第3話

文字数 967文字

 目が覚めたら薄暗い地下室のような場所にいた。手足は自由に動くが、腰の辺りに強固な金属製の拘束具がついており、ここから離れることは出来ないようだ。ここに来る前は確かいつものように街を散策していたはずだった。いや、いつもと違うのは俺に好き勝手させてくれないマルコにお使いを頼み簡単に目を欺ける別の近衛兵を連れていったことだ。そのおかげで1人で行動することが出来て、普段は行かないような路地裏にも足を運び…何者かに捕まった。
「あら、やっと目を覚ましたのね」
「…誰だ…」
視界がぼんやりしていて相手の姿がわからない。女の声だ。声の主が俺を攫ったとは考えにくいが…
「もー、あたしのこと覚えてないの?」
「…?」
ぼやけた視界の中でも鮮やかな桃色だけは見えるが、俺の知り合いに桃色の髪の女…それも少女のような体格の女はいないはずだ。
「ひどいわ!前に1度だけどデートしたじゃない!」
「…いや、そんなことは…」
「あたしのこと“可憐なお嬢さん”って言ってくれたことも覚えてないの!?」
「…全く」
「ありえない!」
いや、ありえない!と言いたいのはこちらの方だ。何故拉致監禁されたと思ったら知らない女が現れ、その女に知りもしない関係について問い詰められなければならないのだ。
「…さすがに視界が鮮明になってきたが、やはりあなたが誰だかわからない」
「あら、見えてなかったのね。って、見えてもなおあたしがわからないってどういうことよ!?」
「そう言われても…」
「あたしはホルニのこと誰よりも知ってるのに!」
“ホルニ”という愛称まで…。俺が忘れているだけで本当は知り合いか何かなのか?もしかして俺にはガールフレンドがいた?いや、待て待て待て、そんなはずは…
「申し訳ないが、本当にあなたのことを覚えていない。立場上俺は多くの人間と会うがあなたについては記憶が無いんだ」
「…そう」
「それにしてもここはどこなんだ。どうやら地下室のようだが…。まさかあなたのような華奢なレディ1人で俺をここに連れ込んだわけではあるまい。…目的は金か?それとも国家に対する謀反か?」
「ちょっと、そんな怖い顔しないでぇ。…確かにあなたをここに連れ込むためにある人物に協力してもらったけど、あたしはお金とか国には興味ないの」
「じゃあ何故…!」
「あたしが欲しいのはホルニ、あなただけだもん♡」
「は…?」
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登場人物紹介

Hornisse=Zacharias

食と芸術の観光地、ヴァッフェル王国の第一王子。強く美しくフレンドリーな国民のアイドル的存在だが、何者かに誘拐されて失踪中。

Marco=Tiglio

ホルニッセに仕える近衛兵。異世界のイタリア出身。陽気で常識人だが、優柔不断なところがある。

白城千

『千年放浪記』シリーズの主人公である不老不死の旅人。人間嫌いの皮肉屋だがなんだかんだで旅先の人に手を貸している。

獅子堂倫音

マルコ同様異世界から来た日本人。人が苦手だが身寄りがない自分を拾ってくれた店主のために喫茶店で働く。少年とは思えない綺麗な高音の歌声を持つ。

烏丸エリック

街はずれの教会の神父。真面目な好青年で人々からの信頼も厚いが、拝金主義者という裏の顔を持ち利益のためならなんでもする。

Katry=Kamelie

教会のシスター。包容力と正義感を持ち合わせた聖職者の鑑のような人物だが気になることがあると突っ走ってしまうところがある。

Natalie=Schlange

街はずれに住む魔女。ホルニッセに一目惚れし、彼を独り占めするために誘拐、監禁する。夢見る乙女だが非常にわがまま。

浜野ハヤテ

ナタリーと共に行動する青年。根暗で厭世的。自らの出自を隠しているようだが…

Amalia=Tiglio

マルコの姉。面倒見がよく器用なところが認められヴァッフェル王国の第二王子であるアルフォンスの世話係に。

Alfons=Zacharias

ヴァッフェル王国の第二王子でホルニッセの弟。なんでも完璧にこなすが、プライドが高く兄のことを見下している。

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