第1話 死にたいけど…。

文字数 1,107文字

水口奈美は、28歳のOL

練炭を見つめていた。

いつでも死ねる。そうこれは保険。

いつでも人生を諦められる。

一週間前、水口奈美は、ネットで、悩み相談のサイトを見ていた。

まだ、足掻いている自分もいる。どこかで、自分の中で、引き留めている。

練炭を見つめながらも、客観的に、そう自分を見ている冷静さもある。

水口は、ある商社の事務職として、働いている。上司からの嫌がらせや、同僚からも、仲間外れにされていた。

もう、嫌だ。こんな会社、辞めてやる。
なんで、あんな事言われなきゃならないのよ。自分の仕事押し付けて、ミスすると、仕事もまともに出来ないなら、もう来なくていいって。

行かなかったら、行かなかったで、ズル休みと言われ。
辞めたいと言えば、今月の給料無しと。

○○ハラスメントづくし。

それを傍観している同僚、明らかに、自分とは距離おいているのを感じる。

ある日、一人の同僚が辞めた。その次の日から、SNSで、不倫だの、着服してるだの。警察にも聴取される始末。結局、問題なかったらしく、事なきを得た。しかし、一度、そういう事を書かれると、他人の印象は消えない。本人も傷だらけのまま、うつ病になってしまった。

自分は、辞めたいけど、辞めた後も怖い。

悩み相談では、似たような悩みを、相談してる人もいる。

このサイトなんだろう。灯しや診療所?

変わった名前。診療内科的なもの?

読み進めると、

「あなたは、人間関係で悩んでますね。」

ドキっとした。

そうだけど。

「あなたは、仕事で悩んでますね。」

何よ、これ。

これくらいなら、たくさんいそうだから、引っ掛け?
悪徳なのかしら。怪しい‥。住所は書いてない。やっぱり、怪しい。

予約は要りません。もちろん強制でもありません。

お悩みの解決をお手伝いします。

もし、良かったらいらして下さい。

ある田舎の風景の写真が載せられていた。


なんとか、一週間経った。地獄のような一週間。長かった。

金曜日の夜、みんなで飲み会らしい。電車の中でも、アパートに帰っても、私の悪口がきこえてくる。

もう、限界かな…。

練炭を出してきた。またしばらく見つめていた。

「そうだ、あのサイト。」

何故か、あのサイトを思い出した。また、見てみた。

ーまたのお立ち寄り、ありがとうございます。

明日も診療しておりますので、お待ちしております。ー

この前、載っていなかった、行き方が書いてあった。

行ってみようかな…。

騙されたなら、騙されたついでに、どんどん落ちて行けばいい。
死ぬ気分になるのには、最高だよ。
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