第10話 巣ごもりだからミステリでも読もう

文字数 2,841文字

 久しぶりの更新となる今回は映像作品ではなく、推理小説や推理漫画を取り上げてみます。なので、このサブタイトルになっています。


・小説『人狼城の恐怖』(二階堂黎人 講談社ノベルス)
 えー、先に断っておきますと、現在、手元に同書はありません。読了したのも相当昔です。決して書籍を処分した訳ではなく、自分が元々住んでいた家を一時的に離れて、親の実家にて暮らしているためです。こういうご時世なのもありまして。
 なので、この項目は記憶に頼って書くことになります。ご了承ください。
 また、力作にして大傑作の本作品をネタバレするのは非常に心苦しくありますので、ぼかした表現で簡潔な記述を心掛けます。それでもあるトリックについては、大まかに触れざるを得ないので、以下、『人狼城の恐怖』のネタバレ注意ということで、よろしくお願いします。

 私がこの作品を読んでいるときに引っ掛かりを覚えたというか、「うん? どういうこと?」とすんなり理解できなかったのが、完結編にて明かされるお城の秘密。ある一つのお城の構造に関する秘密についてです。
 端的に言うと、「あの仕組みってそんな風にスペースを取ることが可能なの?」という疑問が浮かびました。階段の造りを想像すると、無理な気がしたんですが、私の思い描いた構造が間違っているのかしらん。
 絵図で表現できないため、分かりにくくて申し訳ありません。

 拙文を読まれて、「いや、あれは全然おかしくない。こういうことですよ」とご教示いただけるとしたら、逆に助かります。


・漫画『Q.E.D. iff -証明終了-』(加藤元浩 講談社コミックス)第6巻所収「急転」

 大変好きな推理漫画です。ミステリ以外の部分でも、数学ネタが興味深いし、終盤からラスト辺りでふと飛び出す台詞の鋭利さは、個々のエピソードの評価を一気に高める場合すらあると感じます。
 で、好きなだけに、些細な点が気になることがたまにあります。

※以下、ネタバレ大いに注意!ということで、お願いします

 今回取り上げてみる「急転」は、謎やその解明以上に動機にとても感心した覚えがあります。自作にも形(状況)を変えて使いたいと思ったほど。うまい別の状況設定が浮かばないので、まだ取り入れることができていません(苦笑)。
 かように良作と認めている本エピソードの何に引っ掛かりを覚えるかと言いますと、被害者の行動を当てにした犯人の計画、です。
 雪降る寒い夜、犯人は被害者(テレビプロデューサー、男)を偽の手紙で六階建てビルの屋上に呼び出し、アクシデントを装って閉め出す。中に戻れなくなった被害者に、犯人は屋上のすぐ下、六階の部屋の窓を開けて、「この窓から入ってください」と言い、被害者も従った。そして殺害となる訳ですが、被害者は危険を冒して屋上から六階の窓に降りなければいけない程、切羽詰まっていたようには見えないんです。普通、屋上に閉め出されて戻れなくなったら、声を上げて助けを呼びます(携帯端末の類は身に付けていなかった設定)。そうしなかった理由は、「呼び出された用事が何なのか、他人には話したくないから」と一応の説明がされているのですが、どうして呼び出しの理由を正直に言わなければいけないの、と。確かに雪降る夜の寒空の下、わざわざ屋上に独りで出るのは、何らかの理由がないと不自然です。それでも、嘘の説明として「高いところから夜空や街並みを眺めれば、番組作りに活かせる閃きがありそうな気がしたんだ」ぐらいで、簡単にごまかせるんじゃないのかな。被害者がそう考えて、大声を上げて助けを求めたとしたら、その時点で計画は破綻します。
 もう一点、気になったのは、計画遂行のタイミング。犯人はアリバイを確保するためにあるトリックを弄しますが、そうなる状態に持って行くのが、他の人の動向が関係してくるので、結構大変。狙った時刻に発動させるのは非常に厳しいんじゃないかと感じました。一方で、被害者を呼び出す偽の手紙では時刻を指定しているくらいですから、ある程度はスケジュールを決めて犯行をなすつもりでいたはず。いかにしてタイミングを調整したのかの言及がないため、偶然うまく行ったように思えてもったいないなぁ。


・漫画『金田一少年の事件簿 ゲームの館殺人事件』(天樹征丸 原作/さとうふみや 画 講談社コミックス)

 今回ここまで二作とも講談社でしたので、最後の三つ目も揃えてみます。そして、『Q.E.D.』を挙げたからには、もう一作は『金田一少年』もしくは『金田一37歳』から出さないといけないでしょう。(^^)
 てことで、やはりネタバレ注意でお願いします。

 犯人の計画等で、うん?と引っ掛かりを覚えたところをつらつらと書き連ねていきます。

1.はじめ及び美雪は犯人の計画に入っていなかったのに、第一のゲームで用いた被り物はどうして用意してあった? 二つも予備があったのか。

2.第一のゲームではじめが部屋を脱出した直後、宝樹が「クイズがどれもこれも簡単だった」という旨の発言。真っ先に脱出した宝樹が何故、全てのクイズが簡単だったと知っているの? あとから脱出してきた全員に、いちいち尋ねた? 被り物を鍵で外している最中に?

3.同じく第一のゲーム、仮に霜村母が金田一に助けを求めた方法で脱出に成功していたら、犯人はいかに対処するつもりだったのか。殺害はいずれ成し遂げるとしても、被り物の細工が露見する可能性は高く、犯人の標的が霜村母であることが明らかになるのでは。

4.そもそも霜村母は、自分が全く解けない難問を、息子が容易く正解して脱出したことを変だと感じなかったのか。

5.第二のゲーム、急遽参加のはじめ&美雪がもしも知恵の輪が苦手だったら、犯人はどうする気だったのか。死んでもかまわないと思ってた?

6.第三のゲームで、毒入りカップ麺に鍵を入れておかなかった理由がおかしくないか。犯人のミスだの油断だのではなく、入れない方がどうかしていると思うのですが。

7.犯人は梢が辛い物が苦手だと知っていてしかるべきなのに、激辛ラーメンばかり用意している。梢には絶対に毒入りを食べさせられないのだから、激辛ではないラーメンも一つは用意しておくのが当然では。

8.だいたい、梢を殺人ゲームに参加させる意味が不明。アリバイ確保なら、どこか遠くへ旅行でもさせれば事足りるのでは。参加させることで死の危険が生じる。少なくとも、第四の部屋の謎を解いてしまう可能性があった。


 他にも気になる点はありましたが、この辺りで。
 かように引っ掛かりを覚えた箇所は多かったのですが、それでも本作の試みや新しいトリックは私の好みの範疇で、高く評価できる部分があります。願わくばハイテクを利したトリックをもうちょっと練り込んで使って欲しかったかなー、なんて偉そうに思ったり。(^^;

 今回は以上のようなところで。
 また何か思い付いて、それなりの分量がまとまったら、更新します。
 それでは。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み