はないですよね?」

それを聞き、エヴァンは、レオに対してニヤッと笑みを浮かべ、

「…そうだとしたら、どうしますか?」

と、レオに向かってエヴァンは嘲笑った。

レオはエヴァンのそれを聞いて、

「何故、奴に加担するのですか!?

アイツは吸血鬼も人間も最終的に皆殺しにしようとしているんですよ!」

それを聞いたエヴァンは笑いながらレオに向かって、

「クックック…

私にとってはどっちが滅ぼうか関係がない事です。

要は生き残った方がこの世の強者。

奴が世に混乱を起こしてくれるなら私にとっては都合がいい…

混乱に乗じて憎しみを持った人間が出てきて、私はその人間と戦いたいのです。

戦って全力を出しきり、勝利を得たいのです。

弱いものが別に死んだってかまわない。

私にとっては興味などありませんけどね…

フッフッフ…」

レオは変わり果て性格が冷たくなった師を見て、絶句し、言葉を失った。

そしてレオはエヴァンに向かって、

「俺がそんな事させません。

例え貴方の手足や体を一本引きちぎってでも計画に加担させない。


貴方には罪を重ねて欲しくない…


俺を今まで一人で育んでくれた、


育ての親でもあるから…」

レオはそう言い、エヴァンに向かって言葉を投げ掛けた。

するとその言葉を聞いた不気味な子供が、

「レオ君、あのね~」
と横やりを入れてきた。

だがこの時エヴァンは、その子供に向かって左手で、

いい、ここは私が…と手をかざし、そしてエヴァンはこの時黙って下を向いて、


「…レオ、

君は相手の力量も図る事ができないのかい?


君が私を止める?


…ふざけるのも、





いい加減にしろおぉー!!!!!!!!!!!!」



そう言い、エヴァンはレオに対して怒鳴り付けると、すごい形相をした顔で、エヴァンはレオを地面に押し倒した。

そして左手で爪を大きく立て、手を鋭いナイフのように変形させ、そのままレオの顔の横で、手を地面に貫通させた。


ドカアァーン!!!!!!!!!

物凄い音をたて、地面が割れる音。

そしてビキビキと音をたて、レオは倒れながらも横目でエヴァンの攻撃を見て唖然とし、呆然と意識がなった。

エヴァンは地面に倒れてるレオの顔を見て、顔を近づけ睨み付けた。

そしてエヴァンはレオに向かって、顔を強張らせながら首筋をペロッとなめ、そしてそのままレオの耳元でこう言った。
それは、

「解りましたか?

貴方の命など奪うのは簡単なんです、レオ…


貴方(人間)は私に(吸血鬼)に勝てない。

力もスピードも、到底私達には及びません。

ましてや武器を持った私に貴方は一体どうやって勝つつもりですか?


今度は私は武器を持つ…

武器を持って、貴方を痛め付ける…




今の実力では貴方は到底、私には勝てません。

返り討ちに遭うのが目に見えてますからね…」

そう言い、エヴァンは地面から左手を引っこ抜き、スッと不気味な子供の元に戻り、レオに背を向き、再度出ていけと言った。


レオはこの時思った。


…今、彼の元を離れたら永久に心が通えない。

永久に離れ、話し合いが出来ずに、彼を本当に修羅の道に誘う。

何としても俺が止めなければ…

何としても俺がやめさせなければ…

例え実力が違えど、


例え彼と刺し違えても、


俺が止め、やめさせなければ…


レオは倒れた体をスッと起き上がらせて、エヴァンの方を見た。

エヴァンはレオに、

「…何故立つのです?

私の事は、もうほおっておいていいでしょ…」

と言い、レオを冷たくあしらい、言いはなった。


レオはそれを聞いてエヴァンに向かって、

「…そうはいきません。

貴方は俺の師です。

師であり、大切な人です。

そんな大切な人が、誤った道をみすみす見逃すなんて俺は出来ません。

だからお願いです、

先生。

俺と一緒に…」

そう言いレオは、再度エヴァンに諦めずに呼び掛けると、横から不気味な子供が口を出してきた。

「君もしつこいね~、レオ。



君、

エヴァンに振られちゃってるよ。

エヴァンが早く出ていけっていうんだから、
ここは男らしく潔くよく、出ていってあげないと…」

それを聞いたレオは、不気味な子供に怒って、

「黙れ!



お前達が先生を変えたんだ!

お前達に会わなければ先生は吸血鬼にならず、今まで通り皆で楽しく暮らせていたんだ!

それを先生の人生を変えやがって!



