第2話

文字数 7,728文字

 マール、マール、マール、マール、マール、マール……徳念が、冷たい闇にねっとりと混ざっていく……包まったところで薄い掛け布団では寒さを防げるはずもなく、自分は床に直置きのマットレスの上で縮こまっていた。何度となく一連の出来事がよみがえり、そのたびに腹がちりちりして一向に寝付けない……糞尿を汚物処理室のごみ箱に捨て、バケツの中を柄付きブラシで洗って……床を雑巾で水拭きし、隙間なくトイレシートを敷いて、それから……左太ももにかゆみを覚え、自分は病衣の上からぼりぼりかいた。
 ダニも、いるのか……――
 まったく、なんてところだ……以前、ネットで小耳に挟んだところでは、裕福な患者は高級ホテル並みの施設で至れり尽くせりらしい。天と地ほどの隔たりに、自分は引き裂かれそうだった。
 部屋の奥から、うなされるかのような息遣い……やたらと癇に障り、そちらを背に丸まってもいら立ちはじりじりと募る一方……たまらず、のっそりと起き上がってあぐらをかき、自分はもわっとした息を吐いた。微熱でぼやけ、だるさが全身に詰まって、とりわけ両肩から背中、腰にかけてずぅんとしている……まるで蝋人形になりかけているみたいだ。少しずつ溶けていく、青ざめた人形……手探りでベッドライトをつけると、ポリエステル製のひだと出入り口側の壁に囲まれた、畳一畳半ほどの狭苦しい空間が照らし出される。ベッドライトのある枕側の壁には呼出ボタン、スピーカーにマイクロホン……その横の床頭台にはテレビがあり、食事天板下の引き出しには支給品の歯ブラシ、T字カミソリにプラスチックコップ、業務用のちり紙パック……タオル掛けには、安物のフェイスタオルが掛けられている。自治会長によれば、日用品はデイルームのタブレット端末で注文できるそうだが……ふと見上げると、鈍くぎらつくカーテンレールが弧を描いている。それに目を細め、自分はタオル掛けのフェイスタオルから病衣へと視線を移した。フェイスタオルでは短くて無理だが、この病衣のパンツなら……死神の鎌にも似たぎらつきにかけ、裾を結んで作ったストライプ柄の輪が頚動脈と椎骨動脈を塞ぐのを思い浮かべて、ぶすぶすと笑みがくすぶる。
 その気になれば、いつでも葬ることができる……――
 他人は笑うだろうが、自分はこの命が絶えれば何もかも消えると確信していた。この主体が消えてなお、世界が存在するはずないのだから……――
 ががっ、と窒息から逃れたようないびきが聞こえる。自分は舌打ちをこらえ、ベッドライトで青い両手を見た。終わった後に石けんで念入りに洗ったつもりだが、どうも臭う気がする。これから毎日、汚物の始末だなんて……そんな趣味はないが、ルックスがモデルやアイドル並だったら、尿をなめ、便を味わう物好きだっているだろう。だが、こいつは……とても女とは言えないし、実は男だったとしても驚きはしない。それ以前に人間かどうか……あの四つん這いは、まるで野良犬か野良猫……ノラめ……――
 重だるい体を動かして両手両膝をつき、膝を立てて……のろっと立ち上がった自分は少しよろめいた。寝床に入る前よりも鈍っているような……黒のビニールサンダルを履き、間仕切りカーテンを開けたところで貼り紙が目に飛び込んでくる。四隅をセロテープでとめられた、壁腕立て伏せと壁スクワットのイラスト入りリハビリメニュー……自主的にこれをやれ、ということらしい。自分は張り紙脇の、おそらくは通気の悪さからぽつぽつかびた壁紙に両手をつき、腕立て伏せを始めた。一……二……回数やセット数の記載はないので、とりあえず四十回どうにか――最後の方は息が上がり、腕もへばってしまったが――休まずにこなした。運動不足気味の生活だったことは確かだが、たかが壁腕立て伏せがこんな有様とは……はぁ、と息を吐くと、部屋に染み付いた悪臭やら汗と混じった自身の体臭やらで胸が悪くなった。奥がうごめき、うめきで薄暗がりにひびを入れる。早くここから出るためにも、病に打ち勝たなければ……悪化したら、自分だってあいつみたいにならないとも限らない……吹き出物状の壁紙をにらみ、汗ばんだ頭を左右に振って、自分は洗面用具一式を手に片引き戸を、奥よりも隣室を気にしてそっと開け閉めした。
