第9話 浩太と創元の衝撃的瞬間
文字数 3,371文字
「む~? なんか喉が渇いたのじゃ」
竜子の声が聞こえて来て浩太の意識は薄っすらと覚醒し竜子ちゃん起きたんだと浩太はぼんやりと思った。
「竜子起きたのね。お水そこにあるから飲んで。あたくしは浩太ちゃんを寝室まで運んで来るわ。あんまり長い間ここに寝かせといたら明日浩太ちゃんに体中が痛いって言われちゃいそうだもの」
今度は創元のいつもよりも小さな声が頭の上から聞こえて来た。浩太はまだねむ~いと思うと寝返りを打とうとした。
「浩太ちゃん。危ない。もう。あたくしの腕の中なんだから動いちゃ駄目よ」
何か今物凄く危険な言葉が聞こえて来たような気がすると浩太は思ったがまだまだねむ~いと思うとそんな言葉の事などどうでも良くなりあっという間に忘れてしまった。
「うわ~おい~。こら~。創元。何をしてるのじゃ~!!! 放せ。今すぐに浩太を放すのじゃ。お、お、おま、おま、お前。そんなに欲求不満だったのか? それに、そんなに男が好きだったのか? わしは知らなかったのじゃ。まさか、今までもわしが知らない所で客に手などを出していたのか?」
竜子が突然凄まじい剣幕で怒鳴った。
「もう。いきなりそんな声出したら浩太ちゃんが起きちゃうじゃない。何言ってるのよ竜子。違うわよ。浩太ちゃんが寝ちゃったから寝室に運んであげようと思っただけよ。あたくしは何も変な事なんて考えてやしないわ」
創元が小さな声で呆れたように言った。
「本当じゃろうな?」
竜子も声を小さくしつつ至極疑っているような声と口調で言った。
「本当よ。なんならあーたが浩太ちゃんを運ぶ?」
創元が小さな声でそう言うと竜子が少し間を空けてからなんでわしがそんな事しなくちゃならんのじゃと怒鳴った。
「竜子、声。でも、今ちょっと間があったわよね。まさか竜子、あーた運ぶついで浩太ちゃんを別の意味で食べちゃおうなんて考えてたんじゃないでしょうね?」
創元が嬉しそうにからかうように小さな声で言った。
「そんな事を思うのはお前だけなのじゃ。この馬鹿者。もう良いのじゃ。とっとと運べなのじゃ」
竜子が声を抑えつつもうどうでも良いからとっとやれなのじゃという風に言った。
「いや。待つのじゃ。わしも寝室までついて行くのじゃ。万が一があったら困るのじゃ。創元、お前の一挙一動はわしが監視してるのじゃ」
急に考えが変わったらしく竜子が今度は真面目な様子で声を抑えつつそう言った。
「分かったわ。ついてらっしゃい」
創元が笑いながら小さな声で言うとそれを最後に二人の声は聞こえなくなった。辺りが静かになると浩太の意識はすーと眠りの海の中に沈んで行った。不意に体が凄く柔らかく気持ちの良い感触のする何物かに触れたのを感じ浩太の意識は眠りの海の中から微かに浮上した。
「竜子。ほら。ただベッドに寝かしただけで何もしないでしょ?」
創元の小さな声が聞こえて来た。
「まだ分からないのじゃ。お前が浩太の傍を離れるまで監視は続くのじゃ」
竜子の小さな声も聞こえて来た。浩太はなんで二人して寝るのを邪魔するかなとぼんやりと思いながら寝返りを打ってうつ伏せになると潜ろうとするかのように顔を凄く柔らかく気持ち良い感触のする何物かにぎゅぎゅっと押し付けた。
「ぎゅぎゅってしてるわ。かわいいわね。きっと二人ともうるさいなとか夢の中で思ってるのよ」
創元の声を聞いた竜子が大きな声を上げた。
「創元。駄目じゃぞ。手は出すな。変な事をしたら絶交なのじゃ」
「竜子しいーっ。声が大きいわ。でも、竜子の方はどうなのよ? こんなかわいい寝顔をしてる子を放っておけるの?」
創元が声を潜めて言った。
「ついに本性を現したのじゃ。浩太はわしが守るのじゃ」
「冗談よ。そんな事するはずないでしょ。あーたが面白いからからかっただけよ」
創元が竜子の言葉に優しく応じた。
「信じられないのじゃ。怪しいのじゃ」
