第20話 Prisoners①
文字数 1,841文字
「烏丸エリック、そこを動くな!」
…俺はこの顔を知っている。ニュースでもたまに見かけるが、もっと身近な…そう、マルコのお姉さんだ。
ホルニッセ王子の捜索が打ち切られ突如市民は解放された。王子が見つかったなら大きく話題になるはずなので単純に捜索を諦めたのだろう。ただ不思議なことに国が喪に服すことはなくむしろ観光もイベントも禁止されていた分大々的に行っていいとのことであった。もしかしたらまだ国に帰っては来ていないものの、王子の居場所は判明したのかもしれない。
あらゆる娯楽が復活し、ロンの絶対的人気も終わるかのように思えた。実際このまま活動を続けていれば緩やかに熱が冷めていったのだろうけど烏丸は何故か即ロンの活動を停止すると伝えてきた。だからと言って俺は家に戻れたわけではなくPiece=Noireの施設に幽閉されよくわからない実験ばかりさせられている。流石にそこまで来て烏丸は俺の歌ではなく他の何かが目的であったと気付いた。でも俺は元々ただの日本人でヴァッフェルの人たちのように魔法が使えるわけでもないし特別な体質を持っているとも思えない。もしかして俺にはわからないけどこっちの人たちにとっては俺たち表地球の人間は何か特殊なのか…!?
もっとこの世界の仕組みについて勉強しておけば俺はこんな目に遭わなかったのかもしれない。今となってはもう遅いけど。とりあえずここを出たら病院に行って検査をしてもらおう。
「ふっ、クソガキ殿下のお守り役が私に何をできるというのだろうか。ご自身の立場を理解していないのですか?」
「私は身の程をわきまえているつもりですが。今日は国王の命であなたを捕らえに来たのですから」
「戯言を。職権乱用は重罪じゃないのか」
「面白いことを言いますね。知らなかったのなら教えてあげます。私は拘束魔法が得意なのでこういった仕事も任されているのですよ」
「なっ、水の檻…!?」
すごい…!マルコのお姉さんということは俺と同じで表地球の人だよね…?こっちの人間じゃなくても頑張れば強力な魔法を使えるようになるんだ…。
「生きた状態で連れてくることが必須だったから呼吸はできるようにしておいた。さあ城まで来てもらうよ」
「クッ…何故だ!何故王は俺を見捨てた!」
「簡単なことよ。あなたにかかっているのは新興宗教の立ち上げ及びその布教の嫌疑だから。いくら宗教的立場があってもその罪だけは免じてもらえない」
「それは俺じゃない!そうだ、これは何者かが仕組んだ罠だ!よくも俺を嵌めようと…」
「仮にそれが嘘だとしても立場を失ったあなたにはもう汚職の数々を揉み消す力はないでしょうけど」
あの狡猾な烏丸が慌て、怒り、嘆きながら連行されるなんて…。結果的に俺を宗教化した誰かに救われたのかもしれない。
「さて、と。獅子堂倫音くん、よね」
「あ、はい…。」
「あなたには魔法学院に通ってもらいます」
「えっ、でも俺魔法なんて使えないですよ!それにうちにはそんなお金ないし…」
「学費は心配しなくていいよ。奨学金として国が出すから」
「でもなんで…?」
「烏丸が取っていたデータをこちらで分析していたのだけど、あなた無意識に強力な魔法を使っていたようなの」
「えっ、俺が魔法を!?」
「やっぱり何も知らないんだ…。で、私たちとしてはその力は制御できないまま野放しにしておくのは危険だと判断したの。だからこれはお誘いというより国からの命令になるね」
「学院に通うこと自体は嫌ではないです…。今回のこともあってやっぱここの仕組みをしっかり知っておくべきだなと思ったので。でも俺は一体どんな力を使っていたのですか?」
「まだ未熟で不完全だけど人心掌握に近いものね。歌に乗せて発動していたみたい」
「歌?ってことはまさか…!」
「烏丸は鑑定魔法か何かであなたの力に気付き、表向きはアーティストとして活動させながらその力について研究しようとしていたようね。きっと奴の目的は他人を都合の良いように操ることだったのでしょう」
「俺がそんな力を…」
「そう。だからそれを悪用しないように、そして力が暴発しないように学院で魔法について学んで貰います」
「わかりました。…あの、マルコにもお姉さんにもお世話になってばっかりで…その…ありがとうございましたっ!今度うちに来てください…!お礼ってお礼はできないかもですけど…」
「別にお礼なんていいのに…。わかった、久々に喫茶レーヴェに足を運ぶね」
「本当に…私もマルコもお礼をされるほどのことはしてないけどなぁ」
…俺はこの顔を知っている。ニュースでもたまに見かけるが、もっと身近な…そう、マルコのお姉さんだ。
ホルニッセ王子の捜索が打ち切られ突如市民は解放された。王子が見つかったなら大きく話題になるはずなので単純に捜索を諦めたのだろう。ただ不思議なことに国が喪に服すことはなくむしろ観光もイベントも禁止されていた分大々的に行っていいとのことであった。もしかしたらまだ国に帰っては来ていないものの、王子の居場所は判明したのかもしれない。
あらゆる娯楽が復活し、ロンの絶対的人気も終わるかのように思えた。実際このまま活動を続けていれば緩やかに熱が冷めていったのだろうけど烏丸は何故か即ロンの活動を停止すると伝えてきた。だからと言って俺は家に戻れたわけではなくPiece=Noireの施設に幽閉されよくわからない実験ばかりさせられている。流石にそこまで来て烏丸は俺の歌ではなく他の何かが目的であったと気付いた。でも俺は元々ただの日本人でヴァッフェルの人たちのように魔法が使えるわけでもないし特別な体質を持っているとも思えない。もしかして俺にはわからないけどこっちの人たちにとっては俺たち表地球の人間は何か特殊なのか…!?
