第15話
文字数 2,125文字
教室を出て職員室に向かう際、私は知り合いのクラスメイトに会わないように気をつけながら歩いていった。もし誰かにこんな場面を見られたら、寿命が何年も縮 んでしまう。ただでさえ、ノートを見せる前で緊張しているのに、ここでさらに心臓に余計な負担を掛けたくない。
幸運にも、誰にも会わずに職員室へ無事に到着できた。さて、あとはこれを一ノ瀬先生に見せるだけだ。どんなことを言われるのかと思うと、心の中で非常に緊張している。私は勢いよく職員室のドアを開けて、明るく挨拶した。
「失礼します!」
部屋を見渡すと、奥のほうに一ノ瀬先生がいて、お茶を飲みながら他の先生と談笑 していた。先生は私を見つけて「霞、よく来たね!」と嬉しそうに言った。先生に呼ばれて近寄ると、こちらの用件を察したようで、手を差し出してくれた。
意を決して、私は先生にノートを手渡した。
「先生、このノートをお願いします」と言うと、先生は微笑みながら「待っていたよ」と言わんばかりの表情を見せてくれた。先生は私に席につくように促 し、ついにノートを読み始めた。
静寂が周囲を包み込んだ。先生は内容に見入っていた。その瞬間、私の世界が周りに広がったように感じた。およそ五分ほど経っただろうか。これは長丁場 になりそうな気がしたので、私は何も言わずに、先生をじっと見つめていた。
さらに十分ほど過ぎた後、ついに先生が口を開いた。
「霞、素晴らしい出来栄えだ! 初めての挑戦とは思えないほど素晴らしい、感動しすぎて上手く表現できないが、この創作をぜひ続けてほしい。君ならこれを職業にできると思うよ!」
先生は、私が望んでいた言葉をかけてくれた。「この内容で仕事ができる」という言葉は、最高の誉め言葉だった。それは今後プロとして進む大きな一歩だ。具体的な職業はまだ決まっていないが、私の創作活動が実を結んだことは確かだった。
「ありがとうございます、先生。この創作活動を引き続き頑張っていきます。進学するかはまだ決めていませんが、もしその道が開けたら、挑戦してみたいと思っています」
私は「失礼します……」と一言残して、職員室を後にした。先生は最後まで微笑んでくれた。
私は感傷的な気持ちに包まれながらも急いで教室に戻り、待っていた理彩に真っ先に話しかけた。
「理彩、やったよ。私の課外活動が一ノ瀬先生に認めてもらえたんだ。最後まで応援してくれてありがとう!」
理彩はその言葉を耳にして、まるで自分のことのように喜び、目じりに涙をいっぱい浮かべていた。
「そうだね、霞。本当におめでとう。この日のために一生懸命努力してきたんだからね。ねえ、それで一ノ瀬先生は何て言ってたの?」
私は一ノ瀬先生から伝えられたことを理彩に話した。それは、彼女が言っていた通り、これまで創作に専念してきた努力が報 われた瞬間だった。私と理彩は共に喜び、ともに称 え合った。それは、この活動が決して私一人のものではなかったことを改めて実感した。
「霞、それはすごい! つまり、プロの道に進むよう勧 められたってこと? 霞の取り組みがそれほど高度なものだったなんて信じられないよ。ぜひ、今度その自慢のノートを見せてもらえないかな?」
「へへ、全然かまわないよ。そうだ、また一緒にドーナツを食べながら、お互いの活動を称賛 し合おうか? 理彩も合唱部、頑張っているんでしょ?」
「当然だよ、霞。努力しているのは霞だけじゃない。みんなが頑張っている。この地球上で前に進もうとしているのは霞だけじゃないんだよ」
「それは、そうだよね」
理彩の一言が、私の目を覚ました。一生懸命頑張っていたのは、私だけではない。皆それぞれ同じように努力していて、それぞれの道を進んでいるのだ。その言葉を聞いたとき、私は少し恥ずかしく感じた。理彩の顔を見ることができなかった。心の内を隠そうとしていたが、おそらく理彩には見透 かされていたのだろう。
「ありがとう、理彩。なんだか目が覚めた感じがするよ。さあ、今日は一緒に帰ろう。いつもの喫茶店で美味しいお茶を楽しもう」
「うん!」
理彩はとても嬉しそうだった。その瞬間の私の感動は、言葉では到底伝えられないものだった。この経験を踏まえて、これからも一層努力しようと思った。私の課外活動はこれで一区切りとなり、終わりを迎えた。あとは自分自身の努力で頑張るだけだ。私は心の中で、一ノ瀬先生や理彩、そして私をこれまで支えてくれた両親とクラスメイトに深く感謝した。
教室で私と理彩の会話を聞いていたクラスメイトたちは、全部聞こえているよ……とあきれながらも、何だか称賛してくれているみたいだった。言うまでもなく、私の内なる顔は再び真っ赤になっていた。私と理彩は急いで教室を抜け出した。