俺は絶対にお前達を許せない!」

それを聞いた不気味な子供は、笑いながらレオに反論して、

「ほぉ~、言ってくれますね。

確かに吸血鬼の身体に変えたのは我々ですか、元々彼はこちら側の人間ですよ。


…だって、

人間だった彼が、人を殺し争いたいという発想が思いつくなんて、そんなの人間の中では間違いなく欠陥品ですよね。


むしろその考えは我々、魔族の考え方です。

彼は人の皮を被って生きてましたが、本質的にはこちら側の人間だったわけですよ…」

「なんだとー!」

レオは不気味な子供に向かって怒り、叫び倒した。

それを横目で見てたエヴァンはレオに向かって、

「もういい!」

と、大声で怒鳴り、
そしてレオに向かってボソッと、

「…君と世界が違うんだ」

と、小声で言い、

レオに背を向けながらエヴァンは、

「…それにね、レオ。

私は喉が渇いてもう限界なんだ。

だからこのまま今から私がする行為を見ないで出ていって欲しい…」

と、エヴァンはレオにお願いをし、出ていってもらうように頼んだ。

それを聞いたレオは、

「えっ?

今、なんて言ったのですか?
エヴァン先生…?」

とレオはエヴァンに今言ったことを聞き返し、レオはエヴァンの様子を伺った。

するとエヴァンは、その話が終わった瞬間、体がガタガタと震え、汗が大量に流れ出した。

そして、

「血…血…血…」

と、うわ言のように繰り返し、
低い唸り声をあげながら、いきなり目の前にいた不気味な子供に向かって体をグイッと引っ張り出し、不気味な子供があの時牙で傷つけた血を舐め、エヴァンはむさぶるようにその子供の舌を舐めた。

…クチャ、クチャ、クチャ

そして血が足りず物足りなかったのか、やがてエヴァンは、二本の鋭い牙がギシギシと生え、獲物を喰らうように不気味な子供の首を噛み、本能のままに、血をガツガツと飲んだ。

レオはそのエヴァンの衝撃の姿を見て思った。


口ではエヴァンに対して、早く人間に戻りましょうとか、先生は先生だと、吸血鬼になってもエヴァンはエヴァンだとその時思っていたが、

いざその彼の吸血行為を目の前にしてこの時レオは、


どうしても人間と吸血鬼が越えられない深い壁を感じた。



「あっ、あっ…」
レオはそのエヴァンの光景を見て言葉を失い、足の膝をペタンとついた。


「…………」

下を向きながら、レオは思った。



…捕食者(吸血鬼)と獲物(人間)。


それは二つの種族が存在する中で、両者は決して相容れない存在。

互いに交わる事はなく、片方が喰らい、命を喰らう。

そして吸血鬼になれば、いくら理性がつき、頭脳をコントロールできたとしても、その血の渇望には決して逆らえないと、この時レオは、エヴァンの光景を見て、イヤほどわかった。


「…………」

下を向き、愕然としているレオを見て、不気味な子供は勝利を確信したのか、エヴァンに血を吸われながらも、


「クックック…、わかったでしょ、レオ。

いくら綺麗事を並べても、私達(吸血鬼)とお前達は(人間)は根本的に違うのです。


この理性を奇跡的に保ち、頭のいい知性を持ったエヴァンでも、こうした吸血本能に支配されるのです。」

そう言い、レオに向かって言葉を話す不気味な子供だが、今度はエヴァンの方を見て、エヴァンに向かって、

「…ああ、エヴァン。

君なら血を吸われても大歓迎だよ。

こうしてレオを諦めさせ、私達は君を手にはいった。

私達は数年も前から君を見てきた。

君が子供の時からずっと…


貴方はもう、レオ達(人間)の世界に戻れない。

私達(吸血鬼)の世界で永遠に生き、人間に仇をなす存在として生きていくのだ。

クックック…」

そう言い、血を喰らいついてるエヴァンに語りかけると、不気味な子供は急に大人の姿になり、黒いマントを翻しエヴァンの体をマントで包んだ。

そしてエヴァンの髪を優しく手で囲いこむように、そっと手を添え、まるで子供をあやすように優しくぎゅっと体を包んだ。


エヴァンはこの時、男の血を吸いながら涙がツゥーと下に流れた。


もう、自分は後戻りが出来ない。

レオに拒絶され、自分は本当の化け物になった。

血の衝動には逆らえず、コントロールが出来ない。


私は…、


私は…、




私は………



この時エヴァンは、心の中にあったものが、何かが壊れ、何かが崩壊し、


彼の心は奈落の深い闇へと、ガタガタと堕ちていった。



エヴァンの涙を流している姿を見たレオは、ハッとし、エヴァンの名前を呼び、エヴァンに近寄ろうとした。


だがエヴァンの体を覆っている黒いマントの男は、レオがエヴァンに近寄ろうとすると、

「出ていけ…」

と恐ろしい声を出して言ってきた。


そして男はレオに対して威嚇をし、低い恐ろしい声でレオに向かって、

「ここは、お前が付け入る場所ではない…


出ていけ…


出ていけ……





………


…出ていきやがれ!!



