第２話　ドヤ顔煙草休憩後の殺人

　ジャラジャラ！　ギラギラ！　辺りからの騒音も何のそのと賽河はコインを手の甲の中で躍らせて投入口に流し込む。ポケットに入れている携帯のバイブの震えも何のそのと無視して夢中だ。
　開店は新台入荷日と重なった為に普段の９時開店ではなく１時間遅い１０時からであった。なのか、いつもよりも周りの客も多い。それと次の日が祝日である為、ＡＴＭ自体(パチンコ店)が出し渋るという常連客（年金者や〇活保〇者etc.）やプロ（パチンコやギャンブルで生計を立てる人）なんかが常識とばかりに前日の今日なら、と客は増すのだが賽河は知ったことではない。
「いい演出きたなー～～……ぉおあぁあ！　マジかよっ！」
　１４６Ｇ（回転）でようやく《ボーナス確定》を引き当てた。
　２００Ｇでも４００Ｇでも当たらないときがある為、今回の早い当てに賽河もドヤ顔だ。それには理由があり《ＡＴ確定》している。今回の被害額は、今のところ４千円で済んでいる。とんとん拍子だ。
「うし！　煙草吸ってー便所行ってー飲み物なんかも買ってくっかぁー～～」
　回さずに画面もそのままに賽河は席を立った。辺りにはおどろおどろしい曲が流れているが、それは態とである。優越感に浸って周りに自慢をする為で、迷惑この上ない行いであるのだが賽河は気にしない。自慢がしたいのだ。
　席を立った時。
（両隣に座られてたら出辛いんだよ）
　左手のガメ〇と右手のドンち〇ん。どちらも昔ながらに人気のある機種だ。しかし、どちらもまだ当たりはない。嵌(ハマ)れば損をするのはどれにも言えるのだが（さっさと他にズレてくれりゃあいいのにな）と賽河は口をへの字にする。左手は２０代の青年で右手は４０代の作業着姿の青年で貧乏ゆすりをしている。視界に入るのも嫌なものＮＯ．１の行為に賽河も鼻で一蹴の息を吐く。ともあれ身体を翻し、これ見よがしに確定画面から進めて嫌がらせのように音量も高いまま喫煙コーナーへと向かった。
　途中にある筐体を眺め、座っている席のGも確認をするも趣味である。椅子にジャンバーがかけられいるが人のいない筐体。黄門ちゃ〇は賽河同様にボーナス確定画面で放置されている。同族かと賽河もほくそくみ通り過ぎようとしたとき、その筐体のドリンクホルダーにカップが置かれた。見てはいなかったのだが、コト……と爆音の中で音が賽河の鼓膜に聞こえた。興味本位で顔を向けたが誰もいないのは変わらなかった。しかし、なかったものが在った。白いカップ。自販機のものだ。置いた主を見ようと賽河が後ろを振り返ったのだが既に姿形もない。しかし。

（香水の匂い）

　頭を掻きながら賽河は向き直して、足早に喫煙との向かうのだった。煙草を吸い、この先の展開に胸を弾ませてうきうきとトイレに向かい手早く済ませて打ち込もうと筐体に戻れば、そこは騒々しくも――殺人現場となっていた。