第8話 告白

文字数 991文字

父は食事を終えた後、オレの部屋に入って来た。

オレはソラに

「父さんに見せて。大丈夫だから」

と言うと、ソラは素直に着ていたTシャツの裾をまくった。
父はそれを見て衝撃を受けたようだった。右手で両目を覆い、深く息をついた。

父はその場に胡坐をかいて、ソラを正面から見据えた。

「いつからこんなことされるようになったの?何かきっかけが?」

ソラはまた俯いてしまった。

「ソラ、ちゃんと言いな。オレたちはお前の味方だ」

「そうだよ。何も心配しなくていい。しばらくうちにいていいから。だから、あったことを教えて」

俯いたままのソラの肩を、父は優しく撫でた。

「わか…らない…。ボクのこと嫌いだ…て。ジャマだって…」

ポツポツと話し始めたソラに、父とオレは根気よく耳を傾けた。
相変わらず言葉数が少なく、要領を掴めないところもあったが、ソラの話をまとめると、こうだ。

ソラの母が再婚したのは三か月前。それと同時に北海道から東京に越してきた。
再婚相手は仕事をしていなくて母親が働きに出ているため、二人で過ごすことが多い。元々ソラを疎ましがっていて、次第に母が不在の時だけ暴力を奮うようになった。

ソラが話し終わると、父はしばらく考え込んでいた。

「ソラくん、お母さんの携帯番号わかる?」

ソラはランドセルのポケットから1枚の紙きれを取り出し、父に渡した。

父はそれを受け取ると、

「心配しなくていいよ。今日はアキトと一緒に寝て、明日学校に行きなさい」

と言って、部屋から出て行った。


その夜、オレはベッドで、ソラは床に布団を敷いて寝た。
真っ暗の部屋の中。布団を被って仰向けになったところで、ソラに問いかけた。

「お前のかあちゃんは、やさしいのか?」

「やさしい…」

下から小さな声が返ってきた。
ベッドの際にかかるカーテンのすき間から、白い月明かりが差し込んでいる。
オレは「そうか」とだけ言って、目を閉じた。

ソラは人んちにも関わらず、ぐっすり眠れたようで、朝、何度も起こしてやっと起きてきた。
見かけのわりに、神経が図太い奴なのかも。

ダイニングに行くと、父が朝食を食べていた。

「夕べお母さんと話したよ。しばらくうちにいてもらうことになったから、今日にでも着替えとか教科書とか持ってきてくれるって」

父はソラの顔を見て、「心配ないよ」と微笑んだ。
父とソラの母親が何を話したのか気になったが、しばらくソラがうちにいることになったことにオレは安堵した。
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