文字数 7,727文字

 喉が裂けるような絶叫が響き渡った。あぁあ、と嘆息したシャノンは、噛まれた手を一振りしながら立ち上がる。その頃には傷口は既に消えており、ぱりぱりと乾いた血を払い落とした。
 足元で転げ回るエルネスタは、苦し気に喉を引っ掻き、細く長く絶叫を垂れ流している。
「悪い、グレタ。無傷で捕まえたかったんだけど」
 いいえ、と頭を振って、フィデルに庇われていた彼女は悲し気にため息を落とした。
 多くの血親(エルターン)血族(ファミーリエ)を喰い殺してきた古い血(ゲシュペンスト)でも、流石にシャノンの抱える魔素は毒に等しかったらしい。そこそこ奪われたから、それも当然と言えるか。
「欲掻くからこんなことになるんだよ。舐める程度ならまだ平気だっただろうに」
「経験者でなければ、そんなことは判らないだろう」
 無茶を言うな、と眉をひそめるフィデルに窘められて、軽く肩を竦めてみせる。
 妹を捜しているのだ、とマルガレーテが言ったのは、数百年前のことだった。大戦の後始末をフィデルに押し付け、気侭にあちこち渡り歩いていた頃である。
 彼女が管理する世界図書館(ゲシヒテ)は、戦火に巻き込まれることもなく、堂々と建っていた。そもそも、そこへ辿り着ける者もあまりないのだ、と。彼女は笑ったけれど。
 暫く滞在させてもらう間に、あらゆる文献へ目を通した。序でに魔術に通じる彼女に師事して、暫く学んでいたこともある。基本的に膨大な体内魔素を運用した大呪文しか使えないシャノンに、その細かい調整法を指南してくれたのも彼女だった。
 そんな日々を過ごしていたある日、ふと彼女が零したのだ。
 曾てあった、マーガレット・スタイナーという少女と家族の話。歳の離れた妹が、長じてのちマルガレーテの血子(ゲフォルゲ)を喰い殺し、吸血鬼(ヴァンピーア)へ変じてしまった話を。
 その時、彼女に聞いた話を鵜呑みにするつもりはない。再び旅生活に戻った折に、古い血に殺された吸血鬼たちについての噂は、あちこちで耳にしたから。
 結局、それぞれに信じる真があって、徹底的にすれ違っていた姉妹というだけだ。そんなことは、そこいらに幾らでも転がっている。
 悲鳴も消えて口の端から泡を噴き、痙攣を始めたエルネスタを最後に一瞥して、シャノンは踵を返した。ほったらかしたままの被害者たちの方へ足を向けた、その背後に別の気配が現れて、慌てて振り返る。
 ふわり、と。一体何処から現れたのか。飛び下りてきた風情でエルネスタの傍らに立ったのは、見なれぬ凡庸な娘だった。けれどその身には、軍服のような衣装を纏っている。
「……だから、あなたは甘いと言ったのに」
 抑揚のない声がぽつりと呟いて、彼女はシャノンを振り向いた。そうして、軍人風に敬礼をする。
「初めまして、オズワルド・クロウリー殿。この度は、大変失礼をしました」
「……へぇ? 君の上司が黒幕ってわけ」
「語弊がありますが、我が君が保護していた者ではありますので」
 哀れですね、と冷めた目でエルネスタを見下ろす。その姿を見つめていたフィデルが、ぽつりと呟いた。
「……宗主国の紋」
 ぴくり、と眉を動かして、彼女はフィデルへ会釈してみせた。次の瞬間、その姿は掻き消えて、ぶわりと大きく炎があがる。
「しまった!」
 ぎゃぁ、と断末魔が響き渡って、エルネスタが業火に包まれた。その火勢の中、何かがひらりと翻って、速やかに燃え尽きていく。慌ててシャノンが消火したものの、焼かれた身体は炭化して、ざらりとその姿を崩した。
「くそ、ラスは何してんだよ!」
「無理を言ってはなりません、シャノンさん」
 あれは形代でしょう、と消し炭の傍らに進み出たマルガレーテは、膝を着いてそうっと妹だったモノに触れた。