 陰鬱な斉唱に流され、たどり着いた共同洗面所は冷えきっていた。身を縮めてセラミックの洗面台の前に立つと、角型鏡が上半身をさっくり切り取る。青ざめた肌の、なりたてのゾンビがそこにいた。直視できず、ふらふらと視線が排水溝に落ちる……こんな肌の色にすえた体臭、微熱に蝕まれた頭、のろくさした動き、何よりも周囲に感染させるかもしれないリスク……マール、マール、マール……通路からリピートが流れ込んでくる。とにかく、普通の人間に戻る努力をしなければ……いつでもすべてを終わりにできるとはいえ、電源スイッチを切るようにはいかないのだから……蛇口からは水しか出ず、きんとしたそれで顔を洗い、フェイスタオルで拭いて、鏡像と目を合わさずにひげを剃る。洗面台の端には、充電器にセットされたバリカンがある。伸びたらセルフカット、ということだろう。T字カミソリを水洗いし、通路に出たところで右手の方――デイルームの暗がりを隔ててすぐの部屋からウーパーが、ロバ先生の袖を手綱よろしく引っ張ってくる。なぜかウォッチは鳴っていない。とっさに洗面所に引っ込むと、よたよたした足取りはこちらに近付いてきた。
 どこに……どこに、行くんだ……――
 おしっこ、でてる……きたない、くさい……――
 戸惑うしわがれ声をのろのろ引く、疲れの染み付いた片言……通り過ぎてからこっそりのぞくと、ふたりのみすぼらしく曲がった背中が見えた。ウーパーの、ウォッチ側の手は148号室と同じバケツを提げ、折りたたまれたトイレシートみたいなものが上衣のポケットからのぞいている。漏らすようになった老人が使う、尿取りパッドか……ようやく北東の角を左折して見えなくなったところで自分は通路に戻り、デイルームの薄闇を横切って西通路から148号室に向かった。
 ウーパーは、ロバ先生担当なのか……――
 それでも、自分よりはましだろう……あんな奴の世話に比べたら……と、薄目だった照明がまぶたを上げ、ぱあっとフロアが明るくなった。そしてスピーカーから、午前六時、起床時間、とだるそうな声が告げる。そして隊列を組み、足並みそろえた行進曲風の音楽が寝床を踏みつけんばかりに響いて、フロアはもぞもぞ動き始めた。オリエンテーションで聞いたところだと、体操やら朝礼やらをやるらしいが……北西の奥まった行き止まりに戻り、新入りの自分は様子をうかがった。各部屋から出てきた青い顔が挨拶どころか視線すら合わせず、互いに距離を取りながら共同洗面所、あるいは共同トイレの方へのったり流れていく……程度の差こそあれ、誰もが重たげな動きで前のめりだったり足を引きずっていたり、自治会長みたいに骨格がゆがんでいたりしている。そのうちあくびしながらジャイ公とミッチーが出てきたので、自分は行き止まりの方を向いて気付かないふりをした。
 やがて洗顔などを済ませた順に戻ってきて、音楽に整えられるかのようにそれぞれの部屋の前で等間隔に並んでいく……ジャイ公とミッチーも147号室前に立つ。照明ではっきりとした肌の青みは他より、自分よりも薄く、それだけ健全に近いことがうかがえた。そして、南館側からあたふたと戻ってきたウーパーがその横で小さくなる。
「朝から辛気臭えなぁ、ブぅスッ!」