レオォォ~!!!!!!!!!!」


と男は、大声をレオに向かって叫び、レオはエヴァンの心から強制的に追い出され、レオはハーバーと殴りあいをしているシーンの現実世界にまで、意識を戻された。

フッ…


「…っは!」

レオは意識が現実世界に戻され、ハーバーと殴りあいをしているシーンに戻った。

ハーバーは意識がこちらに戻ったレオを見て、

「何か面白い物が見えましたか、レオ?」


「………」

無言になるレオ。


「…クックック、エヴァンに対して、貴方が付け入る隙間がないでしょ、レオ…」

「………」

はたまた、ハーバーの言葉に言い返せず、無言になるレオ。


そう言いハーバーは黙っているレオに対して冷たく言い放ち、レオに向かってハーバーは、

「エヴァンの心の中に入った行為が無駄な行為でしたね、クックック…」

と、諦めさせるような事を言って、レオの心を折りにかかろうとした。


「………くっ!」

悔しがりながら、ハーバーに向かって無言でひたすら殴り続けるレオ。


この時、どうやらハーバーは、エヴァンの心の中にいるマントの男と連携がとれるようであり、レオがエヴァンの心の中に入って何をしたのかも、すべて情報が入っていた。


悔しがる表情をしているレオに向かってハーバーは、尚且つレオに輪をかけ、わからせるように、


「わかったでしょ、レオ。

貴方がその身で、直で彼の吸血行為を見て、人間と吸血鬼は決して相容れない存在だと…」

「………」

下を向き、言い返せないレオ。

そんなハーバーは、レオに向かって勝利宣言をするかのように勝ち誇った声で、


「我々の勝ちです。レオ…

彼は二度と貴方達(人間)に対して心を開きません。

なにせ、弟子の貴方に拒絶され、行き場を失ったのですから…」


それを聞いたレオは、ハーバーに向かって殴りながら、

「そっ、そんな事はない!

俺は、先生は…!」

と言い、シドロモドロになりながらも、ハーバーに向かってレオは反論した。


それを聞いたハーバーは、ジーとレオの顔を見つめ、レオに向かって、低い声で、



「…ならば、もうすぐ意識が戻り、目が覚める本人(エヴァン)に、直接聞いてみるがいい…

そしてその言葉を耳にし、現実を思い知るがいい…」

と、レオに向かってハーバーは言った。

それを聞いたレオは、ハーバーに向かって殴りながら、

「だ…黙れ!


黙れ!!

黙れぇ~!!!!!」

と、声を翻し、大声でハーバーに向かって叫んだ。


レオがハーバーに攻撃をし、威嚇し、殴っていると、

その時、エヴァンが意識を取り戻し、目がパチッと開いた。


「……せっ、先生…」

レオは目を覚ましたエヴァンの姿を見て、ハーバーに向けての攻撃の手をとめ、エヴァンの方を見た。


だがそのエヴァンの表情は、機嫌が悪そうな顔をし、黒い瞳で、レオの顔をジッと見ていた。


そして心臓を自分の手で突き刺した時、口から血が出ていた自分の血を手で隠し、手で隠しながら味わうように血を舐め、舌で舐めた。


彼は、ゆっくりと体をユラッと揺らしながら、体を起き上がらしてきた。


そして無言でエヴァンはレオの方に向いて、怖い顔をしながら、レオの方にゆっくりと近づいてきた。


レオはこの時、体が動かす事が出来なかった。

何故なら、エヴァンの表情を見て、あきらかに怒っている顔をしているからだ。

そしてエヴァンは動かないレオの側まで寄ってきて、レオの顔に近寄り、耳元でひっそりとレオに向かってエヴァンはこう言ってきた。
それは、


「…君には興味がないよ、レオ。

貴方じゃ私を救えない。

即行、この場から立ち去り、二度と私の前から現れないで下さい」


それを聞いたレオはショックで、体がガクッと力が抜け、戦意喪失となり、足の膝をつき、下を向き涙目になった。

そしてエヴァンはレオに背を向け、ハーバーの横に、立ち位置につき、冷たい表情で遠くを見ていた。
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