「おそらく、実体は別の場所。下手をすれば、入国すらしていません。あれなら、魔素生物の体液で簡単に作れます。量産も可能でしょう」
「あちらは無駄足を踏まされたということか。氏族(クラン)には悪いことをしたな」
 ふ、とため息をついて、フィデルは軽く顔をしかめる。
「それにしても、燃えてしまったのは残念だ。何となく、宗主国の紋が見えた気がしたんだが」
「若殿様がそう視たのでしたら、そうでしょうね。竜族(ドラゴン)にまやかしは効きづらいですから」
「む、判断を過ったな。とはいえ、こっちを氏族に押し付けるのも気が引けてなぁ」
 それも含めて我らの完敗ですね、とマルガレーテが執り成して、手を払いながら立ち上がる。そうしてシャノンの前へ進み出ると。軽く頬に触れた。
「あなたは、宗主が絡むと冷静さを欠きがちですね。気をつけねば、付け入る隙を与えるだけですよ」
「……わかってる」
 重い嘆息を長々と落として、シャノンは気を取り直した風情で三和土に転がる被害者たちを振り返る。
「取り敢えず、こっちの始末が先だな。氏族に手伝ってもらおう」
 上着のポケットから取り出した呼び子を銜えて、長く吹き鳴らす。間もなく、影から数匹の人狼(ライカンスロープ)が飛び出してきた。その中の一匹が、シャノンの元へ何やら銜えてやってくる。
 差し出されたそれを受け取ったのはマルガレーテで、当たりのようですよ、とフィデルへそれを掲げて見せた。人形に切り抜かれた紙片には、半欠けになった紋が透かしで入れられている。
「おそらく、専用に作らせている料紙でしょう。手許にそれしかないのか、頓着していないのか」
「気にしちゃいないんだろう。これは? ラスはどうした」
 フィデルの問いに振り向いた狼は、「見回りに」と応じる。
「運河を渡る定期船の上まで追い詰めたんですが、それに変わってしまいまして。人形たちも暗示が解けたようですし、終わったんだろうと察したんですが、念のため」
「一通り巡ったら解散して構わないと伝えてくれ。深追いするには及ばない」
「畏まりました」
 会釈した狼が再び影の中へ滑り込むのと同時に、被害者の様子を見ていた狼たちが方々へ散る。影を介してあちこちへ抜けられるのは便利だが、所構わず変化を解けないのが人狼の難点と言えるだろう。主に、衣服の問題で。
「早々と片付いて良かった、と言っておくべきなんだろうな?」
「欲を掻いても良いことはないさ。我々も後始末して、帰るとしようか。ところで、ウルメルスバッハ嬢」
 なんでしょう、と小首を傾げた彼女に、フィデルは形代を指した。
「それはもしかして、私にも出来るのかな?」
「それは、勿論。若殿様なら優秀な形代になるでしょうね。お教えしましょうか?」
「それは有難い、お願いします」
 どうするんだよそんなの、と訝しく半眼を向けたシャノンに、果たして彼はあっけらかんと答えた。
「いや、視察に使えたら便利だな、と。これで、なかなか多忙でね」
「シャノンさんも覚えます? あなたの場合、血液では供給過多となるので、だ液の方が最適でしょうね」
 どうしようかなぁ、と眉根を寄せた時、台車を引いた小型の蒸気車で乗り付けた氏族が倉庫前へ到着する。その姿は工業地帯で働く工夫そのもので、どうやら作業中の事故か何かに仕立ててしまうつもりらしい。
 彼らを手伝うフィデルを他所に、マルガレーテを手伝って古い血の残骸を残らず掻き集めたシャノンは、大切そうに壺を抱えた彼女を見遣って、首を傾げた。
「それ、どうするの?」
「大地へ、お返ししなくてはなりませんから。枯れた土地へ撒きます」
