第2話 洗濯機の世界へ

文字数 1,204文字

 お母さんはスーパーでお買いものをしていました。お父さんとお母さんの靴下です。靴下が片っぽだけになってしまうともうはけないので、新しい靴下を買わなければいけないのです。ちいちゃんの分もついでに買ってあげようとしたお母さんは、そういえば、最近ちいちゃんの靴下をお洗濯でみないわと不思議に思いました。お父さんとお母さんの靴下は片っぽずつなくなっていくのに、ちいちゃんは毎日靴下をはいて元気に小学校へ通っています。
 変だわと思ったお母さんは、ちいちゃんがお外に遊びに行っている間に、ちいちゃんが隠しておいた汚れた靴下を見つけて驚きました。ずっとお洗濯していない靴下は真っ黒に汚れていて、ちょっとくさいにおいがします。お母さんはあわててちいちゃんの靴下を全部お洗濯しました。
 その日の夕方、いつものようにお母さんのお手伝いをして靴下をたたんでいたちいちゃんは、隠しておいたはずの靴下が洗われてしまったと気づきました。
 あわててちいちゃんは自分の靴下だけさがしました。赤い靴下の右足と左足、緑の靴下の右足と左足はちゃんとそろっていました。でもお気に入りだったピンクの靴下だけ、どうしても片っぽみつかりません。お洗濯してしまったので、なくなってしまったのです。ちいちゃんはすごく悲しくなりました。泣きながら「どうして靴下お洗濯しちゃったのよう」とお母さんに文句を言いました。ピンクの靴下がちいちゃんのお気に入りだったと知っているお母さんはちいちゃんがかわいそうになりました。でも、汚れた靴下をそのままにはしておけません。
「汚れた靴下はきちんとお洗濯しないといけないのよ」
「お洗濯したら片っぽだけになっちゃうから、ダメなのよう」
 ちいちゃんは泣いて訴えましたが、後のまつりです。靴下はみんなお洗濯されてしまって、お気に入りのピンクの靴下の片っぽはもうどこにもないのです。
 悲しくて悲しくて、夜、お布団に入ってからもちいちゃんはピンクの靴下を思って泣きました。明日はその靴下をはいて学校に行こうと思っていたのに、片っぽだけでははいていけません。毎日楽しく通っていた学校ですが、明日だけはなんだか行きたくありません。
 ピンクの靴下はどこにいってしまったのだろうとちいちゃんは考えました。お洗濯するたびに靴下が片っぽなくなるのだから、もしかしたら洗濯機の中にたくさん片っぽだけの靴下があるのでは。そう思うとちいちゃんは寝ていられなくなりました。
 夜中にこっそり起きて、ちいちゃんは洗濯機のある洗面所に行きました。
 洗濯機のふたは開いていました。ちいちゃんの家の洗濯機はふたが前についています。ちいちゃんは、ピンクの靴下が落ちていないだろうかと洗濯機の中に顔を入れてのぞきこみました。でも真っ暗で何も見えません。ちいちゃんは右手を入れて靴下を探してみました。その時です。洗濯機がぐるんとまわってちいちゃんをのみこんでしまいました!
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み