 ジャイ公が嘲り、手を叩いてミッチーがじゃかじゃか笑う。のっぺり顔はうつむき、腹の前で腕を交差させていた。こんな連中に目をつけられてはかなわない……影を薄くしていると、駆り立てていたミュージックがボリュームダウン……ウーパーと自分の間は空いており、自身の部屋を振り返ったジャイ公が撃鉄を起こすような舌打ちをした。
「おい、ミッチー。引き出すぞ」
 周りにイベント告知する調子で言い、待ってましたという顔のミッチーと147号室に入って……まもなくアルトっぽい悲鳴が上がり、ジャイ公がやせた足首をつかんでずるずる引きずり出してくる。無様に乱れるストライプ柄の裾、白髪のちらつくぼさぼさボブヘアをにやにや見下ろすミッチー……ウーパーが、よろっとどいたところにその中年は放り出された。角を抜いた雄鹿っぽい、どうやら自分たちとは異なるルーツの顔立ちは青みが濃く、みじめにゆがんであふれ出しそうになっていた。
「怠けようとするな、オカマ!」唾を吐きかけるように言い、ジャイ公は息をついた。「みんな、頑張っているんだぞっ!」
 ミッチーが手を叩き、出っ歯あらわに笑う。ウーパーや他の被収容者は青い無表情をそらし、自分は、どっ、どっ、どっ、という心拍に揺さぶられていた。ウォッチに985とある、オカマと蔑まれた鹿(ディア)はばらけたパーツを試行錯誤しながら組み直すように立ち上がったが、他よりも目立って青ざめた顔、どろっとした目から崩れてしまいそうだった。横目ではらはら見ていた自分は、その985番ことディアがノラの世話を投げ出した張本人では、と思い至った。昨夜、ジャイ公がオカマ云々と口にしていたじゃないか……頭の奥がくすぶり、むうっと膨れ上がっていく……なるほど、結構具合が悪いらしいが、こっちだって病人……いい迷惑なんだ……横目を尖らせていると、スピーカーから軽やかなイントロダクションが号令をかけてきた。
『それでは、今朝も元気よくリハビリ体操を始めましょう!』
 はつらつとした青年の声が響き、ジャイ公ら被収容者の列が引き締まったので、自分もあたふたと姿勢を正した。
『まずは両腕を大きく上げ、背筋をまっすぐ伸ばしましょう!』
 かけ声とメロディに発破をかけられ、自分は横をちらちら見ながら両腕を高く上げ、背筋を伸ばしてから下ろした。それをもう一度繰り返し、次は腕を横に振って足の曲げ伸ばし……その次は……内容としては大したことないが、ゾンビの今は五体に鉛がたまったようで、次第に息切れしてくるのがなんとも情けなかった。横ではディアが貧血のバランストイよろしくふらふらし、ウーパーはやや前屈みで息を切らしていたが、その隣のミッチー、そしてジャイ公は、健常者と比べればのろいもののしっかりとした上げ下げ、曲げ伸ばしを見せつけている。今し方ディアを引きずり出したのだって、ゾンビでなかったとしても自分には一苦労だろう……そんなことを考えていると、奥まった行き止まりそばのここからは見えないが、北通路を東からこちらに近付いてくる声がある。
『――番、――点』……『――番、――点』……『――番、――点』……――
 ローポリの3Dキャラをイメージさせる、血の通わない合成音声……やがて角から現れる、真っ黒な防護服姿……その指導員は、プラスチックバッグに入ったタブレットのカメラをジャイ公に向けた。
『1945番、86点』
 高得点にどら猫面の頬が緩む。カメラで撮影した映像から運動機能を評価し、点数化するアプリ……オリエンテーションで説明された、毎朝のモニタリング……――
「……筋力に関節可動域、柔軟性、バランス能力、どれもいいカンジじゃん」親しげな、くぐもった声。「肌の青みも薄くなってるしね。この調子で頑張りなよ、ジャイ公」