 世界から魔素は消えたと言われているが、失われたのは大気に満ちたモノであって、実は大地にはゆったりと貯えられているという。不毛の土地は魔素が枯れた場所であり、豊かな実りに恵まれた肥沃な土地ほど、魔素は貯えられている。そこから芽吹く物にも、それらはほんのりと帯びており、食することで取り込むことも出来るのだと。
「人間では、吸収されずに排出されてしまうんですけどね。個々に含まれているのは微量ですので、害はないのでしょう」
「あー、なるほど。妖精族の中で生き残ったのは、そういうのを摂取できる奴らなんだ?」
「ですから、死した魔素生物は大地へお返しするのですよ。我らの細胞一つ一つに、魔素は宿っていますから」
 マルガレーテの講議を聞いていると、人間というのは、とことん世界の異分子のような気がしてくる。それはそもそも、彼女自身が人間を見限った所為でもあるのだろう。
 仕方がなかった、と彼女は言うが、少しも望まなかったのかといえば、必ずしもそうとは限らないのだろう。そこは、エルネスタが吐き捨てた「己の欲望のために」という言葉に、集約しているような気がする。
 彼女を否定する気は毛頭ないが、そこだけは、マルガレーテとは相容れない部分だ。
 氏族たちが被害者たちを荷台へ積み込んで出発するのを待って、彼らは倉庫前で別れた。一人適当に歩き出したシャノンは、すいすいと工業地帯を抜けて住宅地へ向かう。
 その途中、鞄を抱えて長屋から出てきたグウェンドリンと出会した。彼女はエッカート家の使用人(メイド)が言った通りの姿に白衣を羽織って、一人で立っている。
「あれ、シャナ? どうしたの、お仕事は終わった?」
「いや、ちょっと野暮用で。グウェンは往診?」
「うん、あちこちね」
 やっと終わった、と疲れを滲ませた表情で吐息する。お疲れさん、と苦笑しながら手を差し出すと、彼女は察した様子で頭を振った。
「有難う、大丈夫」
 安易に他人へ商売道具を預けようとしないところも、彼女らしいと言えるか。あっさり引き下がったシャノンは、それじゃぁ、と行く先を指した。
「一緒に帰ろうか。途中でパン屋に寄らせて。やむを得ずアッカー嬢に残り押し付けちゃったから、詫びの品を仕入れに」
 その言い種に軽く笑い声を立てたグウェンドリンは、「いいよ」と頷いて歩き出した。

  ◇◆◇

 片膝を着き叩頭する彼女の報告に、御簾の向こう側に座する人影は嘆息したようだった。
 あの古い血を拾ったのは、建国間もない頃だったと聞く。その身の上に同情した宗主は、古い血が自由に出入りすることを許可した。そうして長い間、宗主の元へ侍っていたのだ。多少は、心の慰めになっていたと思うが。
 正直に言えば、彼女はあれに辟易していたのだ。己が化物であることを失念して、同じ尺度で彼女を計りたがる。彼女自身は宗主付きになってまだ数年といったところなのに、あれにとっては全て同じ、スクワイアでしかないのだろう。
「それで、あなたに怪我はないのね?」
「セレステ様から賜りました、形代を用いましたので」
 如何いたしましょう、と問えば、御簾の向こうで沈黙が横たわる。おそらく、言いたいことを飲み込んでいるのだろう。本当ならば、すぐにでも飛び出して行きたいのだろうに。
 結局、労りの言葉を賜って、彼女は謁見の間を後にした。
 足音が響く壮麗な宮殿は、かの偉大なる救い主様に相応しくあるよう、美しい白亜で作り上げられてる。隅々まで磨きあげられたそれらは、何処かよそよそしく、寒々しい。
 天来教が立ち上げられた当時は、エルフ族がその後見に立っていたと伝えられる。彼らは救い主様の聖なる力を広く民に流布するよう尽力し、やがて何処かへ去ったのだと。
 そんな御目出度い言い伝えを信じているのは、無垢な信者くらいだろう。
