021.日陰くんと異動

文字数 1,139文字

ささがき市の新オフィスへの異動の噂を聞いた日陰くん。終始業務に集中できないまま、帰路についたのだった。
あー、疲れた。
そうでもないんじゃない?
少しは労えよ! 冷たすぎるだろ!
ほら、大声出す元気はあるのよ。
てめえ……



もうすぐこの家に住めなくなっても知らないぞ!

ああ、日陰くんの異動の件ね。
なんでお前が知ってるんだよ! まだ発令にもなってない噂の段階なのに!
ほら、私能力者だから。
勝手にクロスオーバーするな!
まぁそれは冗談として……


この家に住めなくなるってことは、日陰くんがどっかに行くってことしか考えられないじゃない。日陰くんに今の会社を辞める度胸があるとは思えないので、もうそれは異動しかないだろう、っていう当然の帰結ね。

完璧な論理で余計腹立たしいよ……
いいじゃない。別に日陰くんが単身赴任すれば。
単身赴任の意味を調べろ!
別に日陰くんが居なくても、私がここに住むのは何の問題もないと思うのだけれど。空き家になるよりマシじゃない。
そりゃ喫緊の問題はないけれども! 親になんて言えばいいんだよ!
日陰くんのお母さんなら、結構前に「家のことよろしくね」ってLINEもらってるから問題ないわよ。
いつの間に!
あ、あと「孫の顔が見たい」って言ってたわよ。
母さん! 何でこんなやつとLINEで繋がってんだよ!
孫のために日陰くんと私も繋がらない?
やめろ!
とりあえずハグでもする?
とりあえずの意味がわからないんだが……
ハグすれば最終的には繋がれるって『逃げ恥』でやってたから……
フィクションでフィクションをソースにするな! 意味がわからなくなってきたよ!
いやでも、そろそろ何らかのラブラブをしないとこの作品にある「恋愛」タグが回収できないじゃない。


このままだと日陰くんの空虚なツッコミだけが響く残念な人形劇で終わるわよ。

話が逸れてきたぞ! 異動の話だろ異動の話!
日陰くんの好きにしたら良いじゃない。どっちにしろ、私はここを出ていくつもりはないわ。なんなら買ってもいいし。
とんでもないこと言い出したな!
日陰くんの両親とは既に金額の打ち合わせはしてるんだけど……



まぁこのままの動画再生数で推移すれば、年内には買えるわね、この家。

父さんもなにやってんだ! 俺はどうなるんだよ!
この家を追い出されて、安月給にアパートの家賃がのしかかり、働けども働けども貯金のデキない若者になるのよ。
リアルな想像をするな!
あとはこの作品が『凪島さんは意外としゃべる』に変わって、日陰くんはたまにしかでてこないヒモキャラに……




要は、格落ちね。

……それは別にイイよ! むしろ歓迎だよ!
歓迎ならいいじゃない。 それでは、また次回!
テキトーにまとめるな! オチがねえよオチが!
これも、欠くオチね。
くっそ無理矢理なダジャレ! また次回!
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登場人物紹介

日陰くん。


27歳。

まばたき市にあるIT企業のシステムエンジニア。

凪島さん。


27歳。

日陰くんの同居人。Youtuber。
日陰くんとは大学時代の同級生。

大依さん。


29歳。

まばたき市役所産業振興課主任。
日陰くんの大学時代の先輩。

鮫岡さん。


25歳。

日陰くんの会社の後輩。

北風さん。


28歳。

日陰くんの家の目の前にある中華料理屋「北風軒」の一人娘。
日陰くんとは幼稚園、小学校、中学校、高校が一緒。

折場くん。


26歳。

日陰くんの大学時代の後輩。FXで生計を立てている。

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