第6話

文字数 668文字

 「…ここにはあなたの他にもう1人いるようだな」
ホルニッセの声だ。ナタリーが上にいないから仕方なく買い出しの報告のため地下に降りようと思ったが俺にとって都合の悪そうな話が聞こえる。
「ハヤテのこと?別に隠しておくつもりはなかったけど…。ちょうどいいから紹介するわ。ハヤテ!帰ってるんでしょ、降りてきて!」
…最悪だ、よりによって奴に会わなければならないとは。まあ恐らくこちらのことは分からないだろう。
「ホルニ、紹介するわね。あたしの手伝いをしてくれている浜野ハヤテよ」
“手伝い”か。“小間使い”の間違いではないだろうか。
「浜野…?浜野ってまさか…」
…落ち着け、当時の面影など一切ないはずだ。それに奴が”ハヤテ”という偽名を知るはずがない。
「鴇子の御兄弟か?確か彼女に兄はいなかったはずだから弟だろうか。しかし兄弟がいたとは、初耳だ…」
一瞬呆気にとられた。正体を見破られていないようで安心したが、まさかあの令嬢に兄弟がいるという可能性を考えるとは…。ヴァッフェル王国では珍しい名前であることは確かだがそれにしたって浜野鴇子の実家は王室との付き合いも長い上流階級、そんな家の者が得体の知れない魔女に協力していると思われるとは心外だ。やはりこいつは裏では外国にルーツを持つ浜野家を見下しているのだろうと考えると腹が立つ。
「…俺はこれで」
「あら?もういいの?ごめんねホルニ、この子ぶっきらぼうで~。でも優秀なのよ?」
「ハヤテ、また今度ここに来てくれないか。鴇子の話もしたい」
「…」
…こんな状況でも良い顔をする。俺はあんたのそういうところが嫌いだよ。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

Hornisse=Zacharias

食と芸術の観光地、ヴァッフェル王国の第一王子。強く美しくフレンドリーな国民のアイドル的存在だが、何者かに誘拐されて失踪中。

Marco=Tiglio

ホルニッセに仕える近衛兵。異世界のイタリア出身。陽気で常識人だが、優柔不断なところがある。

白城千

『千年放浪記』シリーズの主人公である不老不死の旅人。人間嫌いの皮肉屋だがなんだかんだで旅先の人に手を貸している。

獅子堂倫音

マルコ同様異世界から来た日本人。人が苦手だが身寄りがない自分を拾ってくれた店主のために喫茶店で働く。少年とは思えない綺麗な高音の歌声を持つ。

烏丸エリック

街はずれの教会の神父。真面目な好青年で人々からの信頼も厚いが、拝金主義者という裏の顔を持ち利益のためならなんでもする。

Katry=Kamelie

教会のシスター。包容力と正義感を持ち合わせた聖職者の鑑のような人物だが気になることがあると突っ走ってしまうところがある。

Natalie=Schlange

街はずれに住む魔女。ホルニッセに一目惚れし、彼を独り占めするために誘拐、監禁する。夢見る乙女だが非常にわがまま。

浜野ハヤテ

ナタリーと共に行動する青年。根暗で厭世的。自らの出自を隠しているようだが…

Amalia=Tiglio

マルコの姉。面倒見がよく器用なところが認められヴァッフェル王国の第二王子であるアルフォンスの世話係に。

Alfons=Zacharias

ヴァッフェル王国の第二王子でホルニッセの弟。なんでも完璧にこなすが、プライドが高く兄のことを見下している。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み