学校の建物から出て、外の新鮮な空気を吸いながら、青空の下で理彩と笑い合ったのはこれが初めてだった。もしかしたら、私は心のどこかで冷めていたのかもしれない。そんな自分をさらに客観的に見つめるもう一人の自分がいて……。おそらく、これまで自分は一人で生きていると思っていたのだろう。恥ずかしい限りだ。これからは人との繋 がりをもっと大切にしていこうと思う。これからはもっと……。
幸運にも、誰にも会わずに職員室へ無事に到着できた。さて、あとはこれを一ノ瀬先生に見せるだけだ。どんなことを言われるのかと思うと、心の中で非常に緊張している。私は勢いよく職員室のドアを開けて、明るく挨拶した。
「失礼します!」
部屋を見渡すと、奥のほうに一ノ瀬先生がいて、お茶を飲みながら他の先生と
意を決して、私は先生にノートを手渡した。
「先生、このノートをお願いします」と言うと、先生は微笑みながら「待っていたよ」と言わんばかりの表情を見せてくれた。先生は私に席につくように
静寂が周囲を包み込んだ。先生は内容に見入っていた。その瞬間、私の世界が周りに広がったように感じた。およそ五分ほど経っただろうか。これは
さらに十分ほど過ぎた後、ついに先生が口を開いた。
「霞、素晴らしい出来栄えだ! 初めての挑戦とは思えないほど素晴らしい、感動しすぎて上手く表現できないが、この創作をぜひ続けてほしい。君ならこれを職業にできると思うよ!」
先生は、私が望んでいた言葉をかけてくれた。「この内容で仕事ができる」という言葉は、最高の誉め言葉だった。それは今後プロとして進む大きな一歩だ。具体的な職業はまだ決まっていないが、私の創作活動が実を結んだことは確かだった。
「ありがとうございます、先生。この創作活動を引き続き頑張っていきます。進学するかはまだ決めていませんが、もしその道が開けたら、挑戦してみたいと思っています」
私は「失礼します……」と一言残して、職員室を後にした。先生は最後まで微笑んでくれた。
私は感傷的な気持ちに包まれながらも急いで教室に戻り、待っていた理彩に真っ先に話しかけた。
「理彩、やったよ。私の課外活動が一ノ瀬先生に認めてもらえたんだ。最後まで応援してくれてありがとう!」
理彩はその言葉を耳にして、まるで自分のことのように喜び、目じりに涙をいっぱい浮かべていた。
「そうだね、霞。本当におめでとう。この日のために一生懸命努力してきたんだからね。ねえ、それで一ノ瀬先生は何て言ってたの?」
私は一ノ瀬先生から伝えられたことを理彩に話した。それは、彼女が言っていた通り、これまで創作に専念してきた努力が
「霞、それはすごい! つまり、プロの道に進むよう
「へへ、全然かまわないよ。そうだ、また一緒にドーナツを食べながら、お互いの活動を
「当然だよ、霞。努力しているのは霞だけじゃない。みんなが頑張っている。この地球上で前に進もうとしているのは霞だけじゃないんだよ」
「それは、そうだよね」
理彩の一言が、私の目を覚ました。一生懸命頑張っていたのは、私だけではない。皆それぞれ同じように努力していて、それぞれの道を進んでいるのだ。その言葉を聞いたとき、私は少し恥ずかしく感じた。理彩の顔を見ることができなかった。心の内を隠そうとしていたが、おそらく理彩には
「ありがとう、理彩。なんだか目が覚めた感じがするよ。さあ、今日は一緒に帰ろう。いつもの喫茶店で美味しいお茶を楽しもう」
「うん!」
理彩はとても嬉しそうだった。その瞬間の私の感動は、言葉では到底伝えられないものだった。この経験を踏まえて、これからも一層努力しようと思った。私の課外活動はこれで一区切りとなり、終わりを迎えた。あとは自分自身の努力で頑張るだけだ。私は心の中で、一ノ瀬先生や理彩、そして私をこれまで支えてくれた両親とクラスメイトに深く感謝した。
教室で私と理彩の会話を聞いていたクラスメイトたちは、全部聞こえているよ……とあきれながらも、何だか称賛してくれているみたいだった。言うまでもなく、私の内なる顔は再び真っ赤になっていた。私と理彩は急いで教室を抜け出した。
学校の建物から出て、外の新鮮な空気を吸いながら、青空の下で理彩と笑い合ったのはこれが初めてだった。もしかしたら、私は心のどこかで冷めていたのかもしれない。そんな自分をさらに客観的に見つめるもう一人の自分がいて……。おそらく、これまで自分は一人で生きていると思っていたのだろう。恥ずかしい限りだ。これからは人との