竜子が声を抑えつつ心底疑っているというような口調と声音で言った。
「竜子。今あーた浩太ちゃんを守るって言ってたけど、やっぱり浩太ちゃんの事結構気に入ってるんじゃないの?」
「ち、違うのじゃ。そんな事はないのじゃ。これは、これは、ええっと、ええっと。ああ。そうじゃ。言葉の綾じゃ。そうじゃった。ただの言葉の綾なのじゃ」
言葉の最初の方は非常に狼狽えていた竜子だったがああの辺りから急に明るくなりこれでどうじゃと誇るように小さな声で言った。
「もう素直じゃないんだから。そういえば浩太ちゃんが宴の事心配してたわよ。あーたが戦ってくれないんじゃないかって」
創元の言葉を聞いた竜子が鼻で笑った。
「そんな事をこいつは言ってたのか。まあそう思うのが当然じゃろうな。どうしてやろうか。創元とこいつが二人で戦うのを高みの見物としゃれこんでやろうか」
「そんな事本当にできるのかしら。どうせあーたの事だから宴が始まったら一番はりきって戦っちゃうと思うわよ」
竜子の言葉に創元がそんな風にやり返した。
「わしが一番はりきって戦うか。さっき寝てる時に夢を見たのじゃ。あの時の夢じゃった。あの時の夢なんてもうずっと見た事がなかったのじゃ」
あの時って人が迷い込んだ件であーたと天竜ちゃんがやり合った時の事? と創元が聞いた。
「良く分かったのじゃ。その通りじゃ。こいつに会った所為か知らんが随分と昔の夢を見たものじゃ」
「あの時の話、あーたが寝てる横でさっき浩太ちゃんにしちゃったんだけど話さない方が良かったかしら?」
昔を懐かしむように話していた竜子に創元が聞いた。
「そうか。それが聞こえててあんな夢を見たのかも知れないのじゃ。まあ、話しても良いのじゃ。そんな事でわしは怒らないのじゃ。あの時は何もできなかったのじゃ。じゃが今回は違うのじゃ。天竜の奴何を血迷ったのか。宴を開催するとは馬鹿な奴なのじゃ。創元。わしはやってやるのじゃ。奴の決定をひっくり返して浩太を家に帰してやるのじゃ。わしら自身を守る為にこの世界に引きこもった事はもうどうでも良いのじゃ。人と一緒に暮らしてまた戦争の道具になるのは嫌なのじゃ。じゃが、浩太は別じゃ。迷い込んで来る奴は別なのじゃ。本来いるはずの世界に帰してやらなければならないのじゃ」
竜子が言い終えるとごおうっと何やら恐ろし気な音がした。
「あら気合入ってるわね。そんな風に炎を吐くあーたを見たのは随分と久し振りな気がするわ」
創元が小さな声で嬉しそうに言った。
「思わず出てしまったのじゃ。浩太を焼かなくて良かったのじゃ。なあ、創元よ。今までわしと生きて来て幸せじゃったか?」
「あら。いきなりね。あの戦場であーたに命をもらった時からあたくしとあーたは一心同体。死ぬも生きるも一緒じゃない。そんな絆がある相手と一緒にいて幸せじゃないはずがないわ。急にそんな事言ってあーた死ぬかも知れないなんて思ってるんじゃないでしょうね?」
竜子と創元の言葉からはお互いを思いやる気持ちが溢れ出ていた。
「お前がそれを言うのか? 死んでも良いとか先に言ったのはお前じゃろ?」
竜子の言葉を聞いて創元が笑った。
「あたくしとあーたが死んだとしても浩太ちゃんだけはやよちぇんの所に帰れるようにしてあげましょうね」
「そうじゃな。こいつの未来の可能性を守ってやらないといけないのじゃ」
そんな言葉を最後に二人の声は浩太の耳に入って来なくなった。浩太は寝返りを打って仰向けになると薄っすらと目を開け周囲をうかがった。どこからか入り込んでいる薄明かりに照らされている見知らぬ部屋の中には誰の姿もなかった。
「ここは? そっか。創元さんが運んでくれたんだなきっと。やばいな。二人の会話途中から全部覚えちゃってる。あれって夢じゃないよな。竜子ちゃん、あんな風に思っててくれたんだ。次顔見たらどんな態度で接すれば良いんだろう。いや。そんな事はどうでも良いか。頑張ろう。二人が勝って生きてられるように俺も頑張ろう」
