来週のジャンプ

文字数 960文字

「次回でついに"サンピース"最終回か……」

川田勇二は商店街の書店で買った今週号のジャンプをすぐそばのベンチで読んで呟いた。勇二はジャンプに掲載されている"サンピース"の熱狂的ファンである。単行本が発売された日には最低5冊は同じコミックを購入し、新作の映画が公開されると映画館に10回は足を運び同じ映画をみて、同じシーンで号泣する。ジャンプフェスタには近くのホテルを予約し、会社を休んで行き、部屋はサンピースグッズで埋め尽くされている。
そんな勇二なので、最終回は残念でもあるが、それ以上に作者が、体を酷使し魂を込めて書いた作品の最後の勇姿を今すぐにでも見届けたいという強い思いが込み上げてきた。

"すぐにでも来週号のジャンプを読みたい。"

と思った勇二の目の前に、

"時(人生)・健康 買います"

という札を着けた屋台が現れた。

"時を買ってくれるなら好都合じゃないか"

と思い屋台を訪ねると、

店員が出てきて

「いらっしゃい。この店はあなたの時(人生)・健康を売ると、その価値と同額の契約、もの、こと(経験)を手に入れることができる店だよ。」
と説明した。

その説明に勇二は

「来週の月曜日までの時間を売って、来週の月曜日発売のジャンプをすぐに買うという契約はできますか」

と尋ねると店員は

「その契約はOKだよ。しかし、月曜までの間に君ができたであろう経験は、世間さま的には君がやったことになるけど君の思い出に残らないことになるよ。それでもいいかい?」

と確認したので、勇二は

「一週間たらずでは、人生のイベント的なものがおこるとは思えないし、その間に経験したいこともないので契約します。」

と返答したところ、さらに店員が

「水曜日にはマガジン、木曜日にはモーニングの最新号が発売されてその漫画を読む経験が思い出に残らないけどそれでもいいかい?」

と興奮気味に確認したが、

「どちらもいつも読んでないのでいいっすよ。」

と勇二は軽く答えた。

店員はその返事に対し少しイラついた表情をしながら、

「じゃあこの契約書にサインして」

といった。

勇二がサインした直後、勇二は来週の月曜日に飛ばされてしまいました。

残された店員はしめしめと思いながら、

「"サンピース"来週は休載で、再来週最終回なのに……。マガジンとモーニング読まない罰が当たったんだよ。」

と呟いたそうですよ。





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