第6話 「休職、療養。」

文字数 509文字

 翌朝、僕は良さげな心療内科を調べて予約を取った。それから母の大学に連絡し、先に僕が事情を説明してから母に電話を替わった。心理学部というだけあって、よく理解してくれた。

 心療内科の初診は僕も母と一緒に診察室へ入り、医者と3人で話した。次からは母と主治医が2人きりで話し、僕は受付で待った。

 以前より頻度は減ってきたが、その後も母の手を握りながら寝かしつけていた。

 母は喫茶店で本を読んだり、自然のあるところに出かけたり、温泉に行ったりして療養した。貯金があり休職手当も出たので、生活費は問題ないらしい。

 僕も放課後や休日は母に付き合った。責任感の強い母なので、初めは休職することに罪悪感を覚えていたが、「今の母さんは休むことが仕事だよ。」と僕が繰り返し(さと)しているうちに納得してくれた。

 ガールフレンドにも母の事情を話すと、泣きながら心配して、「私のことはいいからお母さんのそばに居てあげて」と気遣ってくれた。

 母が休職してから半年が経った頃、僕が寝かしつける必要はなくなった。母も純粋な笑顔を見せるようになり、僕は安心した。

 ある休日、僕が料理を作り母と一緒に夕食をとっていた。

「それで、あの子とは上手くやってるの?」
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登場人物紹介

僕。小学生の頃から心を閉ざし、人に興味を示さなくなった。

1時間おきに泣くクラスメイトの女の子。逆に普通の顔を思い出せない。

僕の母。大学で心理学の教授をしながらスクールカウンセラーもしている。40代だが若々しくて美人。

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