 救い主様は奴等に子飼いにされていたに過ぎず、その末路は知れていた。魔素の失われたこの世界で、あれらが再び台頭するには、あの控えめで自己主張の出来ない救い主様が必要だったのだ。
 何より救い主様は、癒しの術しか使えない。
 その身に膨大な魔素を抱えながら、それを運用する術がないのだ。そんな救い主様では、あの狡猾なエルフたちに対抗なぞ出来るはずもない。
 だから、救い主様の身を案じた幾人かの人間が決起し、その魔手から救い出したのだ。そうして彼らの手によって、宗主国ファーニヴァルは建国された。
 以来数百年、祖先の功績が認められ、代々スクワイアの末娘は宗主付護衛官の任を授かっている。
 この事実は、当の宗主も知らないだろう。彼女は枢機卿たちの言葉に頷いて、既に亡い姉様たちへ、折に触れて書簡を認めるのだ。先代の宗主付護衛官は、その心苦しさに耐えきれず、逃げるようにして離職した。追放処分になったと聞いたが、おそらく生きてはいないだろう。それほど近しい位置に、宗主付護衛官は置かれている。
 ヒトビトには救いが必要なのだ、と。
 枢機卿たちは口を揃える。そのための貴い犠牲だとでも言いたいのだろう。己の腹黒さを押し隠して、何とも御苦労なことだ。
 清濁合わせ持たねばならぬのが宗主付護衛官なのだから、彼らをとやかく言う気はないけれど。
 白亜の宮殿を抜け、整えられた庭園を抜けた先、間もなく鬱蒼とした森が現れる。そこは曾てエルフたちが過ごした場所であり、枢機卿たちはけして近付かない場所だ。その地に眠る彼らの怨嗟が、己を絡め取るとでも思っているのだろう。
 そもそも、枢機卿たちでは惑わされて抜けることも出来まい。
 定められた道順で森を抜け、開けた場所に出る。そこは、スクワイア家の女たちにしか伝わらない秘密の場所だ。鮮やかな陽射しの下には色とりどりの花が咲き乱れ、白一色の面白みのない宮殿とは雰囲気を異ならせている。
 そのさなかに建つささやかな一軒家が、宗主付護衛官のもう一つの職場だ。
 裏口から小さな台所へ入り、お茶の用意をしていると、ばたばたと賑やかな足音が近付いてくる。
「セレス。お静かに」
 振り返りもせず、ぴしゃりと叱りつけると、ぱたりと足音が途絶えた。
「ごめんなさい、だって早くお話しが聞きたかったんだもの」
 華やかに弾んだ幼げな声が応じて、ぎゅうっと彼女の背中に抱き着く。初めて出会った時は、彼女の方が小さかった。けれど今は、見上げられてしまっている。
 それが、ほんの少しだけ切ない。
「あなたが無事で良かったわ、メル」
「勿体無いお言葉です」
 形代とはいえ、返されてしまえば無傷でいられない。今回ばかりは、運が良かったと言えるだろう。危うかったのは、あのシャフツベリ氏族の氏族長(チーフテン)。よくも帰ってこられたものだと、未だに思う。
「ねぇ、オルグレンはどんな所? 聞かせてくれるでしょう?」
「そうですね、お茶にしながらお話します」
 本当に聞きたいのは違うことなのでしょう? と尋ねれば、彼女はほわりと頬を染める。そのさまを微笑ましく思いながら、彼女は内心で嘆息した。
 どうしてあの男は、あれほどセレステを嫌うのだろう。何も知らない小娘とシャフツベリの氏族長は嘲笑ったが、宗主国には建国以前の出来事について、何も残されていないのだ。スクワイアがセレステと邂逅したのも、大戦が終結した後のこと。
 セレステは、あの男のことを「優しい人」としか語らない。
 居場所はわかった。出来ることならば会わせてやりたいが、それはきっと叶わない。あの男の周りには厄介な者が揃っているし、何よりあの男がセレステを傷つけかねない。
 死ぬことはないとしても、それだけは許せなかった。

  ◇◆◇

