禁書「はじまりの灯火」【2】
文字数 1,419文字
荒れた城下町の外れ、手入れされていない荒地に突如、魔術の匂いをまとった白く輝く魔方陣が、空中に描かれ始める。
この魔方陣は、複雑に絡み合う幾何学的な渦巻き模様で構成されていて、その外縁には奇妙な文字と星の形をした印が刻まれている。
やがて、魔方陣の中心からは漆黒の膜が波のように外へ外へと広がっていき、神秘的な模様を一つ一つ覆い隠していく。
その膜が魔方陣の文字が刻まれた境界線まで到達するし、黒く塗りつぶされた魔方陣は内側から淡い光を放ち、周囲に幻想的な輝きを放つ。
これが、その魔方陣、”異世界”をつなぐゲートの完成だ。
そのゲートの中から、雑に結われた青いポニーテールと皺ひとつない紺色のマントをなびかせながら、あたしは片足を緩やかに着地させた。
着地すると同時に、魔術”環境適応”を使用する。そしてすかさず周りを見回して安全を確認し、耳を覆うようについているイヤーアクセサリーにも似た探知機に触れる。
すべての動作が終わるのを見計らったかのように、ゲートから空飛ぶナポレオンフィッシュの姿をしたとーるくんが、周りを警戒するようにキョロキョロしながら出てきた。
「ここは安全な”異世界”みたいだよ。あたしは早くイリュージョンをやりたいから、あんまり遅いと置いてくよ?」
あたしは、イリュージョンをしたくてたまらない気持ちを抑えながら言った。
「すい、待ってください!いつもは『常に警戒するべきだよ』といっていたじゃないですか?」
「そうだね。でも、今はイリュージョンの方がかなり重要だよ!」
「理不尽です……」
あたしは、捲くし立ててとーるくんに詰め寄る。
「これまでの”異世界”では3回も! 3回も! 連続で、イリュージョンができなかったんだよ?
コンパスで手に入れたアイテムも、全然、目新しいものじゃないしねぇ。この”異世界”では、何が何でもイリュージョンをしてみせるからね!」
あたしは、イリュージョンをしたくてたまらない気持ちを抑えられず、とうとう天高く拳を突き上げ、誰でもないあたし自身に、固く誓いを立てた。
「今回はイリュージョンができるといいですね!!」
あたしとは違い、イリュージョン中毒に陥っていない、とーるくんはどこか他人事のように答えるが、彼もあたしと一緒にイリュージョンをするアシスタントだ。
「イリュージョンができないことは、あたしの生命に関わることだからね。、邪魔するものは全員消し飛ばしても、旅のルールには反しないよね!」
あたしが”異世界”を旅をするにあたって、ルールを3つ定めている。
1.”責任”の持てない助けはしない
2.むやみ生命を傷つけない
3.旅を楽しみ、誰かを楽しませる
これを守ることで、あたしたちの旅は楽しいもので満ちているのだ。
「すい、待ってください!そんなことをしてはダメです!!」
あたしは「冗談だよ」と半笑いでごます。それに、ルール以前に、無闇矢鱈に誰かを傷つけることなんてしたくないのだ。
そんな事を話しつつ、あたしの身体は、すでにイリュージョンを楽しんでくれそうな人たちがいるであろう、城の見える方向に向けられており、今にも走り出しそうな体勢も取っていた。
「とーるくん、飛ばしていくよ!」
「えっ?!ちょっと待ってください!」
すいは、とーるくんの尾びれを掴み、城下町を目指して走り出した。
「いつもはこんなことしないじゃないですかー!!」
荒野には、情けないとーるくんの声だけが残された。
この魔方陣は、複雑に絡み合う幾何学的な渦巻き模様で構成されていて、その外縁には奇妙な文字と星の形をした印が刻まれている。
やがて、魔方陣の中心からは漆黒の膜が波のように外へ外へと広がっていき、神秘的な模様を一つ一つ覆い隠していく。
その膜が魔方陣の文字が刻まれた境界線まで到達するし、黒く塗りつぶされた魔方陣は内側から淡い光を放ち、周囲に幻想的な輝きを放つ。
これが、その魔方陣、”異世界”をつなぐゲートの完成だ。
そのゲートの中から、雑に結われた青いポニーテールと皺ひとつない紺色のマントをなびかせながら、あたしは片足を緩やかに着地させた。
着地すると同時に、魔術”環境適応”を使用する。そしてすかさず周りを見回して安全を確認し、耳を覆うようについているイヤーアクセサリーにも似た探知機に触れる。
すべての動作が終わるのを見計らったかのように、ゲートから空飛ぶナポレオンフィッシュの姿をしたとーるくんが、周りを警戒するようにキョロキョロしながら出てきた。
「ここは安全な”異世界”みたいだよ。あたしは早くイリュージョンをやりたいから、あんまり遅いと置いてくよ?」
あたしは、イリュージョンをしたくてたまらない気持ちを抑えながら言った。
「すい、待ってください!いつもは『常に警戒するべきだよ』といっていたじゃないですか?」
「そうだね。でも、今はイリュージョンの方がかなり重要だよ!」
「理不尽です……」
あたしは、捲くし立ててとーるくんに詰め寄る。
「これまでの”異世界”では3回も! 3回も! 連続で、イリュージョンができなかったんだよ?
コンパスで手に入れたアイテムも、全然、目新しいものじゃないしねぇ。この”異世界”では、何が何でもイリュージョンをしてみせるからね!」
あたしは、イリュージョンをしたくてたまらない気持ちを抑えられず、とうとう天高く拳を突き上げ、誰でもないあたし自身に、固く誓いを立てた。
「今回はイリュージョンができるといいですね!!」
あたしとは違い、イリュージョン中毒に陥っていない、とーるくんはどこか他人事のように答えるが、彼もあたしと一緒にイリュージョンをするアシスタントだ。
「イリュージョンができないことは、あたしの生命に関わることだからね。、邪魔するものは全員消し飛ばしても、旅のルールには反しないよね!」
あたしが”異世界”を旅をするにあたって、ルールを3つ定めている。
1.”責任”の持てない助けはしない
2.むやみ生命を傷つけない
3.旅を楽しみ、誰かを楽しませる
これを守ることで、あたしたちの旅は楽しいもので満ちているのだ。
「すい、待ってください!そんなことをしてはダメです!!」
あたしは「冗談だよ」と半笑いでごます。それに、ルール以前に、無闇矢鱈に誰かを傷つけることなんてしたくないのだ。
そんな事を話しつつ、あたしの身体は、すでにイリュージョンを楽しんでくれそうな人たちがいるであろう、城の見える方向に向けられており、今にも走り出しそうな体勢も取っていた。
「とーるくん、飛ばしていくよ!」
「えっ?!ちょっと待ってください!」
すいは、とーるくんの尾びれを掴み、城下町を目指して走り出した。
「いつもはこんなことしないじゃないですかー!!」
荒野には、情けないとーるくんの声だけが残された。