第18話:不景気風と東日本大震災

文字数 1,723文字

 そのため政府は。景気てこ入れへ7.2兆円の財政出動を伴う経済対策の実施を決めたが、日銀に対しても量的緩和を含めた追加金融政策を求める動きが強まりそうだ。こうして2009年が、終了して2010年を迎えた。日本航空が、2010年1月19日、会社更生法の適用を東京地裁に申請、経営破綻。負債額は約2兆3千億円と事業会社では過去最大。

 京セラ創業者の稲盛和夫氏を会長に迎え、政府が出資する企業再生支援機構の下で再建を目指している。事業規模を3分の2に圧縮するとし、内外45路線からの撤退やグループで約1万6千人の人員削減など抜本改革に着手。パイロットや客室乗務員の退職数は目標に届かず、最大200人を整理解雇。更生計画は債権放棄に応じた銀行団などの合意を得て11月末に確定。

支援機構は公的資金3500億円を出資した。11年3月末に更生手続きを終結し、12年中の再上場を目指す。宮崎県で家畜伝染病の口蹄疫「こうていえき」が、国内で10年ぶりに発生、猛威を振るった。4月20日に感染牛が初めて確認され、ウイルスを大量に排出する豚にも感染、県東部の川南町を中心に急拡大した。国は家畜への初のワクチン接種でウイルスを抑制、ブランド牛の種牛を含む牛豚約29万頭が殺処分された。

 東国原英夫知事は非常事態を宣言。イベントの自粛や立ち入り制限は大分など隣県にも広がった。そのため、宮崎の子牛をブランド牛に育てている全国の畜産農家にも影響が出た。宮崎県が口蹄疫の終息宣言を出したのは、発生から約4カ月後の8月27日。政府は10月、日本の「清浄国」復帰を国際機関に申請した。

 欧州16カ国で構成されるユーロ圏では、財政赤字急拡大に見舞われたギリシャが5月、アイルランドも11月に欧州連合「EU」や国際通貨基金「IMF」などの緊急融資を仰いだ。その後も信用不安は拭い「ぬぐい」去れず、ポルトガルなど南欧諸国への波及が懸念された。金融危機をきっかけに財政が悪化した一部ユーロ圏諸国では、国債利回りが急上昇。

 その中でも財政赤字統計の大幅修正を繰り返したギリシャと銀行危機に陥ったアイルランドが市場の信頼を失い支援要請に追い込まれた。危機への対応をめぐり各国の足並みの乱れも明らかになり欧州単一通貨ユーロは円や米ドルなど主要通貨に対して急落。やがて、2011年となり、初詣も終わり櫛田の家出も静けさを取り戻した。しかし、ここは、高尾山の麓で、冬の朝の寒さは、身に染みる。そして、く暖かい春が来ないかと待った。

 そんな3月11日14時46分、宮城県沖で国内観測史上最大のマグニチュード9の巨大地震が発生、3時半前後には大津波が次々と沿岸部を襲った。宮城、岩手、福島の3県を中心に死者は約1万5800人、行方不明者は約3500人に上った。東京電力福島第1原発では電源が止まり、原子炉は冷却機能を喪失。核燃料が溶け、1~3号機は炉心溶融「メルトダウン」した。1、3、4号機は水素爆発により原子炉建屋が大破。

 放射性物質が大量に放出される最悪の事態に陥った。国土地理院によると、青森から千葉までの6県の浸水面積は561平方キロ。津波はすさまじいエネルギーで家屋や港湾、工場施設などを破壊。政府の試算では、地震・津波による住宅などの直接的被害は16兆9千億円に達する。ピーク時には約47万人が避難し、国内外から支援の手が差し伸べられた。

 原発事故に見舞われた福島県では警戒区域「半径20キロ圏」への立ち入りが制限されたほか、各地で除染作業が行われた。放射性物質に汚染された農産物が関東などでも見つかるなど、農林水産・畜産業も大打撃を被った。政府・東電は「冷温停止状態」を宣言する見通しだが、廃炉までは、遠く長いと思われた。

 そんな中、菅直人首相は6月2日の民主党代議士会で、東日本大震災や東京電力福島第1原発事故に「一定のめど」が付いた段階で「若い世代に責任を引き継いでほしい」と述べ、対応に見通しが立った段階で辞任する意向を表明した。これを受け、自民党などが提出した内閣不信任決議案は否決されたが、首相が直後の記者会見で具体的な辞任時期を明確にしなかったため民主党内は、再び混乱した。
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