 にかっと笑うジャイ公は、黒ずくめに体をすりすりしそうだった。指導員のごく自然な呼び方からして、ジャイ公というあだ名は指導局につけられたのかもしれない。ミッチーもまずまずの評価を得て、体操しながらへらへらへつらう。
「985番! ひっどい点数だなぁ!」
 ウーパーの次にディアをモニタリングし、指導員が大仰にあきれる。前後左右にぐらんぐらんし、倒れ込むかひっくり返るかという有様は、白目むきかけのサンドバッグと重なった。
「真面目にやれよ、青んぼっ!」フロアに響く、スモークシールド越しの怒声。「やる気が足りないんじゃないのか! 給料から引かれた税金が、お前なんかのために使われているかと思うとムカついてしょうがないっ!」
 はあ、はあ、あえぎ、汗を垂らす蒼白なディア……ジャイ公とミッチーはにたにたし、ウーパーは見て見ぬ、というより見る余裕もなさそうなうつむき顔だった。散々なじった指導員は嫌みったらしいため息をつき、こちらにカメラレンズを転じた。そのときになって自分は、ノラを引っ張り出しておくべきだったのだろうかと内心青くなった。
「点数はまずまず。ま、発症間もない新入りだしね」
 油断せず努力するように、と指導員はテンプレのコメントをし、離れていったので自分は胸をなで下ろした。体操はだんだんと躍動的になり、ぶんぶん腕を振り、体を大きく回してぴょんぴょん跳んだので、自分はそれらをこなすことで一杯になり、熱い息をはずませながら汗臭くなった。横ではディアがうずくまり、ぜえ、ぜえ、と肩を上下させている。山場を超えてアクションは緩やかになり、大きく胸をそらしての深呼吸を繰り返させる。
『お疲れ様でした! 今日も一日頑張っていきましょう!』
 朗らかに、ガッツポーズが目に浮かぶ意気込みで締めくくられ、マール、マール、マール……徳念が再び、夜間よりもボリュームを上げてくる。乱れた呼吸を整え、自分は額の汗を拭った。こんな体操でも、ゾンビにはなかなかハード……と、休む間もなく病衣姿が流れ出したので、自分はうずくまったままのディアをよけ、ウーパーの後からずるずる続いた。
 左手首のウォッチをばらばらに揺らし、足をのろのろ引きずるゾンビたちは、『がんばろう自分』と微笑むポスター、ご立派な社章大写しの大型モニターの前、デイルームの西側に、前、横とも水平に上げた手がぶつからない間隔で黙々と縦列に並んでいき、自分も最後列の端に立った。エレベーターホールのある東側では、南館の被収容者が同様に並んでいく。南館の肌は、概して北館よりも青みが薄い。外見だけで判断はできないだろうが、それだけ症状が軽い、少なくとも見た目としては普通の人間に近い、ということ……肉付きもまずまずで、同じ病衣ながら小ぎれいな印象だった。その最前列で、持ち込みらしいベージュ地のギンガムチェック柄病衣の黒髪ロング女性に目がとまる。その横には、右に傾いだ自治会長の寒色半纏姿もあった。北館、南館とも二十代から四、五十代がほとんどで、男性より女性、中高年より若者が多く、ぽかっとした半開きの口がやたらと多い。合わせて百名ほどが離れて整列し、それらのすえた体臭の立ちこめるデイルームは、膨らんだ胃袋みたいに広く感じられた。マール、マール、マール……エレベーターで上がってきたヘッドが社章に一礼し、その前で高圧的に腕組みをする。そして見分けのつかない指導員がデイルームの西と東、被収容者の縦列を左右から挟む位置につく。指導員側への感染リスク軽減もあるのだろうが、被収容者は皆、直視するのは無礼とばかりに軽く頭を下げ、目を伏せている。その段になってようやく、ディアがよろよろと自分の横に近付いてきた。
「皆さん、おはようございます!」
 腕組みのまま、スポーツチームのキャプテンをほうふつとさせるヘッドの挨拶――一同のストライプ柄は、いっそうまっすぐになった。
 ――おはようございます!
