第4話

文字数 915文字

クラスの人気者に返り咲いてからひと月が経った十一月の始め。クラスメートで親友の冴木が階段を踏み外して足を骨折し、入院するという事件が起こった。
そこで我がクラスでは、担任教師の提案により、冴木の為に千羽鶴を折ることとなった。ここでも僕の手腕が試される事となる。
今回の僕のテーマは“如何に早く鶴を折るか”だ。ことスピードにおいては誰にも負けたくない。折り鶴も――である。
家に帰ると、早速クラス全員に配られた折り紙で鶴を折ってみることにした。
いざ手にしてみると千羽鶴用の折り紙は、一般的な子供用のそれよりかなり小ぶりだった。
僕はタイマーをセットして、まずは一羽折ってみることにした。解説書を見ながらではあるが、それほど迷うことなく折り進めることができた。
だが、楽勝ということはなく、途中で何か所か手間取ってしまい、一羽完成するのに三分以上もかかってしまった。
一見通常サイズよりも小さい方が早く折れそうな気がするが、逆にそれが折り辛さを助長していたのは、まったくの計算外だった。形もかなり歪(いびつ)で、鶴というよりも潰れたニワトリにしか見えない。
これは厄介だ。今回はスピードだけでは無く、見た目も大きな課題だ。手先の不器用さを自覚していた僕は、今度は時間を無視し、どれだけ綺麗に折れるか、挑戦してみる。

五分掛け、出来るだけ丁寧に折ったはずのそれは、一羽目より幾分ましだったが、それでもやっぱり潰れたニワトリにしか見えなかった。
その後も十羽ほど丁寧に折ってみたが、潰れたニワトリがただのニワトリになっただけで、ほとんど進歩が見られない。他のクラスメートの鶴は、果たしてどんな出来なのだろうかと不安に襲われた。

次の日。
お互いの折り鶴を見せ合ってみると、中には見本通りの物もあったが、男子のほとんどは団栗の背比べ。僕は少し安心した。
しかし一方で、女子たちの作品はやはり全体的に完成度が高く、最低でもこれくらいは折れる様にならければいけないと、無言のプレッシャーを感じる。
やはり形にもこだわらなくてはならないと、気を引き締めてかかる覚悟を決める。癪(しゃく)ではあったが、仕方がない。僕は綺麗に折るためのアドバイスを、女子の数人に乞うて回った。
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