浩太は天井にあった木目を見つめながら誓うように独り言ちた。
竜子の声が聞こえて来て浩太の意識は薄っすらと覚醒し竜子ちゃん起きたんだと浩太はぼんやりと思った。
「竜子起きたのね。お水そこにあるから飲んで。あたくしは浩太ちゃんを寝室まで運んで来るわ。あんまり長い間ここに寝かせといたら明日浩太ちゃんに体中が痛いって言われちゃいそうだもの」
今度は創元のいつもよりも小さな声が頭の上から聞こえて来た。浩太はまだねむ~いと思うと寝返りを打とうとした。
「浩太ちゃん。危ない。もう。あたくしの腕の中なんだから動いちゃ駄目よ」
何か今物凄く危険な言葉が聞こえて来たような気がすると浩太は思ったがまだまだねむ~いと思うとそんな言葉の事などどうでも良くなりあっという間に忘れてしまった。
「うわ~おい~。こら~。創元。何をしてるのじゃ~!!! 放せ。今すぐに浩太を放すのじゃ。お、お、おま、おま、お前。そんなに欲求不満だったのか? それに、そんなに男が好きだったのか? わしは知らなかったのじゃ。まさか、今までもわしが知らない所で客に手などを出していたのか?」
竜子が突然凄まじい剣幕で怒鳴った。
「もう。いきなりそんな声出したら浩太ちゃんが起きちゃうじゃない。何言ってるのよ竜子。違うわよ。浩太ちゃんが寝ちゃったから寝室に運んであげようと思っただけよ。あたくしは何も変な事なんて考えてやしないわ」
創元が小さな声で呆れたように言った。
「本当じゃろうな?」
竜子も声を小さくしつつ至極疑っているような声と口調で言った。
「本当よ。なんならあーたが浩太ちゃんを運ぶ?」
創元が小さな声でそう言うと竜子が少し間を空けてからなんでわしがそんな事しなくちゃならんのじゃと怒鳴った。
「竜子、声。でも、今ちょっと間があったわよね。まさか竜子、あーた運ぶついで浩太ちゃんを別の意味で食べちゃおうなんて考えてたんじゃないでしょうね?」
創元が嬉しそうにからかうように小さな声で言った。
「そんな事を思うのはお前だけなのじゃ。この馬鹿者。もう良いのじゃ。とっとと運べなのじゃ」
竜子が声を抑えつつもうどうでも良いからとっとやれなのじゃという風に言った。
「いや。待つのじゃ。わしも寝室までついて行くのじゃ。万が一があったら困るのじゃ。創元、お前の一挙一動はわしが監視してるのじゃ」
急に考えが変わったらしく竜子が今度は真面目な様子で声を抑えつつそう言った。
「分かったわ。ついてらっしゃい」
創元が笑いながら小さな声で言うとそれを最後に二人の声は聞こえなくなった。辺りが静かになると浩太の意識はすーと眠りの海の中に沈んで行った。不意に体が凄く柔らかく気持ちの良い感触のする何物かに触れたのを感じ浩太の意識は眠りの海の中から微かに浮上した。
「竜子。ほら。ただベッドに寝かしただけで何もしないでしょ?」
創元の小さな声が聞こえて来た。
「まだ分からないのじゃ。お前が浩太の傍を離れるまで監視は続くのじゃ」
竜子の小さな声も聞こえて来た。浩太はなんで二人して寝るのを邪魔するかなとぼんやりと思いながら寝返りを打ってうつ伏せになると潜ろうとするかのように顔を凄く柔らかく気持ち良い感触のする何物かにぎゅぎゅっと押し付けた。
「ぎゅぎゅってしてるわ。かわいいわね。きっと二人ともうるさいなとか夢の中で思ってるのよ」
創元の声を聞いた竜子が大きな声を上げた。
「創元。駄目じゃぞ。手は出すな。変な事をしたら絶交なのじゃ」
「竜子しいーっ。声が大きいわ。でも、竜子の方はどうなのよ? こんなかわいい寝顔をしてる子を放っておけるの?」
創元が声を潜めて言った。
「ついに本性を現したのじゃ。浩太はわしが守るのじゃ」
「冗談よ。そんな事するはずないでしょ。あーたが面白いからからかっただけよ」
創元が竜子の言葉に優しく応じた。
「信じられないのじゃ。怪しいのじゃ」
竜子が声を抑えつつ心底疑っているというような口調と声音で言った。