もっとこの世界の仕組みについて勉強しておけば俺はこんな目に遭わなかったのかもしれない。今となってはもう遅いけど。とりあえずここを出たら病院に行って検査をしてもらおう。
「ふっ、クソガキ殿下のお守り役が私に何をできるというのだろうか。ご自身の立場を理解していないのですか?」
「私は身の程をわきまえているつもりですが。今日は国王の命であなたを捕らえに来たのですから」
「戯言を。職権乱用は重罪じゃないのか」
「面白いことを言いますね。知らなかったのなら教えてあげます。私は拘束魔法が得意なのでこういった仕事も任されているのですよ」
「なっ、水の檻…!?」
すごい…!マルコのお姉さんということは俺と同じで表地球の人だよね…?こっちの人間じゃなくても頑張れば強力な魔法を使えるようになるんだ…。
「生きた状態で連れてくることが必須だったから呼吸はできるようにしておいた。さあ城まで来てもらうよ」
「クッ…何故だ!何故王は俺を見捨てた!」
「簡単なことよ。あなたにかかっているのは新興宗教の立ち上げ及びその布教の嫌疑だから。いくら宗教的立場があってもその罪だけは免じてもらえない」
「それは俺じゃない!そうだ、これは何者かが仕組んだ罠だ!よくも俺を嵌めようと…」
「仮にそれが嘘だとしても立場を失ったあなたにはもう汚職の数々を揉み消す力はないでしょうけど」
あの狡猾な烏丸が慌て、怒り、嘆きながら連行されるなんて…。結果的に俺を宗教化した誰かに救われたのかもしれない。
「さて、と。獅子堂倫音くん、よね」
「あ、はい…。」
「あなたには魔法学院に通ってもらいます」
「えっ、でも俺魔法なんて使えないですよ!それにうちにはそんなお金ないし…」
「学費は心配しなくていいよ。奨学金として国が出すから」
「でもなんで…?」
「烏丸が取っていたデータをこちらで分析していたのだけど、あなた無意識に強力な魔法を使っていたようなの」
「えっ、俺が魔法を!?」
「やっぱり何も知らないんだ…。で、私たちとしてはその力は制御できないまま野放しにしておくのは危険だと判断したの。だからこれはお誘いというより国からの命令になるね」
「学院に通うこと自体は嫌ではないです…。今回のこともあってやっぱここの仕組みをしっかり知っておくべきだなと思ったので。でも俺は一体どんな力を使っていたのですか?」
「まだ未熟で不完全だけど人心掌握に近いものね。歌に乗せて発動していたみたい」
「歌?ってことはまさか…!」
「烏丸は鑑定魔法か何かであなたの力に気付き、表向きはアーティストとして活動させながらその力について研究しようとしていたようね。きっと奴の目的は他人を都合の良いように操ることだったのでしょう」
「俺がそんな力を…」
「そう。だからそれを悪用しないように、そして力が暴発しないように学院で魔法について学んで貰います」
「わかりました。…あの、マルコにもお姉さんにもお世話になってばっかりで…その…ありがとうございましたっ!今度うちに来てください…!お礼ってお礼はできないかもですけど…」
「別にお礼なんていいのに…。わかった、久々に喫茶レーヴェに足を運ぶね」
「本当に…私もマルコもお礼をされるほどのことはしてないけどなぁ」