第5話

文字数 676文字

 家に帰ると、脇目もふらず机に向かう。
 鞄から折り紙を取り出し、女子たちからのアドバイスを参考に、とりあえず折ってみる。
 まずは手でしっかりと紙を固定する。折るときは角をしっかりと揃え、ズレがないか、バランスを意識してみた。
 すると、昨日のニワトリが嘘のように、理想通りの折り鶴ができあがった。時間は計らなかったが、おそらく十分近くはかかっただろう。
 ようやく道筋が見えてきた。とにかく回数をこなし、丁寧な折り方に慣れるしかない。
 その後、速さよりも見た目を意識しながら、続けて三十羽程折った。
 根詰めたせいで、さすがに両手の感覚が薄れてきた。見ると、時計の針が十二時を回っている。明日も学校なので、これ以上続けるわけにもいかず、軽く手をマッサージしながら、就寝することにした。

 それから毎日、最低五十羽を目処に折り続けることにした。
 上手い具合に完成度を維持したまま、タイムがみるみる縮まっていく。最初は一羽につき十分近く費やしていたが、十日も経つ頃には二分を切るようになっていった。
 先生の指示では一人二百羽が目標とされているが、僕のそれは既に六百を超えていた。おかげでクラス全体のノルマは達成していたが、そんな事はどうでもいい(冴木には申し訳ないが)。目標はただ一つ、クラスいち早く折る事だった。

 折り始めて二週間が経ち、僕は満を持して、鶴の早折り大会をみんなに提案した。
 案の定、男子は面白がってほぼ全員が参加に同意する事となった。その反面、女子たちからは「気持ちがこもっていないと、千羽鶴の意味がないでしょ」と、至極真っ当な意見が返ってきた。
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