 お疲れさん、と見慣れた姿が店の入口に現れて、マーシャルはホッと胸を撫で下ろした。どうやら、今日の営業も恙無く終えられそうである。
「お疲れ様です、店主(マスター)
「悪かったな、支度任せちまって。問題はないかい?」
「大丈夫です。ですが、どうぞ確認を」
 促して厨房へ入ると、疲れた様子でラッセルはどかりと丸椅子へ座る。そうして、深々と嘆息した。
「逃がした。無念だ」
「おや。氏族長殿が珍しい」
「形代使ってやがったんだよ。今時、久し振りに見たわ、あれ」
 おまけに、ほぼ実体と大差ない精度の代物だったと聞いて、マーシャルは意外そうに目を瞬かせる。
「それは凄いですね、見破れなかったんですか」
「これが滅法強くて、最初は気付かなかった。多少劣化してるにしても、本体は相当の腕前だろう。宗主付きは毎回、凄腕揃いだなぁ」
 やはりですか、と相槌を打つと、ラッセルは渋い顔で頷く。
 現在、ウェルテと宗主国に国交はない。ウェルテが大戦以前の古時代信仰を国教としているため、天来教を認めていないのだ。一応、信仰の自由は謳われているものの、王室を敬愛している民草が、天来教を信仰することも少ない。
 何より、天来教は人間による、人間のための宗教だ。表向きには魔素生物の一切を認めておらず、天来教に弾圧された魔素生物も多くある。
 実の所ウェルテは、宗主国に対抗するモノたちの共同体として、建国された側面もあるのだ。大体、宗教戦争と称してあらゆるものを弾圧し、搾取し尽くした序でに領土を広げようとする、その浅ましさが気に喰わない。
 シャフツベリ氏族単体としても、前氏族長を屠られた怨みがある。
 前氏族長によって人狼化した者の殆どは、かの大戦において孤児となり、拾われた者だ。成人し、そのままヒトとして生きることを選択して一人立ちした者も、人狼となり従うことを選択した者も、それぞれが父と慕っていた。マーシャル自身もそのくちだ。
「どうやら、肝心の獲物も殺られちまったらしい。こりゃ、シャナに怒鳴られるな」
「仕方ありませんよ、あれは東国の、相当古い術ですから。店主が責められるなら、みすみす殺させたシャノンさんにだって責任はあります」
 ぴしゃりと断じると、ラッセルは軽く眉を持ち上げて、苦笑を浮かべた。
「……おまえは、しれっと怖いこと言うなぁ」
 万能だったら群れる意味なんてないでしょう、と更にしれっと畳み掛けるマーシャルに、わかったわかった、と言いたげにラッセルは手をひらひらさせた。
「それはさておき、仕事に取りかかるかね。マーシュ、悪いがちょっとだけ残業してくれ」
「畏まりました」
 折り目正しく敬礼して、マーシャルは踵を返した。店頭に戻って従業員たちへ指示を出しながら、頭の片隅で思案する。
 おそらく、今夜彼らが集まることはないだろう。顔を合わせるとしたら、アデライン殿下たちが王都へ戻った後。その頃なら、シャノンの頭も冷えていると思われた。
 マーシャルとしては、シャノンに恩はあれども、第一に優先すべきは氏族長なのである。理不尽には、断固抗議する所存だ。勿論、何事もなければそれでよし。
 助け合うのは大切だが、馴れ合ってはならない、と。
 前氏族長より教育された身としては、きちんと線引いておきたいと思う。いつまでも良好な隣人であるためには大切なことだ。
 フェイムさん、と見習いに声を掛けられて振り返る。現在のシャフツベリ氏族は前氏族長の遺志を継いで、同じように孤児たちを養育している。この酒場(タバーン)はその受け皿の一つだ。
 彼らが将来どんな選択をし、どんな大人になるのか。今から楽しみである。
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