並木藤花(とうか)

文字数 1,702文字

並木藤花(とうか) 身長156cm
中学に”上がって”初めて琴音と知り合い、友達になった。

幼稚園からある学園の、小学生の部から通っている。

律とはその頃からの友達。地元も近く、お互いの家は徒歩十分圏内だ。
得意科目は数理系と英語。琴音と同じ。これらの科目だけ学年トップ五位に入るのまでも同じだ。勝敗は勝ったり負けたり。

父親は一級建築士。国からも依頼を受けたりと、よく知らないが”売れてる”らしい。

丸の内沿線の、中野坂上にある一軒家に住んでいる。

少し丸顔で、笑うとえくぼが出来る所など愛嬌があり、人好きのする雰囲気だ。お目目がクリクリなところとかは、小動物を思わせた。

入学当初は、前髪は若干短めのパッツンで、後ろ髪は肩のラインより長く、胸よりは上程で、琴音と同じくらいの長さだったが、藤花は襟足あたりで一つに結んでいた。
だが今は、グループの中では琴音の次に長かった髪をバサッと切り、ショートなマッシュボブにしていた。
…と、髪を切った次に会った時に、そう髪型の名前を教えてくれたが、琴音の感覚からすると、要は昔で言うところの”オカッパ”だった。少し間違えば、前までの絵里と被る…としか見えない髪型だったが、何というか、ここまで言っといて何だが、以前までのよりも、とても藤花に合ってると琴音は思っているし、少し端折りながら感想を伝えると、藤花はエクボを見せつつ、思いっきり照れながらではあったが、笑いながら感謝を返してくれた。

声音としては、幼さが残る、高めの可愛い声だった。
その様な特徴ある地声なのだが、これは藤花の経歴に関係あるのだろう。

藤花を語る上で、絶対に外せないのは…そう、歌だ。
藤花は両親がクリスチャンというのもあって、今通っているすぐ近所の、都内では有名なカトリック教会に通っていた。毎週日曜日だ。学園自体もミッション系なので、両親が入学させたのも分かるというものだ。
ある時藤花が話してくれたのには、小学校に入学した時と同時期にして、教会の讃美歌隊に入隊したらしい。そこで歌う事の喜びを見出し、気付けば誰に言われるでもなく、毎日の様に学校終わりに教会を訪れ、練習に励んでいた様だ。讃美歌隊の練習自体、毎日はありはしたが、それはそれぞれの隊員が自分達の都合で好きに練習が出来る様にという処置であって、そこに毎日参加する、少なくとも子供では藤花だけだったらしい。
そんな熱心な姿を見て、たまたまというか、この讃美歌隊出身のオペラなどに出演する声楽家の女性がいる様なのだが、何やら彼女の目に止まったらしく、すぐに藤花に声を掛けて、普段は欧州の方にいるので、しょっちゅうは会えなかったらしいが、それでも帰国している時には、ほぼ毎日の様に教会に足を運び、そして藤花に手ほどきをしてくれてた様だ。

この話は作中では出ていないのだが、琴音自身、まだ出会っていないので、触れられなかった。しかし話を聞く限りでは、今でも変わらずに付き合いは続いていて、藤花の普段からの、歌という芸に対する姿勢、喉のケアなどの日常での節制、考え方などの源は、彼女由来のようだ。
要は、彼女は藤花にとっての師匠と言えるだろう。
ただ…私と違って簡単に指示を仰げない時点で、独学的にならざるを得ないのは仕方がないだろう。
これは…琴音にとっての母とは別の意味で親バカエピソードだが、そんな娘のために、建築士の父親は自宅に防音設備付きの、そこいらのスタジオ並みかそれ以上の練習部屋を作り与えていた。そこで伸び伸びと練習に励んでいる。

藤花は中学に上がったばかりの四月に、とうとう賛美歌の独唱を、千人近い聴衆の前で初披露する事となった。
それを見た琴音はとても大きな刺激、感銘を受けて、それ以降、藤花の自宅にまでお邪魔して、例の如く質問責めされた藤花だったが、初めは驚き、正直引きつつも、琴音と同じ様に、藤花は藤花で、同年代に同じ芸の話が出来る人が周りにいなかった為か、すぐに藤花の方でも打ち解けていった。
そして今日まで、二人であーだこーだと共通の言語を使いながら、お互いに刺激を与え合っている。
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