024.日陰くんと特急

文字数 793文字

ささやき市新オフィスでの仕事を終えた日陰くん。ちょうど普通列車の無い時間だったので、特急券を買って自由席に乗車したのであった。



ほどよく混み合っている車内で、開いている席に着席する。すると、隣に見慣れた男がいた。

あっ、先輩じゃないですか。
折場じゃん。何してんのこんなところで。
いや、ちょっと引っ越しの物件を探してましてね……
え、何、引っ越すの?
はい……




ちょっと家賃のグレード下げないとな、と思いまして。

何だ、FXで大敗でもしたのか。
ええ……



どっかの大統領がテキトーなこと言う度に、僕の含み益がガンガン減っていく有様で。



一回精算したんですが、ちょっと立て直しが必要な感じでして。

それなら、もう少し家賃が安くてコンパクトな場所に越そうかなと。

どのぐらいやられたんだ?



どうせ俺の年収10年分ぐらいだろ?



やられたといっても。

そうですね……



先輩の生涯年収、10回分ぐらいですかね。

色々おかしいぞ! 俺の輪廻転生10回分が消えてる!




よく、まともに立って話してられるな……

まぁ、大体半分やられた感じですからね……



まだ何とかなりますよ。

俺がお前に並ぶには後10回生まれ変わってイーブンなのかよ!
まぁ……



その間に、僕も10回生まれ変わりますからね。

言うなよ……




日中の仕事に加え、さらにパンチを食らう日陰くんであった。




で、先輩はどうして列車なんかに?
ああ……お前には言ってなかったな。


ちょっと転勤になってな。引っ越すのもアレだし、列車で通ってるんだ。



普通列車なら50分ぐらいだけど、特急なら半分で済むしな。時間が中途半端だったから、今日は特急に乗っただけ。

まぁ先輩、実家ですしね……
最近、実家じゃなくて誰かの会社になったけどな。
ああ、凪島先輩ですか……
他に誰が居るよ……
他に誰か居たら、流石の日陰先輩も死んでますね。
……





『日陰くんは意外に早く死ぬ』だとただの短編ですからね。


やめろ! 縁起でもない!



また次回!

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登場人物紹介

日陰くん。


27歳。

まばたき市にあるIT企業のシステムエンジニア。

凪島さん。


27歳。

日陰くんの同居人。Youtuber。
日陰くんとは大学時代の同級生。

大依さん。


29歳。

まばたき市役所産業振興課主任。
日陰くんの大学時代の先輩。

鮫岡さん。


25歳。

日陰くんの会社の後輩。

北風さん。


28歳。

日陰くんの家の目の前にある中華料理屋「北風軒」の一人娘。
日陰くんとは幼稚園、小学校、中学校、高校が一緒。

折場くん。


26歳。

日陰くんの大学時代の後輩。FXで生計を立てている。

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