「竜子。今あーた浩太ちゃんを守るって言ってたけど、やっぱり浩太ちゃんの事結構気に入ってるんじゃないの?」
「ち、違うのじゃ。そんな事はないのじゃ。これは、これは、ええっと、ええっと。ああ。そうじゃ。言葉の綾じゃ。そうじゃった。ただの言葉の綾なのじゃ」
言葉の最初の方は非常に狼狽えていた竜子だったがああの辺りから急に明るくなりこれでどうじゃと誇るように小さな声で言った。
「もう素直じゃないんだから。そういえば浩太ちゃんが宴の事心配してたわよ。あーたが戦ってくれないんじゃないかって」
創元の言葉を聞いた竜子が鼻で笑った。
「そんな事をこいつは言ってたのか。まあそう思うのが当然じゃろうな。どうしてやろうか。創元とこいつが二人で戦うのを高みの見物としゃれこんでやろうか」
「そんな事本当にできるのかしら。どうせあーたの事だから宴が始まったら一番はりきって戦っちゃうと思うわよ」
竜子の言葉に創元がそんな風にやり返した。
「わしが一番はりきって戦うか。さっき寝てる時に夢を見たのじゃ。あの時の夢じゃった。あの時の夢なんてもうずっと見た事がなかったのじゃ」
あの時って人が迷い込んだ件であーたと天竜ちゃんがやり合った時の事? と創元が聞いた。
「良く分かったのじゃ。その通りじゃ。こいつに会った所為か知らんが随分と昔の夢を見たものじゃ」
「あの時の話、あーたが寝てる横でさっき浩太ちゃんにしちゃったんだけど話さない方が良かったかしら?」
昔を懐かしむように話していた竜子に創元が聞いた。
「そうか。それが聞こえててあんな夢を見たのかも知れないのじゃ。まあ、話しても良いのじゃ。そんな事でわしは怒らないのじゃ。あの時は何もできなかったのじゃ。じゃが今回は違うのじゃ。天竜の奴何を血迷ったのか。宴を開催するとは馬鹿な奴なのじゃ。創元。わしはやってやるのじゃ。奴の決定をひっくり返して浩太を家に帰してやるのじゃ。わしら自身を守る為にこの世界に引きこもった事はもうどうでも良いのじゃ。人と一緒に暮らしてまた戦争の道具になるのは嫌なのじゃ。じゃが、浩太は別じゃ。迷い込んで来る奴は別なのじゃ。本来いるはずの世界に帰してやらなければならないのじゃ」
竜子が言い終えるとごおうっと何やら恐ろし気な音がした。
「あら気合入ってるわね。そんな風に炎を吐くあーたを見たのは随分と久し振りな気がするわ」
創元が小さな声で嬉しそうに言った。
「思わず出てしまったのじゃ。浩太を焼かなくて良かったのじゃ。なあ、創元よ。今までわしと生きて来て幸せじゃったか?」
「あら。いきなりね。あの戦場であーたに命をもらった時からあたくしとあーたは一心同体。死ぬも生きるも一緒じゃない。そんな絆がある相手と一緒にいて幸せじゃないはずがないわ。急にそんな事言ってあーた死ぬかも知れないなんて思ってるんじゃないでしょうね?」
竜子と創元の言葉からはお互いを思いやる気持ちが溢れ出ていた。
「お前がそれを言うのか? 死んでも良いとか先に言ったのはお前じゃろ?」
竜子の言葉を聞いて創元が笑った。
「あたくしとあーたが死んだとしても浩太ちゃんだけはやよちぇんの所に帰れるようにしてあげましょうね」
「そうじゃな。こいつの未来の可能性を守ってやらないといけないのじゃ」
そんな言葉を最後に二人の声は浩太の耳に入って来なくなった。浩太は寝返りを打って仰向けになると薄っすらと目を開け周囲をうかがった。どこからか入り込んでいる薄明かりに照らされている見知らぬ部屋の中には誰の姿もなかった。
「ここは? そっか。創元さんが運んでくれたんだなきっと。やばいな。二人の会話途中から全部覚えちゃってる。あれって夢じゃないよな。竜子ちゃん、あんな風に思っててくれたんだ。次顔見たらどんな態度で接すれば良いんだろう。いや。そんな事はどうでも良いか。頑張ろう。二人が勝って生きてられるように俺も頑張ろう」
浩太は天井にあった木目を見つめながら誓うように独り言ちた。