第1話 靴下がなくなる!

文字数 758文字

「また靴下が行方不明!」
 お母さんのお手伝いで洗濯物の靴下をたたんでいたちいちゃんは大きな声をあげました。ちいちゃんの右手には、赤と白のしましま模様の靴下が片方あるだけです。もうひとつあるはずの左足用の靴下はどこをさがしてもみつかりません。お父さんの靴下、お母さんの靴下、ちいちゃんの他の靴下も右足と左足両方そろっているのに、しましま模様の靴下だけ、片方しかないのです。片方だけの靴下ではもうはけません。
「まあ、困ったわね」
 お母さんはため息をつきました。
 倉本家では最近、お洗濯のたびに靴下が片方なくなるのです。お父さんのもお母さんのも、ちいちゃんのも、たくさんの靴下が片っぽだけになってしまいました。
 ちいちゃんだけではありません。この春から通う小学校のお友達、みゆきちゃんも大好きなオレンジ色の靴下を片っぽなくしてしまったと言っていました。お洗濯をしたら、片っ方だけなくなってしまったのです。
 お洗濯するたびに靴下がなくなるのならお洗濯しなければいい、ちいちゃんはそう考えました。
 毎日、小学校から帰ってくると、汚れた靴下は脱いで洗濯かごにいれておきなさいとお母さんは言います。でも、その日からちいちゃんは、はーいとお返事だけして、靴下は洗濯かごには入れないでこっそり靴の中に隠してしまうことにしました。
 作戦は大成功でした。お父さんとお母さんの靴下は毎日片っぽずつなくなったのに、お洗濯に出していないちいちゃんの靴下は右足左足両方そろっています。ちいちゃんは大喜びで、みゆきちゃんに、靴下はお洗濯してはダメなんだよと教えてあげました。これでみゆきちゃんもお気に入りの靴下をなくさないですみます。みゆきちゃんはありがとうとちいちゃんに感謝しました。ちいちゃんはみゆきちゃんにいいことを教えてあげたと思いました。
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