 各々微妙にずれていたが、うつむき加減の者たちの声はほぼ重なっていて、初めての自分と、立っているのもしんどそうなディアだけがずれてしまった。施設長からビデオメッセージが届いています、とヘッドがリモコンを操作し、モニターにあの宇宙人似の老人がでかでかと映ると一同はお辞儀をし、今度はどうにか一緒にできて自分はほっとした。昨夜のビデオとは違うアロハシャツの施設長は、リハビリに励んで病に打ち勝ち、一日も早く社会復帰してください、と使い回しとしか思えないスピーチを手短に述べ、画面は社章に戻った。それに一礼したヘッドはリモコン片手にこちらへ向き直り、青い肌の並びをスモークの曲面で黒ずませた。
「皆さんの闘病生活は、貴重な税金によって支えられています。そのことを忘れないように」
 病衣姿は皆、こうべを垂れて動かなかった。ヘッドの訓示に続いて、あちら側に立つ指導員から事務連絡――事前申込制の面会が許可された被収容者のナンバーが呼ばれ、面会予定時刻には部屋にいるようにと告げられる。そして今度はこっち側の、おそらく先ほどモニタリングで北館を回った指導員から、身の回りの整理整頓と清潔な環境の保持を心がけるように、と注意があった。それからその指導員は、こっちの方を向き――
「985番!」
 いきなり呼ばれ、こわばったディアは、指示されるまま列の端から離れた。よろめくその後ろ姿は、見ているこっちまでふらつきそうだった。
「体操をやり直してもらおうかな。真面目にやらなかったペナルティとして」
 捕獲用の罠にかかってしまったかのようにうろたえ、固まるディア……マール、マール、マール……ストライプ柄の分子構造からいら立ちが、ジャイ公、ミッチーはもちろんのこと、うつむいたウーパーからもわき、デイルームに立ちこめていく……自分もまた、早く寝床に戻りたい、横になりたい、とディアに上目遣いを細めた。外光の入らない、壁の端や天井の隅でよどんだ閉塞が、その一点をぎりぎりと締め上げていく。
「早くしろっ!」ヘッドがしびれを切らす。「いつまでも朝礼が終わらないぞ!」
 ディアはがくがくと、壊れかけのロボットさながらに動き出した。両腕を高く上げ……背筋を伸ばして、下ろす……腕を横に振って……足の曲げ、伸ばし……のっけから苦しげな呼吸が、きびきびやれ、ちゃんとやれ、云々と指導を投げつけられるたびにひどくなっていく。ジャイ公たち、そして並びのあちこちから漏れる、失笑、冷笑……すえた人いきれのせいか視界の曇った自分は、さっさと終わらせてくれ、とかみ締めた。腕組みのヘッドと指導員、ゾンビたちににらまれるディアはやっとのことで締めの深呼吸を終え、糸を切られたマリオネットよろしくその場にうずくまった。
「それでは――」ヘッドが列に向き直り、右こぶしを突き上げる「本日も頑張ろう!」
 頑張ろう!――頑張ろう!――頑張ろう!――かけ声に被収容者たちが続く。それが終わると一同、ありがとうございます、と頭を下げたので自分も慌てて倣った。ヘッドが朝礼の終了を告げ、血の気の乏しい原子は無言でばらけていく……ようやく終わった……肩の力を抜いた自分は、うずくまったままのディアを避けて重い足を引きずった。と、その前にミッチーが立ち塞がる。
「十時に、掲示板前に集合だぞ」
 え、と戸惑う自分を残し、ミッチーはジャイ公を追っていった。何か、あるのだろうか……微熱で頭は溶けかけており、疲れもあって考えることすら億劫だった。どうでもいい……とにかく今は休みたい……マール、マール、マール……欲求もろとも自分は、北西の行き止まりへと流されていった。

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