プロローグ ー世界観の紹介ー

文字数 1,293文字

 とある恒星系。人類の文明が高度に発達した惑星の周囲に、衛星要塞都市ユニオノヴァが建設された。

 若き天才科学者の疑問、「今の人類が持つ可能な限りの知識と技術の粋を尽くしたなら、限界はどこにあるのか」。この問いが端を発し、彼は科学と技術の理想郷を思い描いた。国籍、宗教、人種、ジェンダー、貧富の差、国益、紛争、差別、迫害から解放された研究開発環境。このビジョンに多くの科学者や技術者が賛同し結社ユニオノヴァが設立された。この動きは、大富豪、投資家、宇宙開発事業を手がける大企業をも惹きつけた。豊富な研究開発資金を得た彼らは、惑星規模の新しい連合体ユニオノヴァを結成し、その地位を確立していった。

 やがて、衛星要塞都市ユニオノヴァ構想が立ち上がり、国際的な連合組織は対立よりも容認を選択した。絶対的な科学の力と民間からの潤沢な資本を手にした組織に対抗するよりも、その存在を認めることで得られる利益が大きいと判断したのだ。この国際的な組織が下した決定とユニオノヴァの構想は、後に人類絶滅の危機を救うことにつながる。

 結社が設立されて以降、連合体となったことで科学技術は飛躍的に向上し、人間と共に働くアンドロイドや、人とアンドロイドの中間的存在ネウロノイドが発明された。衛星要塞都市開発計画が立ち上がり、建設が始まる頃には、地上と宇宙空間で活動する騎士団も創設された、彼らが身につけるユニヴェルスーツが開発され、彼らの作業効率が飛躍的に向上した。そして、彼らの活躍により、衛星要塞都市の建設は急激に加速され、50年後には衛星要塞都市ユニオノヴァが完成。二つの自然衛星と三つの人工衛星から構成され、人が移住できる環境が整った。惑星最高峰の学術・教育機関アカデミアが創設された。

 衛星要塞都市が本格的に稼働し始めて数年後、メテオフレアクライシスが発生。地上は壊滅的な被害を受ける。死者数の詳細は確認されていないが、世界の人口は短期間に30分の1以下にまで減少したと言われる。

 復興の計画と実行は、クライシスの影響をほぼ受けなかったユニオノヴァに託された。資金や人員は地上に存在したすべての国を再建するには到底足りず、生き残った人々を集める拠点をいくつか設置する案が採用された。その拠点を町として開発し、生活基盤を安定させ、必要に応じて拡張していくことが地上の復興事業と位置付けられた。

 少人数で多くの現場をこなす必要性に対応すべく、救援、復旧作業を直接現場で行う騎士たちには、通常ユニオノヴァ居住者に施される遺伝子アップデートの技術を応用した特殊な遺伝子アップデートが施されるようになった。集中力、判断力、処理能力、持久力、耐久力、瞬発力、五感の鋭敏化が追求され、技術は革新的な進歩を遂げ、それと同時に騎士の能力は飛躍的に向上した。

 そして…クライシス発生から約300年。地上の復興拠点とされた5つの拠点の中心地が充実しユニオノヴァ同程度の生活レベルに達し、周辺地域には中規模の都市もでき始め、人口の回復傾向が目に見えて安定した頃。天才科学者が描いた理想郷は、大きな転換点に差し掛かろうとしていた。

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