009.日陰くんと既視感

文字数 1,296文字

会社の引っ越しを終えてその日は業務開放となった日陰くん。後輩の情報をとりあえずは信じ、おそるおそるながらも帰宅することにした。
ただいま。誰も居ないといいが……
おかえり日陰くん。早かったのね。
あ……ああ。今日は会社の移転で仕事できないし半ドンで終わってね。


とりあえず僕は死ななくてもいい感じだね? 帰宅とともにふっ飛ばされないところを見ると。

ん……死にたいのはこっちよ。まったく。
はい?
いや、とりあえず目覚めたら行った記憶のない中華料理屋からとんでもない請求が来てて、なんか警察からも電話あって何が何だか。
記憶失くすってレベルじゃないぐらい飲んだのか……
ところで日陰くん、さっき請求書持ってきた謎の女は誰なの?

自分で日陰くんの幼馴染だとかほざいてたけど。

酒飲む前の記憶まで失ってるよ!この人!
ねえ、だからあれは誰なの? ホントに幼馴染なの?

彼女は家の目の前にある中華料理屋の娘だよ。



まぁ……幼稚園、小学校、中学校、高校と一緒だから、幼馴染といえばそうなるかな。

何よそれ、幼馴染なんて正ヒロイン度私よりマシマシじゃない。身体の関係もそっちの方が長そうだし……。
「身体の」が余計だよ! 不穏な言い方はやめてくれよ!
その子とただれた性活をしてたけど、市外に行っちゃったから、代わりに大学で新たな奴隷である私を見つけて監禁したのかと思ったんだけど……違うの?
前提から結論まで全部違うよ! 

大体、実家から通うの面倒臭いって転がり込んできたのはキミじゃないか!


って、前にもこんなやり取りしたような気がしてきたぞ……

全く記憶に無いわね。


もしかして日陰くん、確定した過去を変えるために未来からやってきたんじゃないの?どっかのゲームみたいに。


あれよ、あれ。

シュタ……シュタイン……シュタインズ……なんとか。

そこまで来たなら全部言えよ! 酒云々の前に記憶力に難あるんじゃないのか!
シュタインズ・ゲームか。
惜しい! とでも言えばいいのか……
じゃあ……シュタインズ・ゲリララジオね。
確かに君は色々とアゲインストだが……
うーん、シュタインズ・ゲートボールかな。

惜しい通り越しておかしいよ!


世界線を超えた魂の1打! 誰がやるんだよそんなゲーム!
あ、思い出した!


シュタインズ・エンドレスエイトね!

タイムリープに引っ張られすぎて色々クロスオーバーしてるよ! 絶対8話じゃ終わらないぞそのアニメ!
どっちにしろブツブツ訳わかんないこと喋る主人公が正ヒロインにキスすればハッピーエンドになりそうね。
なんで詳細は覚えてるんだ……?
よくわかんないけど、とりあえずキスでもしましょうか。
もっとわかんねえよ! このやり取りどうやって終わるんだ一体!
そうね……エンディングでダンスでもすればイイんじゃないかしら。2人は幸せなダンスを踊って終了。
何の話だかいよいよわからなくなってきたな……
あれ? 『逃げ恥』の話じゃなかった?
……もういいよ。魔法の言葉で終わらせるから。
「エル・プサイ・コングルゥ」ね。
それはどこかでやったからダメだ!
じゃあ……「俺、実はポニーテール萌えなんだ」ね。
いつまでさっきの話引っ張るんだよ!
また次回!
先に言われたよ……
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登場人物紹介

日陰くん。


27歳。

まばたき市にあるIT企業のシステムエンジニア。

凪島さん。


27歳。

日陰くんの同居人。Youtuber。
日陰くんとは大学時代の同級生。

大依さん。


29歳。

まばたき市役所産業振興課主任。
日陰くんの大学時代の先輩。

鮫岡さん。


25歳。

日陰くんの会社の後輩。

北風さん。


28歳。

日陰くんの家の目の前にある中華料理屋「北風軒」の一人娘。
日陰くんとは幼稚園、小学校、中学校、高校が一緒。

折場くん。


26歳。

日陰くんの大学時代の後輩。FXで生計を立てている。

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